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 聖竜国第二十六区。聖竜国のやや北側に位置する鉱石の採掘で栄えるこの区は住民の半数近くがすでに避難を完了していた。古くからある鉱脈鉱床の近くに第二十六区ディーオアズはある。


「ここに来るときは彼女に結婚指輪を買う時だと思ってたんですがね」


金の髪を束ねた青年、竜兵隊第三隊副隊長ディラン・リグセルはそう言って笑った。今回の任務は、この男の妹ブランシュ・リグセルの奪還である。軽口を叩こうとも場の空気はピリピリしていた。


「どうしましょう…だいぶん参ってますね」


隊長に話しかけると、また身内のことだから外すべきかどうか迷ったのかうーんと唸った。隊長の悪いところは優純不断なところであり、本当に隊長に向いてないと思う。


「ここまで来たのに外すんですか?バカなの?私がいなくて誰が現場の指揮を執るんですか。行かせていただきますよ」


隊長はディランの言葉に口をもごもごさせた。反論できないようで、そうだな、といった後は口を噤んだままだ。


「ジェシカ、貴女は城から脱走する者を発見し、捕縛をお願いします。何人か付けますので」


「はい、了解しました」


「それでは、アングラレーク城へ行きますよ」




「こちらシャープスリー、シャープスリーワンへ。聞こえますか、どうぞ」


ディランから無線での連絡があったのは捕縛本隊として別れてから二時間後のことだった。ジェシカは森の中に身を潜めて、城からの逃亡者の発見に努めていた。


「こちらシャープスリーワン、シャープスリーへ。聞こえています、どうぞ」


「こちらシャープスリー、…妹は見つかりましたが、取り逃がしました。区長であるシリウス・アングラレークは痕跡すらありませんが、アルヴァ・アングラレークはまだ近くにいると思います」


「こちらシャープスリーワン、了解」


ディランの声はゾッとするほど冷たい声だった。ジェシカは身を固くしながら、アルヴァの捜索に動き出した。大体の場所の見当はついている。ジェシカの目は特別だった。


「ついてきて下さい」


ジェシカの下には五人の竜兵隊がいた。森の中、皆鎧を脱いで機動性に富んだ服を着ていた。しばらく走ると、遠くに黒髪の女がいた。何かを引きずっている。


「アーもう嫌になるなあ。私の邪魔しないでよ」


「誰だッ!!」


目の前に少女がいた。どこでもいそうな、金の髪を持つ少女が。ただ、目はどんよりと曇り、面倒くさそうにこちらを見る。一瞬動きが止まった。ジェシカは無線で連絡を取ろうと動く。


「こ、ガあ゛あ゛ッ」


腕が落ちた。悲鳴を噛み殺し、目の前の敵を睨む。隊員は我に返ったのか、剣を構えて少女の方へ向かう。


「俺の邪魔するなら、死ね」


それがジェシカが最後に聞いた言葉だ。



読んでいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 無線がある世界なんですね。 どういった機械を使っているのでしょうか? ファンタジー世界とはミスマッチなアイテムですが、独自性があっていいと思います。
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