7. 邂逅
翌日、おじさんが一筆書いてくれた封書を受け取ったルチルとオニキスは、冒険者ギルドを覗いてみることにした。
ギルドは、街の門に面した広場にあるそうだ。
「そういえば、ここに流れ着いて以来、街の外に出たことってないね」
「そうだな。落ち着いちまえば、よそに用があるわけじゃなし」
冒険者をやるならば、当然何度も門から外に出ることになるだろう。
正直に言えば、ちょっとだけ楽しみでもあった。
以前は、周りの景色を楽しむどころではなかったし、そのための知識もまったく足りていなかったので。
……今だって、経済的に余裕があるわけではないのだが。
「……? 何だよ?」
肩に乗ったオニキスをちらりと見ると、怪訝そうな声が返ってきた。
「……いや、結局オニキスの力を借りる前提っていうのが、申し訳なくはあるんだけど、と思って」
「何言ってやがる。今更だろうが」
オニキスは、それよりも、とひげを振りながら別のことを言う。
「昔のこと聞かれたらどうすんだ。塔の話はしねえって決めただろ。どこでその力を使えるようになったんだ、とか」
ルチルの使える自衛の力というのは、実のところ、オニキスの助力があってこそだった。
そして、それはルチルが塔で受けていた訓練にも関係してくる。
「ああ、それもあったね……うーん」
はぁ、とオコジョは大げさにため息をつくと、ぽんぽんとルチルの頭を叩いた。
「仕方ねえな。そのへんは俺がうまいこと話してやらあ」
「うん、ごめん、ありがとう」
「ま、乗りかかった船だかんな」
そんなことを話していると、行く手に大通りが見えてきた。
その終点が広場である。目的地も近い。
──と。
「待て!! この!!」
男の声が響いた。行く手の大通りのほうからである。
つい立ち止まってそちらをうかがうと、角を曲がって、一人の男が走り込んでくる。
地味な服装に帽子を目深に被って、それらとは似つかわしくない薄桃色のこぎれいなカバンをつかんでいる。
「……ひったくりだ!!」
こいつがそうか!
ルチルはとっさにオニキスに目で許可を取る。オコジョは「いいぜ」と承認した。
男が走り込んできた、その石畳の路地。そこを狙って両手を前に突き出す。
「氷の息吹!」
ぱあっと、靄のようなものが手のひらから前方に広がった。
石畳に接触すると、霜になり、あたりを凍らせる。
「うわあああ!?」
勢いのままに走り込んできたひったくりは、途端に足を取られて──すってんころりん、盛大に転倒した。
「よしっ」
狙い通りの足止めだ。
とはいえ、体勢を立て直される前にどうにかしないと……と思っていると、青年が現れ、その背中を踏みつけた。
「むぎゅ」
「観念しろ」
「おお……」
そして手際よくどこかから縄を出すと、ひったくりを捕縛していく。思わず拍手してしまった。
「結構なお手前で」




