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美沙 ②

“一卵性双生児の優劣性”


…開かれたページのその一説に目を落としたまま、美沙は硬直したように動かない…いや、動けなかった。


…。

読んでは、いけない。

読み飛ばして、次へ…。


どこか頭の片隅で、自分の中の何かが…そう、語り掛けてくる。


…今回の件とは、凛さんのこととは全く関係のないことだもの。

私情を挟む余地など今は…だから、だから読み飛ばして…急いで凛さんを救い出す方法を見つけ出さないと…。


…。

でも…。


自分とそっくりな女の子の涙で濡れた顔が…こちらに向けて見開かれたその瞳が…思い浮かんで、くる。


…。

知り、たい…。

どうしてあの子とあたしが、こんなにも違うのか…を。

どうしてあたしが、生まれて来てしまったのか…を。


硬直した身体に逆らうように、語り掛けてきたその何かに背くように…美沙は、その一説をゆっくりと目で追い掛け始める…。


一卵性双生児の優劣性:特殊能力者が一卵性双生児である場合、どちらか一方がその能力において大変優れており、もう一方が大変劣っている、という事例の報告が、少なからずとも世界各国の研究機関でなされている。

このことは、容姿がほぼ同一である一卵性双生児の場合、能力差がそのまま双方の優劣として周囲に認知されることも多く、生活環境と共にその後の人格形成に大きな影響を与えることがある。


…。

何よ、これ。

たった、これだけ…?

こんなこと…今更言われなくも、分かってるわよ!


…。

それでも…。

すべての一卵性双生児がこの事例通りじゃないにしても…あたしの、あたし達の場合は、そのままここに書かれている通りだったことだけは、確か…。


美沙は一瞬、目を細めるようにしたかと思うと…何かに思いを巡らせるように、そのまま静かに瞳を閉じる。


先祖代々、魔術の名門…特に黒魔術を扱うことに長けてきた “黒川家” 。

…そこに生まれた、双子の女の子。

姉の美沙と、妹の美玖みく

魔術を扱うにはその血統と共に、ある程度のセンスが必要とされる。

…血統については、何ら問題はない。

ではセンスに問題があったのだろうか…?

…どんなに教え込んでも、雷撃の魔術しか扱えない姉の美沙。

それに比べ、雷撃の魔術以外は、すべてを器用に使いこなす妹の美玖。


…。

…物心ついたときには、両親の愛情も、名門 黒川家を受け継いでいく…という周囲の期待も、すべては妹が…美玖が一人で、その背中に背負って。

あたしはいつもそれを近くで…あの子の隣りで、見ている…だけ。

それでもあたしは…。

それでもあたしは別に、それで全然構わなかった。

まぁ…容姿が同じ分、少しひねくれたりもしたけれど…。

でも、よくよく考えてみれば…誰にも、なんにも期待されない気楽さ。

それに…。

美玖がどんなに練習をしても…唯一使いこなせない雷撃の魔術が、あたしには使いこなすことが出来たんだもの。

…それだけでもう、十分じゃない?


あたしに対する…黒川家のみんなの漠然とした態度から


“黒川家の期待を背負った優秀な妹と、性格がひねくれた落ちこぼれの姉”


そんな図式を、いつからかあたしは素直に受け容れて…別にこれ以上何も望む必要なんて、ない。

…ただ、こんなあたしのことを、家族の一員として黒川家のみんなが…ううん、両親と美玖だけが認めていてくれさえするのならば…あたしはそれで十分満足だった。


…そう、あの日が来るまでは…あたしはそれだけで、十分満足だったんだ…。

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