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サラリーマン、銀河を行く ~底辺から花形部署へ成り上がれ  作者: 無海 シロー


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セキュリティ大作戦 21-4

 4.妹の実力は?



 トラッティンとティーマTDFメインコンピューター『電算室』を結ぶラインは二本ある。

 メインとサブと言葉で分けられているが、サブであってもこれは予備ではない。メインに何かあったらすぐに代わりを務めあげられるようにシステムをあたしは育て仕上げているのである。どんな状況にあっても滞りなくデータが届けられるようにしている。

 それがラインオぺレーターとしての誇りであり、矜持だ。

 サブラインはTDFがパビリオンと『電算室』を結ぶためにフィオーレがメインになって構築し、トラッティン支社やパビリオンを繋ぐ役割を果たしてきた。

 技術者目線からこれ以上ないラインであると言える。

 ただそれが容量的に限界を迎えそうだったので、新たなラインを欲していたTDFはラインオペレーターの営業部門に新たなライン構築を依頼してきた。

 TDFは本社弱小部門であり、部長からして何かと悪い方向での噂しか立たないTDFの対応にあたらせられたのは入社半年にも満たない落ちこぼれ社員だったあたしだった。指名を受けた訳ではない。TDFに対して逃げ腰だった課長や部長から、なぜか矢面に立たされただけだった。

 当時のあたしはラインオペレーター室で浮いていた。

 営業成績も悪くなく、先輩らよりも技術力はあったが、歯に衣を着せぬ物言いや口さがない営業が苦情になっていたのである。同僚や先輩たちからも同様であった。

 そんなあたしを拾い上げてくれたのがTDFで、捨てる神あれば拾う神ありと言ったところだろう。彼らのお眼鏡にかなったあたしは今、好き勝手にライン制御をやらせてもらっている。

 TDFは天国だった。

 サブだけでなくメインシステムをカスタマイズしてTDFで運用しているのはオリエナである。

 彼女の裁量がラインに反映している。

 オガワが本社採用当時から実力を認めていたように、遺憾なくライン構築を行っているのだから、TDFにおいてオリエナ・ヒルデルナは唯一無二の存在であった。

 ラインを扱う姿や表情は変態レベルであったが……。

 おかげでティーマとパビリオン間のデータのやり取りは滞りなく行われている。

 本社採用から一年にも満たず、まだTDFに異動して三ヶ月余りしか経っていない若葉マークがついていてもおかしくない新人だったが、すでに馴染みすぎていると言ってもいい。シュルドやノルディック以上にふんぞり返り先輩面しているのではないか。

 新人キャスティやテーセからはそう見られている。

 歯に衣を着せず悪態すら上司に突き付けていたにもかかわらずだ。その言動とともに、オリエナはベテランクラスであった。

 ラインフェチを遺憾なく発揮しているのは、他のTDFメンバーからすれば変態レベルであるといえる。サイバー空間が視覚的に分かるように見られるのであれば、自ら構築したラインを隅から隅まで舌でなめ回す変態であると言えよう。

 それだけすさまじいフェチであったから、TDFでは唯一無二の存在であったのである。


 ライン内での情報の伝達はスピードと損耗の無いデータ量は悪くない。

 数千光年の開きがあってもデータの流れによる損耗率は限りなくゼロに近い。プラスにもマイナスにもぶれないのはラインオペレーターとしては誇るべきだ。

 パビリオン内システムもタイムラグ無しに動いている。

 本番が来ても問題ないはず。

 それでもオリエナは納得出来ず、もっとスステムの流れを良くしようと腐心していた。

 サブの流れとメンテナンスをディに任せる。

 ラインのデータの流れは人間の血管と同じでメンテナンスが常に必要だ。

 内側はデータの流れで擦り切れるし、余分な情報が内側に付着してしまえば情報の流れを阻害する。滞留させないように、コンマでもタイムラグが起きないように常にメンテナンスするのがラインオペレーターの仕事でもある。

 この流れを別なものに例えるなら、海を行く船の船底に付着する貝類や苔類を掃除するようなものだ。


 テーセには侵入者が無いかサイバー空間の警戒にあたらせている。

 トラッティン時間で一時間が過ぎようとしていた頃だった。

 仮想空間で何かが揺らめいた。

 見間違いではなくテーセの張った網に引っかかった侵入者がいる。それは蛸の脚を漆黒にしたようにどす黒い。テーセにそう見えるように指示していたけれど、実際に見ると禍々しい存在だ。

 時間的なロスは無くても視覚的にはかなり離れた距離で捕らえていたので、慌てて内側に侵入されていないか調べるが、それは稀有のようだった。

 データやラインを荒らされた気配はない。テーセの施した空間ガードシステムが正常に働いている証拠である。

「ライン内ガード良し。テーセあとはよろしく」

 オリエナは仮想空間でテーセに朗らかに手を振る。

「まっかせて~」

 テーセの姿は仮想空間では見えなかったが、現実で元気よく手を上げて笑っているのだろうと推測できた。

『呪詛チャン』を試しているだろうが、個人でも企業でもこうしてTDFのラインに忍び込もうとしているのである。二度と出来ないほど物理的にも精神的にも追い詰めてやる必要がある。

「グチャグチャにしないでくれよ」

「それは相手次第。抵抗すれば加減はしないよ~」

 屈託ない笑顔でテーセは言ってくる。容赦がないのは何が起因しているのだろうな?

「程々にな」

「手加減すると、報復がないと勘違いして再犯に及ぶよ。こういうのは徹底的にやらないとだめだとテーセは思うな」

 屈託ない笑みを浮かべながら容赦ないことを言わないでくれ、背筋が凍り付く。


 妖精のようなプログラムが気付かれないように侵入者に近づいていく。

 呪文のようなものを唱え、精霊の息吹が禍々しいプログラムに吹き付けられた。侵入者は硬直したように一瞬、動きを止める。

 それから巻き戻しのコマ送りを見ているように侵入者は仮想空間から消えていく。

「テーセ、大丈夫?」

 心配なのだろうディが訊ね来る。

「問題無し、ディ姉は作業に戻っても問題ないよ」

「分かったわ、気を付けてね」

「まっかせて~」

 仮想空間で胸を張るテーセだった。


 ツイング姉妹は頼りになる存在だったが、危なっかしくなるので、それを見ていると常に精神状態が疲れてしまう。

 ノルディックはどうやって精神の安定を保っているのだろうと、彼に質問をぶつけたくなるのであった。


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