表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/46

14章 残虐

一度行った道を反対方向に向かう4人。

薙ぎ倒した採掘機械たちの残骸を足元に、静かな水の雫が垂れる音が澄み渡る。

段々と開けていき、元のB町へと戻ったのであった。


・・・しかし、目に映ったのは広々した赤。

・・・家々は、噴水は、綺麗な道路は・・・全て・・・


―――消え去った。


「あ・・・あああ・・・」

「・・・ど、どうして・・・!」


B町もまた・・・A町やC町と同じ運命を辿ったのであった・・・。


・・・炎は家々を薪として更に燃え盛っていく。

それは・・・地獄。ジュノアの眼から、不意に涙が線を描いていた。

足が、動かない。立ち竦んでいたのだ。


・・・哀れなる、その光景を見据えて。


・・・全ては残酷、残虐であった。


「・・・私たちは、何も守れないのか・・・」


菫子は、その光景を前に項垂れてしまった。


美しき町並みは、一瞬にして奪われた―――。


「・・・ここでモタモタしてる暇はありませんよ!もしかしたら、まだみんな助かってるかもしれません!」

「行こう、まだ残ってる奴らがいるかもしれない!」


◆◆◆


4人は燃える街道の上を急いで走った。

さとりとこいしに出会ったあの場所を目指して、一生懸命走ったのだ。

だがしかし・・・そこには―――さとりとこいしが泣き叫んでいただけであった。

他の人たちは・・・誰もいなかった。


「さとり・・・こいし・・・これはどういうことだ・・・!?」

「・・・見た通りよ・・・私たちの街は・・・完全に破壊された・・・!」


さとりはそんな菫子の両腕を掴んで・・・泣きながら必死に訴えた。


「私たちは・・・私たちはどうすればいいの!ねえ!」

「・・・」

「私たちが住んでいた町が・・・どうして治安保護兵に・・・どうして・・・!」

「奴らは町に爆弾を容赦なく落とす連中だ・・・」


菫子は燃える町の中、そう・・・ゆっくりと呟いた。


「残虐なる運命だな・・・。・・・でも、これも受け入れなければいけない。

もう、変えられないんだ、過去は・・・。・・・でも、未来は幾らでも変わる」

「・・・こいしもそう思う」


泣き止んだ彼女は菫子の意見に賛同を示した。

過去はタイムマシンでも無い限り変えられない。

・・・なら、未来を変える。この―――オデュッセウス・アーバンテクノロジーに支配された世界を。


「・・・こいしも、町の人たちが攫われたの、止められなかったけど・・・。

・・・でも、止めたいよ・・・こんな乱暴な事、するの・・・!」

「・・・全員攫われたのか。・・・それにしても、2人は良く助かったな」

「たまたま地下室にいたのよ・・・。・・・掃除をしていて、外に出たら・・・」


さとりはやっぱり泣き止めなかった。

今まで暮らしてきた町をボロボロにまでされたのであったから・・・現実を受け入れ難かった。


「・・・治安保護兵は・・・どういう神経をしてるの・・・!?」


スーさんは思わず口を開いて言ったのだ。

そして何よりも、その言葉が最も心に突き刺さったのは―――菫子であった。


「・・・治安保護兵は、私みたいな馬鹿で愚劣な人間が集まった組織だ。

・・・でも、中には心が透明のように純粋な奴もいる。・・・そいつらもまた、同じ治安保護兵だ」

「・・・菫子さんは、馬鹿なんかでも無いし、愚劣なんかでもないよ・・・」


こいしはゆっくりと、帽子で顔を隠しながら告げたのであった。


「・・・でも、このままの私たちは馬鹿で愚劣で終わってしまう・・・。

・・・戦おう、あの会社・・・オデュッセウス・アーバンテクノロジーと・・・!」


こいしは確かなる決意を口にした。

そしてそれは姉であるさとりも同調させる。


「そうね・・・。・・・ここで蹲っていても、泣き寝入りで終わってしまうわ・・・!

・・・抗おう・・・あの会社に・・・そして世界に・・・!」

「2人も来るのね」

「ええ、当たり前よ。・・・このままここで待ってられないわ」

「なら行こう・・・。・・・ここから電車があったよな」

「こいしが駅まで案内するよ」


そしてこいしは5人を案内する為に先導して足を進めた。

その後ろを5人もついていった。

―――炎は燃え盛っていた。そんな6人は炎を遮るように進んでいったのだ。


―――世界は残酷だ。


―――だが、世界の運命は人の手で変えられるものだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ