7 -クラリスの過去-
クラリス回です。
◆ ep:クラリス ◆
クラリス・ソノメシアは騎士の家系だった。
幼いころから王国騎士団の団長である父に厳しく育てられ、才能も相まって大きくなるころには小隊の隊長を任されるまでになっていた。
しかし、天は二のものを与えず。クラリスに魔力適正はなかった。
生まれつき、魔力器官が弱く魔法を使用すらできない体だった。
父はその分、剣をひたすら教えてくれた。
弱音を吐かず、魔法が使えない分を補おうと必死に鍛錬してきた。
王国騎士団、第二部隊の隊長となるころには女であるということ、魔法が使えないことを誰も軽蔑しなかった。
剣のみで戦い、指揮し、勝利へ導く。
そんなクラリスを、部隊全員が尊敬していた。
そんな時、王国魔法団との合同討伐があった。
魔法団と騎士団は決して仲が悪いわけではなかったが、かといって訓練場も分野も違うため実際に会うのは戦場での合同戦になることが多い。
騎士として、指揮官としての魔法団との戦略はよくわかっていたが、実際に合同討伐になったときにクラリスは遠距離から多種多様な魔法を放つ魔法団に見とれてしまった。
「あぁ、魔法とはこんなにも美しかったのか・・・」
そんなつぶやきを漏らした時、討伐対象のワイバーンの炎槍がこちらに向かってくるのに一瞬気づくのが遅れてしまった。
「しまっ・・!」
「ちょいと失礼!」
そういって、間に割り込んで水の防壁とともに炎槍を防ぐ魔法団の一員が居た。
「騎士さん、けがはねぇか?」
炎と水の衝突による水蒸気がキラキラと照らすその顔は、クラリスの心に炎槍のように深く突き刺さった。
「あ、あぁ、助かった・・・」
「ならよかった!かわいい顔に傷でもついたらかわいそうだもんな!じゃあ、俺はこの辺で!」
有無を言わさず、その魔法師は風を纏いながら戦場に戻っていった。
★ ★ ★
ワイバーン討伐は負傷者も少なく、無事終了した。
掃討完了の連絡を受け、帰還するまでクラリスは自分の心が浮ついているのに気づかなかった。
魔法団の方を見てきょろきょろしては、ため息をつく。
騎士団の面々は魔法の使えない隊長が悔やんでいるのだと、気遣った。
帰還後、報告を行い魔法団との宴会が開かれた。
宴会場でも、クラリスは無意識に探してしまってた。
あのかっこいい魔法師はだれだろうか、来ているのだろうか。
そんな気持ちで探していると、給仕の子と話している男が目に入った。
(みつけた!)
内心、嬉しさで飛び上がりそうな心を抑えてそっちに向かっていく。
「でさぁ、俺はワイバーンに一撃喰らわせてやったわけよ!そうだ、この後空いてる?俺のアイシクルランスで夜の魔法舞踏会を開こうじゃないか。」
浮ついた心が急激に冷えていくのがわかった。
なんだこのナンパ野郎は。これが王国所属の魔法師か?
「あ!その美しい顔は騎士団の!鎧に身を包んだ時からきれいだと思っていたんだ!どうだい?一杯俺と飲まないか?」
かっこよかったはずの顔から軽い口説き文句が吐き出される。
ガラガラと、心の中でのきれいなイメージが崩れていくのだった。
「・・・王国所属としての誇りはないのか!痴れ者が!!!!!」
宴会場に響き渡った声に、騎士団の隊員たちは酔いが吹き飛んだとか。
その後知ったが、彼は魔法団副団長のレオハルト・ムラビというのだとか。
若干12歳にして魔法団の試験をパスし、18歳で副団長にまで上り詰めた魔法のエキスパートだという。
甘く整った顔に最初は女性を虜にするも、口を開くたびに評価が落ちる残念な人だというのはその後知ったのであった。。。
その後も、たまに魔法団との合同戦があるたびにレオハルトから話に来るがクラリスはあまり相手にしなかった。
しかし、王国付近の森にはぐれ竜が出た際の合同戦にて竜の爪からとっさにかばったクラリスが重傷を負う。
かばった団員は転がり、ほぼ負傷はしなかったがクラリスの傷は深かった。
騎士として、人を守って死ぬなら悪くない。
そう思ったい薄れていく意識の中、聞き覚えのある声が耳にうっすらと届いた。
「やりやがったな!クソが!ゆるさねぇ!!」
意識の薄れる中、ぼやけた視界に映るのはきれいな氷の鎖が竜を縛り、雷や炎の大魔術が竜を穿ち、竜が倒れていく。
あぁ、やはり魔法はきれいだ。
そう思った後、クラリスは意識を失った。
★ ★ ★
気がついたら、教会の病室だった。
目を開け、部屋を見回すとそばにはこっくりこっくりと舟をこぐレオハルトが居た。
「護衛のつもりなら、居眠りは王国所属としての気概が足りんな。」
そんな声を聴いて、レオハルトは目を見開きこちらに駆け寄ってくる。
「よかった!本当に!体は痛くないか!」
「あぁ、胸がすこし痛いが問題はないようだな。」
「よかったぁぁぁ~~~~!!」
甘いマスクが台無しになるほど涙を流し、安堵の表情を浮かべるレオハルト。
「きれいなレディが目の前で死ぬなんて御免だよ!まったく!」
相変わらず、軽口を吐くレオハルトにクラリスは思わず笑ってしまった。
「あぁ!心配したのに笑うなんて!でも笑った顔もまたきれいだな!そうだ、俺の事レオンって呼んでくれないか!そうだ、そうしよう!」
「呼ぶわけないだろ、レオハルト。だが、看病してたのだろう。感謝するぞ。」
「いやぁ、男としてやることをやったまでさ!じゃあさ、お礼に一緒に食事にでもいこう!」
「ふふ、まぁいいだろう。退院したら連れってってくれ。」
「よっしゃ!実はずっと一緒に行きたかったとこがあったんだ!」
★ ★ ★
カノンがレオハルトに詰め寄る。
魔法の展開が間に合わないレオハルトの顔を見た瞬間、クラリスの体は意識するよりも先にレオハルトの前に出ていた。
「レオン!あぶない!!」
とっさに出た言葉と胸をつらぬく剣は同時だった。
熱い、痛い。
胸を焦がす痛みのなかで、クラリスは安堵した。
大事なレオンが守れたなら、それでいい。
薄れていく意識の中、レオンの声が聞こえていた。
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