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ほっこり美味

自分の目の前に置かれた湯のみを手に取り、その中の液体を口に含んだ瞬間…。


…こ、これは!!


身体全体に広がる優しい温かさと、ほうじゅんこうばしい香り…。

そして…ほのかな甘みさえも感じてしまうような…その絶妙な温度具合…。

正直…何のお茶かは分からないが、普段ジュースばかり飲んでいるような俺でも、おいしいお茶であるということが分かるくらいに…実に、おいしい!


…ああ、日本人で本当に良かった。

俺はきっとこの一杯のために生きていたんだ…。


そのあまりにものおいしさに、俺が大袈裟すぎるくらいに一人、そう感動していると。


「…とても美味しいわ!このお茶!」


そう美沙が、優しい眼差しでその女の子を見つめながら、口を開く。

女の子はそんな美沙に、まるで


“ありがとう”


と言うように、嬉しそうな表情かおで小さく会釈をすると、そのまま恥ずかしそうに下を向いてしまう。


「本当に美味びみですぅ~!」


ほっこりとした表情で、摸は満足そうにそう言うと、湯のみを両手で包み込むようにして持ちながら…コクコクと喉を鳴らして、お茶を飲み続けて、いる。


俺は、美沙と摸のその言葉に同意するようにして慌てて頷くと、じいさんの隣りに座って恥ずかしそうに下を向いている女の子のことを…こちらを見ていないのをいいことに、探るようにまじまじと…見つめ直した。


…。

誰だか分からないが、恥ずかしそうに下を向いているところも可愛いな…。

しかもこんなにおいしいお茶を入れることが出来るなんて…きっと料理もうまいに違いない!

外見が可愛くて、推測だが…おそらく料理もうまい!

これはきっといい彼女…いや奥さんになるだろうなぁ…。


俺がいつの間にか、その可愛さに思わずボッ~としながら、そんなことを考えていた次の瞬間…。

下を向いて恥ずかしそうにしていたその女の子がふいにスッ…と顔を上げ、俺のほうを見て、そして目と目が合うと…その可愛い顔で再びニコッと微笑んだ。


…うっ。

普段の生活の中で…こんな可愛い女の子に微笑み掛けられることがまずない俺は、恥ずかしさのあまりとっに目を逸らしながらも、その感動が抑え切れずに、つい…


美沙の雷撃…マイナス五百円

じいさんと摸のKRZ話し…マイナス三百円

美味なる謎のお茶…時価

突然登場した、謎の可愛い女の子の微笑み…プライス、レス…


…などと、どこか懐かしいCM風に、その感動を心の中で表現してしまって…いた。

そしてその感動は…過剰に、爆裂に、暴走をし始め…。

…ありがとう!俺にだけに向けてくれた、その天使のような微笑み!!

万歳~!万歳~!まさにプライスレ~ス!!

…と、拍手喝采の心の中で、俺がポワ~ン…と、その余韻にひたっている中…。


その女の子は、さっきから腕を組んで瞳を閉じたまま微動だにしない…自分の隣りにいるじいさんのほうに顔を向けて…


“早く飲まないとお茶が冷めちゃうよ”


と言わんばかりに、じいさんのその肩を、優しくトントンッ…と叩いた。


肩をトントンッ…と叩かれたじいさんは、その刺激に一瞬ビクッ!とすると…次の瞬間、大きく目を見開いて


「I Lo~ve ヨネ~!」

(和訳:愛しているよ~、ヨネ~!)


と、意味不明な言葉を…美味なるお茶でほっこりとした雰囲気が漂うリビングルームの中心で一人…いや、リビングルームの中心というか…謎の女の子も含め、俺達四人が注視するその先で、叫んだかと思うと…そのまま目が半開き状態になり、うつらうつらと舟をぎ始め…た。


「…」


「…」


「…」


…。

その様子は誰がどう見ても、ほんのついさっきまで夢の世界にいたとしか思えない状態で…。

じいさんの長く辛い話しを聞いて…俺が必死に、そして真剣に、これからのことを考えていたときに…いや、謎の可愛い女の子を前にして、それ以外のことも考えてはいたが…ひとまずそれは置いといて。

じいさんは…このじいさんは…。

そう思うと、俺はあとさき考えずに心の中の言葉を…声を…思わず口に出してしまって、いた。

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