113 考え事は危険です
「『知識の集積する部屋』が書庫の事だとしたら」
壁に掛けられた時計をちらりと見やり、廊下を駆け抜ける。差されていた時刻は正午の少し前。これが僕が急いでいる理由だ。
「間に合うか?まあ間に合わなくてもなんとかなるとは思うけど……」
階段を駆け上がり、書庫の扉を押し開く。ポイントはこの星から一番近い恒星が最も高く上がるときという文言だ。これはおそらく正午の事だろう。地下には窓が一つだけあったからそこから入る光をたどれば……。
十五ミニ後、書庫の地下には目的を果たせず途方に暮れている僕の姿があった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「何が違ったんだろう?」
今は学校の教室。朝の会の前に自分の席で考え込む。
結局あの後正午には間に合わなかったが、窓から差し込む光の位置を頼りにおおよその位置は予測出来た。しかし、探してもそれらしき物は全く見当たらなかった。もしかすると、夏至のことまで考慮しなければならないかと思って場所をずらして探してもみたのだがそれも外れ。それで、今日になっても頭を悩ませ続けているのだ。
「アヤトくん」
うーん、最も高く上がるときっていうのは夏至の正午であってそうなんだけどな。
「アヤトくーん」
そもそもうちじゃないってことか?どこかの図書館とかはたまた別の邸宅の書庫とか。ひいおじいちゃんに関係のある建物全部調べないといけないのか。これは手間がかかるぞ。じゃあ帰ったら早速お父さんにいろいろ聞いて――
「いてっ」
額に衝撃を受ける。何だ?と思って顔を上げると目の前にテレージア先生がいた。
「アヤトくん。聞いていましたか?」
「……てへぺろ」
効果覿面だった。……悪い方に。
「いたいいたい。体罰反対」
「じゃあちゃんと話を聞きなさい」
チョップの連打をしながら注意してくる先生。先生はその手を止めると改めて説明をする。それによると、一年生は今日校外学習らしい。他の学年は高学年クラスと合同の授業だそうだ。毎年高学年側の教室を使っていたのだが、今年はその教室が使い物にならないので低学年側の教室を使うとのこと。本当に申し訳ありませんでした。
それじゃあ行きますよという先生に従って教室を出る僕たち。その背中にアデクが微妙な表情で視線を向けていることを僕は知らなかった。




