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紙切れ

美沙がじいさんから貰った古く汚れた朱色の小さなお守りのその袋の結び目を解いて、中から取り出したのは…。

四つ折りに丁寧に折り畳まれた、古めかしい一枚の小さな紙切れだった。


「うわぁ~!何ですかぁ?それぇ~?」


二度目となる摸のその驚きの言葉に美沙は応えるように、その古めかしい紙切れを丁寧に開き、見えるようにしてテーブルの中央にそっと…置く。

俺と摸が顔を寄せ合って覗き込むようにして、急いで広げられたその紙切れを見てみると…


「…」


「…」


…。

変色してしまったその紙の色合いから…古いものだということは、分かる。

筆で何か文字がそこに書いてある…ということも。

でも、何なんだ…この小さな蛇がのたまわっているような文字は…。


褐色に変色してしまった正方形の小さな紙切れに、流れるように筆で書かれたその文字を、短い文章を、目の前にして…俺と摸は難解な表情かおでしばらくの間…無言でその紙切れを見つめ続けた後…。

…今度はお互いの顔を見つめ合い、お互いに解読が出来ない…ということを悟り合った俺と摸は、助けを求めるように…すがりつくような瞳で、正面の席にいる美沙に向かって、熱い視線を…送った。

美沙はそんな俺と摸の視線に、呆れたような表情で小さく溜息をつくと


「 “与六 様 例えこの身体 けがれても 心は永遠に貴方だけのもの つう”…そう、書いてあるわ…」


そう言って、その紙切れを手にすると…再び四つ折りに丁寧に折り畳んでからお守り袋の中に戻し、その袋の口をしっかりと結び直した。


「通さん…と言えば、さっきじいさんが話してくれた…雨宮の鬼物語…の、お通さん…だよな?」


俺がボソボソッと言うと。

美沙はその言葉に小さく頷き返して


「…そうね、これはどうやら…お通さんが与六さんに宛てた…いいえ」


そう言って美沙は、首を左右に小さく振ると


「…自分が裏切ったと勘違いして、鬼になってしまった愛する人へ、与六さんに伝えたかった…お通さんの “想い” なのかも…」


続けてそう言うと、手にしたお守り袋の表面に金色の糸でしゅうされている、どこか古ぼけた “御守” という文字を見つめてから、それを裏返し、その裏面に書かれている “雨宮神社” というこれまたやはり、金色の糸で刺繍されている文字を中指で静かになぞりながら…


「きっと…与六さんが鬼になり小さな壺に封じ込められた後も、自分が殺されそうになった場所へ、雨宮神社へ…与六さんのことを想い、足を運んでいたのね…。誰にも言えない自分の秘めたる想いをこの縁結びのお守りの中に封じ…閉じ込めるようにして…」


静かにそう言うと…美沙は、そのお守りを両手のひらで優しく包み込むようにしながら…どこか切なそうな表情で、自分のその両手をそっと見つめた…。

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