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摸 ③

…ゆっくりと、足を一歩踏み出す度に。

三人のいじめっ子達から僕のことを助け出してくれた、その女の子の特徴的なツインテールの髪の先が、ふわりと風に流れては…小さく揺れ動く。


…。


僕は、それを見つめたまま…左腕を引っ張られ、されるがままに、その女の子の後をノソノソとついて連れて来られたその場所は、同じ公園の敷地内の片隅にある、鉄棒が並び立っている所、だった。


…。


その女の子は、そこに着くやいなや


「実は明日、学校の体育の授業で、逆上がりのテストがあって…でも私!ちょっと苦手で…っていうか全然出来なくて…!それで練習しようと思って、この公園に来てみたの!」


振り返りながら、元気良くそう言うと。

掴んでいた僕の左腕のそれをそっと離し、並び立っている鉄棒の中の一つの前に移動してから、目の前にある水平に伸びた棒を軽く握りしめて


「土屋くんは、逆上がり…出来る?」


そう、尋ねてくる。


「…」


僕はその女の子の言葉に応えるようにして、残念そうに無言で首を左右に小さく振ると。

女の子は少し当てが外れたように


「…そっかぁ、出来るなら教えてもらおうと思ったんだけどなぁ…」


そう言うと


「でもまぁ、繰り返しやってる内に、何とかなるよね!!」


すぐに笑顔になって、申し訳なさそうにモジモジとしているそんな僕のほうへ一瞬小さく微笑み掛けてから…目の前にある鉄棒に、視線と身体の向きを戻すと真剣な眼差しで


「…えいっ!」


小さく叫ぶようにそう声を発しながら、両足で地面を思い切り蹴り上げては、逆上がりをしようと、する。

…でも、その女の子の両足は振り子のように、水平に伸びた棒を軸に、あと少しで回転しそうなところで、パタパタと宙で空を切っては…無残にも引力の力で、元いた地面の上に戻っていって…しまう。


…。


僕は、そんな女の子の真剣な眼差しを、そして横顔を、側でジッと見つめながら…。


僕はご覧の通り、食べるのが大好きで、運動が苦手なポッチャリ体型で…。

しかも…先ほど助けてもらったのでご存知かとは思いますが、情けないことに生まれて以来、この方ずっと…かなり年季の入ったいじめられっ子でして…。

それに加え…助けて頂いた君が困っているというのに、何のお役に立つことも出来ず、逆上がりも出来ず…ゆえに、アドバイスをすることすら全く不可能で…。

…。

本当に、本当に申し訳ないのですが、それでも何とか…。

こんな僕のことをいじめっ子達から助け出してくれた君に、ほんの少しでも恩返しが出来たら…と、喜んでくれたら…と、友達になってくれたら…と、好きになってくれたら…と、デートはやっぱり行きつけの駄菓子屋さんで!…と、そこの駄菓子屋さんの粉末タイプのジュースは激安な上に、舐めても良し、水に溶かして飲んでも良し、なんです!!…と。

そして…もし、そのデートがうまくいった暁には…将来的にはぜひ、僕のところへお嫁さんに来てくれたら!!!…と。

…。


ただ側でモジモジとしながら僕が…頬を少し赤らめて一人、そんなことを思っていると。


「それにしても、さっきの地面のあの穴!あれだけの深さに大きさ、よく掘ったよね!誰かが落ちると危ないし、後で一緒に埋めたほうがいいよね!」


逆上がりに何度も失敗しながら、女の子がやはり元気良くそう言う。

僕は…そんな女の子のことを、モジモジ チラチラ と見つめながら


「あれはぁ…僕が開けてぇ、ごめんなさぃ…すぐに塞いでおくねぇ~」


そう口を開くのと同時に、少し離れた場所にあるさっきの穴を、念を込めるようにしてジッ…と見つめると、その能力を静かに発動させた。

…次の瞬間、開いていたその穴は瞬く間に塞がれ消え、そこには…元通り何もない普通の地面があるだけで…。


…。


僕がこれでもう大丈夫!…と言うように、女の子のほうに視線を送ってみれば。

その女の子は、目の前にある鉄棒を両手で握りしめたまま…ポカ~ンとした表情かおで、ついさっきまであった穴を、今はもう何もなかったかのように元通りの地面になってしまったその場所を、呆然として見つめながら…。

…そして、そのまま次に、その表情のままゆっくりと僕のほうへ視線を移すと、クリッとしたその瞳をパチパチッ…と、二~三度不思議そうに瞬かせてから、僕の顔を…瞳を…マジマジと真っ直ぐに、見つめ直した。

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