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魔法使いは理系です  作者: 山石竜史
間章 アヤトは新入生です……?
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114 学習場所はギルドです

「だ~か~ら~、支部長でも誰でも良いから上司を出せって。それでわかるから」


 ギルド支部に着いて、入り口の扉を開いた僕たちの耳にそんな大声が飛び込んできた。それが聞こえてきた方、受付カウンターを見ると、困り顔の職員さんと赤い鎧を着た男が向かい合っていた。男はいらつきを表に出すようにカウンターに置いた紙をばんばん叩いている。それを見かねた別の職員さんが二人の元に向かう。


「どうされましたか?」


「宿舎を利用したい」


「申し訳ありません、宿舎は騎士団用となっていて一般での使用は出来ません」


「だからさっきからこれを見せているんだけどな」


「騎士団証ではないじゃない。そんな変な書類見せられたって許可は出せません」


 男の差し出す紙を差して横から反論する最初の職員さん。後から来た職員さんはそれを留めると、紙をよく見始めた。そして、しばらく目を閉じて何かを思い出すようにすると、目をハッと見開く。


「これは……すみません、ご迷惑をおかけしました。部下には後でちゃんと言っておきますので。」


「ああ、頼むな。今回は急ぎの用件じゃなかったから良かったが、緊急時にこんなことになってたらまずいからな」


「はい。それでは案内します」


 そんなやりとりの後、後から来た職員さんと赤鎧の男は階段を上がっていく。置いてけぼりを食らった職員さんは目をぱちくりさせている。


「なあ、アヤト。なんだったんだ?あれ」


「さあ?」


 アレフから聞かれるが、僕にも何がなにやらわからない。ギルドに入ってすぐの謎の一幕に呆けていると、テレージア先生がパンッと手を叩いて僕たちの注意を引く。


「はい、みんな。ここがギルド支部です。それじゃあ、職員さんに話を聞きましょうか」


 そう言うとカウンターに向かう先生。そこで職員さんと何か話して、戻って来る。先生に言われて壁際の椅子に座って待っていると、階段から初老の男性がやってきて僕たちの目の前に座った。彼はかけたメガネの奥で目を鋭く光らせると、僕たちを見回して「ほぅ」と息をつく。そして改めて僕たちの方を真っすぐ向いて言った。


「ようこそギルドへ。私がここの支部長。エリオット・フランベルクだ。といってもみんな覚えてるかな。あれももう二年前か。大きくなったな」


 そう、目の前にいる初老の男性はこの支部の長。二年前のワーウルフの事件の際に、事情聴取の場に居合わせたのだ。ルーシェちゃんとも、ディーさんたちがこっちに移ってきたときに事情説明もかねて顔合わせをしていたらしい。支部長の言葉から少し昔の記憶に思いをはせていると、彼は先生に声をかけているようだった。


「テレージア先生でよかったかな。毎年お疲れ様です。それにしても、今年の一年生は面白い子たちが集まりましたね。魔獣の大群から弱冠三歳にして生還した子たちとか、公都の……おっとこれは言っちゃいけないんでしたかな。しかも、そのうちアヤト君については両方の事件に大きく関わって、さらに前代未聞の魔力無しとは。いやはや」


 ぐはっ、と僕は心の中で喀血する。耳に入ってきたその言葉のうち、魔力無しの部分だ。せっかく最近のいろいろで気を紛らわせていたのに。

 その後、ギルドの理念や仕組み、設立からの歴史を質問を交えつつ聞き、ちょうどお開きの時に「失礼します」と職員さんがやってきて、支部長に何やら耳打ちした。支部長は頷くと、僕たちの方に顔を向けて口を開く。


「これで終わりだけれど、すまんなみんな。お昼を過ぎたら親御さんを連れてまたここに来てくれるか?みんなに会いたいという人がいるんだ」

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