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ハンカチ

じいさんの口から一直線に勢い良く放たれた焙じ茶は、じいさんの正面の席で、その一連の流れを注視していた俺の顔面に見事に直撃し…。


…。

…そんな俺から、るようにして距離を取る美沙と摸の…そんな二人の存在を再び肌で感じつつも俺は、顔面から焙じ茶をしたたらせて…そのままの状態で呆然としたまま…硬直をして、いた…。


…しかしじいさんは、そんな俺のことなどお構いなしに、自分の隣りにいる女の子ほうへ急いで向き直ると


「…ど、ど、どうしてお前が…ここに、おるんじゃ~!!」


わざとらしく目を見開いて、そう叫んでから…女の子を見つめては驚いて、いる。

女の子はそんなじいさんに、エプロンのポケットの中を覗き込むようにして、その中から丁寧に折り畳まれた一枚の紙切れを取り出すと、それをじいさんにそっと差し出し…。

じいさんはそれを急いで受け取り、折り畳まれたその紙切れを広げて…七夕のときに願い事を書く短冊のような大きさのその紙片を見つめながら…


「…こ、これは…わしが張った結界の札のうちの…一枚…」


一転、今度は落ち着いた様子で、呟くように…そう言う。

じいさんのその様子を見て、女の子はさらにエプロンのポケットの中から、可愛い花柄が描かれた小さなメモ帳と、犬か熊か…それとも将又はたまたパンダなのか?…そんな謎の絵柄が入ったボールペンを取り出し、そこに何かをメモすると…それをめくるようにして一枚剥がして…再びじいさんに、それを差し出す。

じいさんはそのメモ用紙を受けると、そこに書かれた内容を注意深く目で追いながら


「そう…じゃったのか、これががれて…それで、それで外に出られた…という訳じゃな?」


静かにそう言うと、メモ用紙から視線を女の子のほうに戻して、どこか寂しげな、申し訳なさそうな表情かおで…その顔をまじまじと見つめ直した…。


女の子は微笑みながら小さく頷くと、再びエプロンのポケットの中を覗き込み、今度はその中から身につけているエプロンと同色のクリーム色のハンカチを取り出しては立ち上がり…。

焙じ茶を顔面から滴らせて、呆然と二人のやり取りを眺めていた俺の隣りまでやって来ると…手にしていたハンカチを、そっと俺に差し出した。


…俺は差し出されたハンカチと、可愛く微笑むその女の子の顔を…しばらくの間、交互に見つめた後…


「…あ、ありが…とう」


ボソボソッとそう言ってから、そのハンカチを受け取り、自分の顔にそっと充てがった。

女の子はそんな俺に、ニコッと微笑んでから…再びじいさんの隣りの席へと戻って行ってしまう。


…。

顔に充てがった柔らかなハンカチから…微かにいい匂いが、する…。

どことなく甘いような…優しい香りだ…。

…。

可愛いだけじゃなくて…。

美味しいお茶を入れられるだけじゃなくて…。

こんなにも優しい心遣いが出来て…しかもハンカチには、いい香り…。

こ、こんなことされたら…まさに、これは…


・れ・て・ま・う・や・ろ~!!!”


女の子から差し出された、そのハンカチで顔面の水分を吸収しながら…。

外見では必死に平静さを装いつつも、内心では少し早くなった胸の鼓動と共に…そのハンカチから漂う微かな甘く優しい香りと…そして気がつけば、何度も何度も脳内でフィールドバックされる、俺に向けられたその女の子の可愛らしい微笑みに…俺は心底、酔いしれて、いた…。

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