笑う女の子
舟を漕いでうつらうつら…と、完全に夢の世界の住人になってしまっている、そんなじいさんの様子を目の当たりにして、俺は…。
今回の件について、真剣に考え、悩み、打開策を考えていた…ということも相まって、ついつい
「じ、じいさん…寝てたんかいっ!!」
…小さなツッコミの動作付きで、しかもボソボソッと喋るいつものトーンとは違い、張りのある声で叫ぶように、そう言ってしまってから…。
「…」
「…」
両隣りにいる…美沙と摸の俺に向けられた驚くような視線を肌で感じつつも…。
…未だ舟を漕ぎ続けているじいさんの隣りで、そんな俺のことを見て、クスクスと笑う女の子に気がついて…ハッと我に返り
「…コホンッ」
そう、わざとらしく咳払いをした後…
「…な~んて、ツッコんでみたり…」
と弱々しくフォローはしてみたものの…返って逆効果、もう後の祭りで…。
女の子はそんな俺のことを見て、さらにクスクスとおかしそうに笑い…。
…恐ろしくて、見ることも出来ないが、美沙の冷たい視線が…こめかみ辺りに、鋭く突き…刺さる…。
…。
俺は自分で自分を慰めるようにして。
…い、いいんだ。
可愛い女の子が、俺のありきたりの冴えないツッコミで、楽しそうに笑ってくれたのならば、それで…。
仲間にどんなに驚かれようが…突き刺さるような冷たい視線で見られようが…俺は全然、構わ…ない…。
もちろん、全然ショックじゃない…し、恥ずかしくなんかも、ない…。
本当に…全然…俺…。
そう思い込むようにしながらも、重力の影響だろうか…?
なぜか顔が下へ下へと向かって行き、俯き落ち込んでしまった俺に…隣りの摸が耳元で
「囁聞くん!今のツッコミ最高でしたぁ~!あの女の子ぉ~かなりウケてますよぉ~!…ほら、まだ笑ってますぅ~」
…と無邪気な声で、ご丁寧にとどめの一撃を、無残にも俺に加えた…。
…。
無邪気で空気が読めない…ということは、時として罪になるんだな…。
俯きながら俺が、そんな悟りを開き始めている中…。
この流れを断ち切ろうとするかのように、冷たい視線から再び優しい眼差しに戻った美沙が
「ところで…」
“あなたは?”
そう聞こうとしたのだろうか…?
…でもその言葉は、最後まで発することが出来ずに
「ふぁ~あ…、良く寝たわい…」
そう気持ち良さそうに小さく伸びをして、首と肩を回し動かしながら…夢の世界から帰還した、じいさんのその声によって遮られた。
…そしてじいさんは、俺達三人が自分の顔を注視していることに気がつくと、バツが悪そうに
「…おぉ~お主ら…すまんかったのぅ…。我が家の事情をすっかりと話し終えて、目を閉じておったら、睡魔の女神様がわしのことをおいでおいでと手招きをしてのぅ…かなりの美人さんのその誘惑についつい…いやはや歳は取りたくないものじゃ!」
そう言って
「うはははは…」
と豪快に笑う。
そして目の前に置かれている湯のみを、さも当然のように手にすると
「長話をして、少しウトウトとして、丁度喉が乾いておったところじゃ…」
そう言って、湯のみを口に運ぶと一口飲み。
「おぉ~!これはうまいのぅ!この芳ばしさは…焙じ茶じゃのぅ~」
頷きながらそう言って、美沙のほうに顔を向けると
「みさりんが、入れてくれたのかの?」
そう言ってまた、焙じ茶を口に含む。
…。
“さぐるん” の次は… “みさりん” かよ…。
リアルに声に出さないように細心の注意を払いながら、俺が地味に心の中でそうツッコミを入れていると…。
美沙はそんなじいさんの言葉に応えるように、首を左右に小さく振って
「…いいえ、あたしじゃなくて…」
少し困惑するようにそう言ってから…じいさんの隣りにゆっくりと視線を移す。
じいさんは焙じ茶を口に含んだまま、美沙の視線の先を目で追うようにして、そちらに顔を向けると…自分の隣りで微笑んでいるその女の子の顔を見て、一瞬硬直し…。
…そしてゆっくりと正面にいる俺のほうに顔を向けてから…。
ブッーーー!
…と、まるでタコが墨を吐くように、口に含んでいた焙じ茶を一気に、吹き…出した…。
「読者の皆、元気にしておるかの?いつも読んでくれて本当に感謝じゃ! “お前は誰だ?” …じゃと!?わしじゃ、わし!…いやいや勘違いするでない、わしわし詐欺ではないぞ!?…そう、 “ポニーテールの爺” こと、凛の祖父、雨宮 凛之助じゃ!…分かってくれたかの?本日は、このあとがきのコーナーをわしが使おて、作者からのメッセージを皆に伝えたいと思うぞ!」
そう言うと、凛之助は神主服の懐に右手を入れ、ゴソゴソとした後…。
…そこから一通の茶封筒を取り出しその口を開き、中から三つ折りに畳まれた真っ白な便箋を取り出し広げ、読み始める。
「 “読者の皆さんへ。いつも読んで下さってありがとうございます。皆さんから頂いた応援メッセージやアドバイス、ご意見・ご指導など、その一つ一つが私のやる気と救いの源となっております。返信出来ないこともございますが、これからもお気軽にたくさんのお言葉を頂けたら…そう切に思います。拙い文章ですが拙い文章なりに、これからもマイペースに頑張って参りますので、今後とも温かい目で見守って頂けると嬉しく思います。よろしくお願い致します。 作者より” 」
凛之助は便箋を読み終えると、それを再び茶封筒の中にしまい込み…
「…という訳なのじゃ!これからもわしが主人公の “神楽坂学園 高等部 少年少女祓魔団(仮)” の応援をよろしく頼んだぞ!わしのこれからの渋~い活躍が楽しみなのじゃ!…いや、そんな場面があるのかどうか、わしは知らんが…。でも、じゃ…!ただ一つ言えることは、この突然のあとがきのコーナーは、わしがもろうた!…ということじゃわい!うはははは…!ではさらばじゃ~!!」
そう言うと、疾風の如くどこかに走り去って行く凛之助なのであった…(続…かないと思います、多分…。ご覧頂きありがとうございました)。




