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囁聞 ③

…。

……。

………。

…………静寂のときが、訪れる。


静まり返った周囲に、恐る恐る俺が瞳を開くと。

先ほどの男の子達の姿はもう…どこにもなく。

そればかりかそこは、さっきまでいた実家近くの空き地でさえなく…。

塞いでいた耳から両手を離し、しゃがみ込んだままキョロキョロと俺が周囲を見渡してみれば…いつの間にかそこは、まるで瞬間移動したかのように住み慣れた実家の薄暗い自分の部屋の中…で。

…当たり前のように閉ざされたカーテンのすきからは、一筋の太陽の光りが差し込んできて…いる。


…。

俺がその場でゆっくりと立ち上がって、自分のその姿を見回してみれば…今度は万年、パジャマ姿のままの中学生の頃の俺の姿になっており…。


一体、これは…。


…そんな気持ちを感じたのも、一瞬のこと、で。

その姿を見た途端に、ふいによみがえってくるあの頃の気持ち…。

パジャマのそでの中で拳を握りしめながら…俺は、唇を強く噛みしめるようにして、その気持ちをゆっくりと反芻はんすうし始める。


あのときからずっと、そう…なんだ。

何も変わらない…変わって、ない。

…。

レッテルを貼るほうも、そして貼られたほうも。

一度そこにカテゴライズされてしまった人間は、なかなかその中から抜け出すことが難しい…。

小三の頃…実家近くのいつも遊んでいた空き地で、持っていたその能力ゆえに友達全員からバケモノ扱いのレッテルを貼られてしまった俺は、やはりそこから抜け出すことが出来ずに、 “人間恐怖症” という心の闇を抱えたまま、よくありがちな不登校状態へとおちいり…。

ひょんなことから神楽坂学園に入学するまでの間、その長い間、実家の自分の部屋の中に引きこもり続け…。

…あの頃の俺は、その持て余すような長い長い時間の中で。

まるでそれを懸命に浪費するようにして…一晩中ゲームをしては、朝方眠りに着くという昼夜逆転の生活を送って…いて。

…。

今となっては、毎日好きなだけ、好きなテレビゲームを出来た時間が、楽しかったのかどうなのか…。

それでも当時は、この世界ではない別の世界へと身を置いていなければ、この世界に存在している意味が分からず、気が狂いそうだったから…。

そして…未来のことを考えると、たくさんの不安といっぱいの悲しみで心が壊れそうだったから…。


…。

そうか、そういうことだったんだな…。

いつの間にか、この閉ざされた空間の中で…俺は。

…。

…今、やっと分かったよ。


散らかった薄暗い自室の中央で、俺はうつろな眼差しのまま…一人小さく頷くと。


…神楽坂学園のことも。

高一の未来の自分のことも。

美沙のことも。

摸のことも。

依田先生のことも。

雨宮神社のことも。

…そして、雨宮 凛のことも。

全部俺が、この部屋の中で創り出した…


「願望という… “夢” だったのか…」


俺はボソボソッ…と小さくそう呟くと。

何が夢で何が現実か分からないまま…トボトボとテレビの前まで歩いて行き、その電源をONにしてから、散らかった部屋の中に無造作に置いてあるテレビゲームのスイッチをそっと入れて…その側に静かに座り込み、テレビゲームのコントローラーを当たり前のように手すると、そのままテレビ画面をジッ…と見つめた。

「読者のみな、元気にしておるかの?いつも読んでくれて本当に感謝じゃ! “お前は誰だ?” …じゃと!?わしじゃ、わし!…いやいや勘違いするでない、わしわし詐欺ではないぞ!?…。…もう、このくだりは…いいか…の。ところで、主人公のわしが大活躍する “神楽坂学園 高等部 少年少女祓魔団(仮)” のほうはどうかの。…?…!?な、なん…じゃ‥と?雨宮神社を例のあの三人が去った後から、わしがまったく出てきておらんから、その存在すら、さっぱりきっぱり忘れておった…じゃと!?」


…次の瞬間、凛之助は鼻で笑うように


「フフンッ…読者の皆、そんなくだらん冗談では笑えんぞ!誰が何と言っても、わしはこの物語のスーパー主人公なのじゃ!!そんなに長い間、出てこない訳がなかろうが…」


そう言いながらも…どこか不安になったのか、神主服のその懐に右手を入れ、ゴソゴソとした後…そこから、例の携帯を取り出してそれを開き、サイトにアクセスし、神楽坂学園~に、目を通し始める。


「…」


サイトを見ている凛之助の表情がみるみる内に青ざめて…いく。


「…。…ど、読者の皆が、言った通りじゃ。あの三人が神社うちを去った後から…わしが、このハイバー主人公であろうわしが…まったくもって、さっぱりきっぱり出てきて、おらん…。そんな…そんなバカなことがあって、なろうか…」


そして…何かを決心したかのように凛之助は携帯を静かに閉じ、それを懐の中に戻し入れると。


「…読者の皆、すまぬ!わしはちと急用を思い出したので、今日はこれにて失礼するぞ!いや、案ずるでない…決して作者さっくしゃを探し出して意見したり、わしの出番を増やせ!…などと脅迫めいたことを言うつもりは、毛頭ない!ミラクル主人公の…このわしのことを信じるのじゃ!!…では、これからもわしが主人公の“神楽坂学園 高等部 少年少女祓魔団(仮)” の応援をよろしく頼んだぞ!う…うはははは…!ではさらばじゃ~!!」


そう言うと。


「作者どこじゃ~!おらぁ~!!封印してまうぞ~!!!おらぁ~!!!!ど・こ・じゃあ~!!!!!」


そんな叫び声と共に…。

血走った瞳と鬼のような形相で、はやごとく走り去って行く凛之助の姿が…その姿が読者の皆さんの瞳に焼きついたのであった…(続…かないと思います、今度こそ!…凛之助の魔の手から無事逃げ延びられましたら、下手は下手なりにですが、少しでも精進出来るように頑張って続けたいと思います。いつも応援メッセージ、力になっています。本当にありがとうございます)。

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