第35話 採掘チャンス
メイドさん達の熱い要望もあり『洗濯機』を作るのは確定だね。
こっちの世界では手洗いが基本のようだから、腕力も必要だし水で手は荒れるし、冬場なんて地獄だろう。
あ、ハンドクリームとか作ったら喜ばれるのかな?
何はともあれまずは『街灯』の改良からだ。
ドドガさんが自分の自宅兼工房から、先日の製作途中だった街灯を新工房に持って来たので、マリアは回路の手直しと付与魔法をサラサラと描いていく。
ふむ。こんなものかな。
「これで完成ですドドガさん」
「マリアよ。これはどんな風に改良されたんじゃ?」
「まずこれまでよりも明るさが増しています。そして使用する魔力の最適化と、これまでは誰かがスイッチとなる魔石に魔力を流さないと明かりは点きませんでしたが、周囲の明るさを自動で検知して、暗くなれば勝手に明かりが点き、周囲が明るくなれば勝手に消えます。スイッチの魔石は常に大気中の魔素を吸収するように設定していますので、魔力切れの心配はありません」
「……またとんでもない事を当たり前のように話すんじゃな……いや、マリアにとっては造作もないことなのか」
という訳で街灯の改良はあっさりと終わり、今街の中にある街灯を騎士団の方々が回収、マリアの改良後に再設置といった具合で、四日間ほどで街中の街灯再設置は終了した。
ちなみにクロードさんとドドガさんの願いで、改良後の街灯にはマリアの『スタンプ』の魔法で聖女商会のマークが施された。
これまで街灯のスイッチは、巡回中の騎士団の皆さんが入れていたらしいのだが、巡回中にそこそこの魔力を持っていかれていたという事で、自動で点灯する機能にとても感謝されたよ。
街灯の制作費用はこの街の税金から出されているとのことだったので、クロードさんが改良の対価として、街灯一本あたり白金貨1枚を提示してきたが、マリアは受け取りを拒否。
伯爵邸で色々とお世話になってる訳だし、街の税金からそんな大金を貰う気にはなれないからね。
という訳で『洗濯機』の製作に取り掛かろう!
マリアは寝る前に描いた設計図をドドガさんに見せている。
「ふぅむ。形としてはそんなに難しくなさそうじゃな。これはどうして大きさが二種類あるんじゃ?」
「小さい方は一般家庭用、大きい方は住み込みの従業員が大勢いる大店や、貴族用です。貴族用は表面を雅に装飾しても良いかもしれませんね」
「一般って……普通の平民にもこれを売るんか!?」
「むしろ平民の方にこそ使ってもらいたい物なんですけどね。価格設定の問題ですか?」
ドドガさんの反応を見る限りやはり価格設定で悩んでいるようだ。
それもそうだよね。
これまで見た事のない世界初の魔道具になる訳だし、白金貨を何百枚積んでも欲しいと思う人もいるだろう。
でもこれは世界初の魔道具だけど、世界でたった一つの魔道具ではない。
量産品になるんだから、価格を多少抑えてもそれは私の自由だろう。
「正直いますぐ売れなくても良いんですよ。この先この街や国の人達が潤っていった時に、平民でも十分に手が届く値段にしておきましょう」
「う、うむ。で、この魔道具で行使する魔法の種類なんじゃが……。一つは儂の知らない魔法じゃな」
「それは私のオリジナル魔法です」
「また簡単にオリジナル魔法を開発しよったんか……まぁマリアの事じゃし今さらじゃな……」
そう。この洗濯機にはマリアが新たに開発した魔法を組み込む予定だ。
この魔法があれば貴族は喜ぶだろうしね。
とりあえず二種類のサイズどちらも一つ作ってみようとなったのだが、材料が足りないようだ。
洗濯機の製作には鉄よりも魔力伝導率の高い『魔鉄』が必要らしい。
おや?これは私がこっちの世界でやってみたかった、採掘チャンスでは?
よし!魔鉄集めに出掛けよう!と思ったのだが、鉱山から勝手に採掘して良いのか分からなかったので、今日も暇そうにしていたクロードさんに相談することにした。
「マリア殿が自分で鉱山に行き採掘したい?我が家で所有する鉱山はあるにはあるが……」
「私自身が採掘した方が早いと思いますし、許可頂けるならすぐに出発したいです」
魔法でサクサク掘り進めることが出来るだろうし、誰かに任せるより自分でやった方が良いだろう。
「マリア殿がそう言うのなら許可は出そう。だけどその鉱山は、そんなに良い鉱物は余り出ないと思うぞ?」
「それも含め自分で経験したいので問題ありませんよ」
クロードさんの許可も貰えたし、クロエちゃんはお留守番してもらって鉱山に向かおう!
教えてもらった鉱山の場所は、街から歩いて三時間ほどの距離だったが、『聖なる身体操作』で全身を強化したマリアはあっと言う間に到着。
途中、三十頭ほどの『ダークウルフ』という狼の魔獣に襲われたが、マリアの恐ろしく速い手刀によって命を刈り取られ、全て『次元収納』の中へと収まった。




