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たたかう聖女さま  作者: 桜花オルガ


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第34話 販売開始

 魔道具の完成と起動成功の報告のため、マリアとドドガ、クロエはクロードのいる部屋へと来ていた。



 部屋の中にはサンジュも控えている。



「もう完成したのかね!?これで国中が豊作に……」


「クロードさんまずはこの領内のみへの流通ですよ。それで肥料の販売価格について相談したいと思いまして」


「ああそうだったね!まずは我が領だけだった!あの効果の肥料の価格か……麻袋一つでどの程度の広さに使えるか分かるかい?」


「縦横50メートルほどの広さで麻袋一つですね。作物によって効果持続時間は変化すると思いますが、4ヶ月~半年に一度使用すれば問題ないかと思います」


「……とんでもない効果だね。う~む……何も考慮せず決めてしまうなら、金貨1枚でも誰も文句は言わないだろうね」


「それはさすがに高すぎますね。効果を実感できても、小さな土地しか持たない農夫さん達は手が出ないと思います」



 原価自体は大したことないのだし、私としてはタダ同然でも良いくらいなんだけどな……


 でも広く流通させるなら関わる商人さん達に利益が出ないとね!


 そんな事をマリアが思っていると、サンジュが小さく声を上げた。



「よろしいでしょうか?マリア様は格安で提供したいとお考えかと存じますが、聖女であるマリア様の商会で、間違いなく聖女様のチカラが関係している品です。世の中の聖女様のチカラに対する認識も考慮した上での価格設定が必要だと具申します」



 つまり……安売りしすぎるのも駄目ってことだね。


 まぁ何事もバランスは大切か。



「儂はこういった物の値段は良く分からんのじゃが、小金貨1枚で買い手に渡るようにするのはどうじゃろうか?一見肥料としては高い気がするが、あの効果を知れば完全にお得だと儂は感じるんじゃが……」



 おずおずとそんな事を言いだしたドドガであるが、誰も異論を挟まないので『聖なる肥料』の販売価格は小金貨1枚に決定した。



「では聖女商会から実際に販売してくれる各商会へは幾らで卸しますか?」


「通常であれば、7掛け程度で卸すのが一般的だね」


「7掛けですか……この領内であれば良いかもしれませんが、国内全てに流通させるとなった時にそれでは、輸送費の兼ね合いで商人はうま味が無いのでは?」


「……なるほど。マリア殿の考えでは、他の領地での販売価格も小金貨1枚が絶対……という事だね?」


「そうです。そのルールを破った商人や商会には、二度と聖女商会の商品は売らない……とさせて頂きます」



 聖女商会の商品に関わる真面目な人達、全てに恩恵がないとね。


 目先の小銭を追うような者は取引停止で問題ないだろう。



「よし!では5掛けで卸そう!そして我々の取り分はマリア殿3、ドドガ1、私も1……これでどうだろうか?」


「そうじゃな。マリアがいてこその商会じゃ!儂はそれで異論ない」



 私の比率が高過ぎるな……私は肥料でお金を稼ぎたい訳じゃないんだけど……


 でも二人の考えも考慮しないとだしなぁ。



 あ、そうだ!



「当面『ザザ草』の採取や麻袋の買い付け、魔道具の使用などを騎士団やメイドの皆さんがやってくれると聞いています。私の取り分である3の内の1を、作業量に応じて騎士団とメイドの方々に振り分けて頂くって事でどうでしょう?」



 あ、クロエちゃんが私に対して祈りだしてる。



「しかしそれは……マリア殿はそれで良いのかい?」


「勿論です。皆さんも聖女商会に関わっているようなものですし、この街で、そしてクロードさんのもとで働いてるからこそ、追加でお給金を貰えるとなれば、きっと皆さん喜んでくれると思いますよ」


「……そうだな!うむうむ素晴らしい!ありがとうマリア殿。おいサンジュ!草刈りにでも行くような格好をしてどうした?」


「いえ、ちょっと『ザザ草』の採取でもと思いまして」



 クロードさんとサンジュさんが取っ組み合いを始めてしまったが、色々と話がまとまってきたね。



「はぁはぁはぁ……ではさっそく手の空いている騎士団の者と、メイドに肥料作りをさせよう!」


「そうですね。クロエちゃん、皆さんに魔道具の使い方を教えに行ってくれるかな?」


「かしこまりましたー!行ってきます!!」



 こらこらクロエちゃん、走らなくて良いんだよ。


 走ってる姿も可愛いけどね。



「サンジュは商業ギルドのフローラに連絡を!明日から商品を卸すので、フローラが選定した商会の者を荷馬車と共に明日、我が屋敷に来るよう伝えるのだ」


「はい。かしこまりました」



 ん?フローラさんが選定した?この街の商会全てに卸すって訳じゃないんだね。


 聖女が関わってる商会との取引だし、下手な商会は最初から排除するってことかな。




      ───◇─◆─◇───




 翌日、領主邸に四つの商会の商会主自らが、何台もの荷馬車を引き連れやって来た。


 私とクロードさんとドドガさん三人で肥料の効果など諸々の説明をする。



 どの商会主さんもとても礼儀正しく、まずはこの領内のみの販売、『聖なる肥料』は決して小金貨1枚より高く売ってはならない。約束を破った商会とは二度と取引はしない……という条件も



「「「「聖女様に誓って!」」」」



 と声を揃えて約束してくれたのだった。



 私とドドガさんはクロエちゃんを伴い伯爵邸の正門の外まで行き、商会の皆さんを見送る。



『聖なる肥料』は、騎士団とメイドの皆さんが頑張ってくれたおかげで900袋近くあり、この日は各商会に200袋ずつ、合計800袋卸した。


 聖女商会からの次の販売は、一旦売行きを見てからという話で落ち着いのだが、振り分けるとは言え今回だけで騎士団とメイドの皆さんの取り分は金貨8枚。


 まぁ商業ギルドに収める分とかもあるから、もうちょっと少なくはなるけど、それでも皆クロードさんに仕えていてラッキーだったね。



『聖なる肥料』に関しては、私の体が空くっていう意味で自動化できたと言っても良いだろう。



「これで肥料の件は走り始めましたね。次はドドガさんの街灯の改良を始めましょうか?」



 正門から屋敷の玄関まで歩きながら、ドドガさんと次の魔道具について話し合う。



「おおそうじゃな。街灯も良いが、マリアは作りたい魔道具があったりするのか?」


「色々とありますよ。次に作るならそうですね……『洗濯機』ですね」



 マリアが洗濯機と言った瞬間、ある者はガサガサと植木をかき分け、またある者は木の上から降り立ち、またある者は屋敷の二階の窓からジャンプし……あらゆる場所から9名のメイドさんが現れた。


 メイド達はマリアの前に綺麗に整列する。


 私の後ろにいたクロエちゃんもハッとした顔になり列に並んだ。


 あれ?これ屋敷のメイドさん全員いるな……ここのメイドさん達はおかしな訓練でも受けているのだろうか?


 マリアにはメイド達が何を言うのかなんとなく分かった。



「「「「「マリア様!洗濯機を是非!」」」」」



 うんうん、だと思ったよ。




 マリアは微笑みながら、力強くサムズアップするのであった。

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