↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リバーシブル 天地反転之世界  作者: てんぷー
第一章 表から裏へ
PR
3/3

第3話 人生と重力が逆転した世界で

夜は寒い。

どこか泊まるところを探したい。

服は川に落ちてびしょ濡れ。

数時間経ったとはいえ、どうしても水が染み透っていて、濡れている。

それが夜の冷たい風に当たったら、当然ながら体は冷える。

真夏のクーラーなんて比べ物にならないくらい寒い。

しかも、それが全身に来ているのだから、たまったものではない。

このままいけば、低体温症になるのではないか。

そうも考えた。

俺はふと思った。

そんなこと考えていても、意味がない。

ただ、立ちすくまっていてはもっと寒くなるだけだ。

その思いを自分に言い聞かせ、俺は鋼鉄の柱を目指すべく、体に鞭打って歩き続けた。


俺がいまいる高峰区は高峰中学校と駅を中心として、周りが区の末端に行くにつれ過疎化していっている。

高峰区は、もともと住宅地が広がっていて、駅ビルとかがあるような都会ではないから、その末端となれば、田舎に近い町風景となる。

その末端近くには病院があった。


           「ちょうどいい。」


これを今日の寝床にしよう。

しかし、非道なことに、扉はロックされている。

これでは入れない。


「俺みたいに迷い人がここにきて、病院に泊まるかもしれない。そういうことを考えていないのカァ!この病院はぁよお!!!!」


           (絶対考えてない.....)


内心自分で突っ込みを入れながらも、扉をこじ開ける方法を考える。

思いついた。

開けるんじゃない。

ガラスを割ればいいんだ。

これしかない。

ほかにない。

俺は、その貧弱な体で、力いっぱいそばにある排水溝の蓋を持った。

排水溝の蓋で、ガラスを割るという方法だった。

ただ、5秒間、蓋をちょっと上げるだけで限界だった。

これでは、到底、ガラスを割ることはできない。


       (ヤベエ...マジでどうしよう)


頭を抱え、内心焦りながらも俺の火事場の馬鹿力ならぬ、馬鹿頭で一つのとっておきの案を思いつく。

さっそく実行に移した。

近くに置いてあった、病院の看板を分解し、木の棒を入手。

てこの原理で、木の棒でを排水溝を持ち上げ、ある程度の高さに持ち上がったら、自分で持ち上げる。

これで、普通に持ち上げるより、格段に楽になった。

あとは、めんいっぱい持ち上げて、蓋を上に掲げる。

あとは蓋を掲げた時の体の揺れと、己の力を信じて、勢いでガラスに投げつける!


       「ゴオオオオーン」


鈍い音。

割れてない。


       「まあそれが普通か...」


俺はあきらめることなく、投げつづけた。

そして、5回目くらいにひび割れがガラスいっぱいに広がった。

しめた...!

そして次の投げ。

排水溝の蓋がガラスに当たった瞬間...


     「パアリイイイイイイイインン!」


ガラスが割れた。

目論見通り、ガラスが割れ、入れるようになった。

俺は、ほっとした。

なんせ、寝床が確保できたのだから。


病院に入った。

暗い。

やっぱり、人影はいない。

でもそれが、寝床にするにはちょうどよかった。

だれからも、怒られない。

なぜか、無敵のポジションを手に入れた気がしてたまらなかった。

普段だったら、絶対に怒られるであろう仕草。

人がいないだけで、いろんなことができてしまう。

この楽しさを噛みしめながら、適当に病室へ入り、寝床に着いた。


      「おやすみ」


ゆっくりと眠りについた。

死ぬよりも快適で、安らかに、目を閉じれる。

死よりも安心して、意識が遠のいた。


◇


朝だ。

まぶしい太陽の光が差し込んだ。

いつもなら、朝飯を食べて、憂鬱気味で学校に向かう。

でも、今日は違う。

なんせ誰も人がいないんだから。

朝飯もないけど......。

腹ペコではあったが、ご飯にありつくために空の街へと、つながっている鋼鉄の柱を目指して今日も歩く。

一時間ほど歩いた。

高峰区の末端は過疎を極めており、ほぼ、田舎である。

俺は、ようやくそこに着いた。

さらに、鋼鉄の柱は、さらに、巨大に見えた。


「エレベーター!?」


そう考えた。

空の街とつながっている鋼鉄の巨大な柱。

考えていることは、間違ってはないと思う。

けどどうしてそんなものを?

こんな誰もない世界に?


さらに歩く。

もう区の最末端は平原だ。

草っぱらを横切る、一本の二車線道路。

そこに、ぽつぽつと置かれている、ほかの都市までの距離を示した看板。

それを囲む山。

俺は、高峰区の学校に通ってはいるが、最末端がこんなものだとは知らなかった。


そして、進むごと半時間。

本来、ありえないものが目に入ってきた。


「人影....!」


人影ならまだいい。

ありえなくもないこと。

問題は、その人の態勢だ。


「逆......?」


腰を抜かして転びそうになった。

反重力?

そして、さらに目を疑うのが、あの人の腰に着いているもの。

太いワイヤー?

命綱っぽいを身に着けながらこっちに近づいてくる。

いや、怖い怖い。

何があった?

どういうこと?

俺は今日いや、人生で一番、頭を回転させた。


まず「人影。」


ありえないほど人はいなかったので、あの人を見つけたときはびっくりしたが、特に変なものではない。


次に「反重力」


はい。

この時点でもうわけわかめ。

なに?

反重力って。

俺の頭が理解を拒む。

夢でも見てるのか?


さらに次、「命綱」


え???

なんで、命綱つけちゃってんの?

意味わからんて。

落ちるから?

命綱は、落ちないようにつける物だろ?

この人の態勢から見て、空に落ちるのを防ぐためと思われる。

空に落ちるってなんだよ!


情報量が多すぎて、頭に意識が集中していた。

立ちすくまってしまった。

そんな、体を覚ますごとく、一つの声が聞こえた。


「そこの逆の人ー!一回こっちにきなさーい!」


は?

あの人が言ったのか。

逆の人?

こっちから見れば、てめえが逆なんだが。

さらに、あの人が叫ぶ。


「悪い人じゃないからーーーー!」


もう怪しさ満点なんだってば。

そんなんで、俺の心が動くと思ったか?

まあ、返事は必要かと思ったので、俺も叫ぶ。


「あんた誰ーーーーー?」


「えーーーと...地面開拓屯田兵第2班 地面開拓前線隊員 鷺坂 直人 という!」



         (.....誰やねん)


マジで知らん人だった。

うわー.....どうしよ。

未開の地で変な事件に巻き込まれたら、ただごとじゃない。

それに、地面開拓屯田兵?

なんやそれ。


    (屯田兵って....明治時代かよ。)


学校でちょうど習った内容を思い出しながら、返答を考え続ける。


「鷺坂さーん?あんたを信用する要素ゼロなんですがー?そっちに来たくないんですけどーー?」


「大丈夫だって!!安心しろ!あんたを保護するだけだ!」


          (信用ならん.....)


           「保護って?」



「衣食住を提供してあげるって言ってんだよー!しかも世界公認でなー!」



        (くいもん....)


朝から何にも食べてない。

くいもんという単語で心が揺さぶられる。


      「で?そのあとどうするんですか?」


「やっと聞く気になったかー。そのあとは、ホームステイ先を探して、見つけたら、街に行くだけだー!どうだーー?」


         (街...!?)


俺の頭に、電流走る....!


       「街って、空にあるあの街?」


「そうだよー!『スカイ・ニュー・タウン』にいくんだ!」


一瞬、心が躍った。

いままで、目指していた、街に行ける。

今まで張り詰めていたものが、少しだけ緩んだ気がした。


◇


そうして、鷺坂さんに迎え入れられ、

国際地中居留区(インターナショナル・アンダーグラウンド・コロニー:IUC)

というところに俺は保護された。

鷺坂さんもそうだが、ここにいるひとは、みんな、反重力人間だ。

そう思った矢先、鷺坂さんが


「これで、5人目だな、地面を彷徨う反重力性の人間は。」


飲みかけていたお茶を吹き出しそうになった。

俺は言った。


「反重力性人間?あなたたちが、じゃないんですか?」


「とんでもない。こっちのほうが通常の重力を持った人間なんだ。

つまり、君が特殊なんだよ。」


      「ええ.....?」


訳が分からない。

シンプルになんで?

としか、思わなかった。


鷺坂さんが咳をした。


「オホン。」


鷺坂さんが俺のためにこの世界を説明してくれるらしい。


まず、ここ。

ここは国際地中居留区という名前。

ここの役割としては、空の街から地面や地中を開拓するために使われる点。

地面と地中両方を効率よく開拓するために、地面にむき出しかつ、地中にコロニーが埋まってる設計になっているっぽい。


そして、俺みたいな反重力性の人間についてのお話。

反重力性人間は、俺みたいに、地面にいる状態で見つかりやすいらしく、そういう人は一旦保護され、居留区で精密検査を受ける。

そして、空の街『スカイ・ニュー・タウン』で戸籍をもらい、居留区内で事前に見つけてもらったホームステイ先に行く。

ここから街へは、俺の考えた通り、この近くにある鋼鉄の柱『スカイ・グラウンド・エレベーター』で向かうらしい。


そして話が終わった後は、地中開拓班の皆さんが、地中で見つけたとっておきの獣を見せてくれるらしい。


それはモグラだった。


      「プッ....たかがモグラ一匹で?」


「モグラ一匹とはなんだ!2mも掘り進めてようやく採取した代物なんだぞ!」


結構お怒りである。


「まあいい。ほかにもあるぞ!漆黒に染まった地中の軍勢を見せてあげよう!」


俺は何となく”あれ”を想像してしまった。

ただ、本当にすごいやつが来た時に備えて、期待はしておくことにする。


          「これだーーーーーー!」


悲しいことに完璧に当たってしまっていた。


         「.........ありんこかよ.....」


    「ありんことはなんだーーーーーーー!!!!」


すんごい怒ってる。

ここでは天地が反転してるから、空飛ぶ鳥よりも、地中にいるアリの方が断然珍しいという。

ほかにも、サツマイモを見せてくれた。

10年前、この班員の人が野生のサツマイモを見つけたらしく、大手柄。

栽培しやすく、おいしいので、主食としてすぐに街に浸透していったそうな。

それも茶化したら、やっぱりキレられた。

ここの世界にとっては、地面が宇宙のように、未開の地なんだろう。

俺は、逆だがね。


話が終わった後はご飯。

献立は、

「ビーフのサツマイモソテーとポテトサラダ」

だった。

どんなけイモ好きやねん。

と思っていた。

しかし、実のところ、ここでは地面の方が近いので、イモが栽培しやすく、イモが主食らしい。

食べてみると、非常にうまかった。

ビーフのガツンとした味に、サツマイモの滑らかなくちどけと、ほのかな甘みが重なって、いくらでもいけてしまう、やみつきのある飯であった。

ポテトサラダもうまい。


腹がいっぱいになった後は、ちょっくら一人で居留区を散策。

そしてシャワーを浴びる。

人以外の重力は変わらずなので、水はいつも通り出る。

でも、通常重力の人向けに、改造されていて、水が、思っていたのと反対から出る。


「ウゲーーーーーーー!!」


口や目、耳、鼻に、不用意に水が入ってきて散々だった。

ぐったりしてしまった。

しかし、そんな疲れを癒す時間がやってきた。

就寝時間だ。

しかし、嫌な予感がした。

天井に、固定されて寝るのではないかと。

それは、いやだ。

寝心地悪すぎるし、満足に寝れない。


でも、鷺坂さんに案内された、寝室を見てほっとした。

ちゃんと天井にベッドがある!

やっぱり、そこは国際の居留区である。

保護した人向けの寝室があるなんて...!

感動した。

そして、病院の時より、圧倒的に寝心地の良いベッドで、この世界の2日目を終えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。