第198話 萱津の戦い②
【萱津の戦い】
天文21年(1552年)8月16日 早朝
二つの城を奪われ翌朝。
那古野城から織田信長が、末森城からは柴田勝家が清洲城に進軍を始める。
「勝家と同じ戦場で戦うのは初めてだな。父上が最も信頼していたその腕、是非見せてもらいたいものだ。」
「信長様。更にもう一つ良い報告があります。織田信光様も加勢に駆け付けているとの事。」
「なに?叔父上もか?それは心強いな。」
清洲織田家の動きを知り、守山城から叔父である『織田信光』もこちらに向かって来ているらしい。信秀の実弟にもあたり信長も信頼している一人。これからも政権の中核として活躍するだろうし、なによりも報告を聞いて兵達の士気が上がっていくのが肌で感じ取れた。
(流石は叔父上、欲しい時に来てくれる。こうやって父上を長年支えてきたのだろうな。)
その話を聞き先行していた信長達は行軍の速度を少し緩め二つの軍と合流するを優先した。
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〜尾張ノ国•清洲城〜
清洲城には尾張守護•斯波義統、清洲城主織田信友。そして実質的な実権を握る“坂井大善“の姿があった。
「ほ…ほ…本当に織田信長と戦うのか?わ…私は何も聞いていないぞ。」
震えながらそう言ったのは斯波義統である。清洲城は義統にとって居城でもある為、ここにいて何ら不思議ではない。
「既に兵を出し人質を獲りました。これは宣戦布告したようなもの、清洲織田家にとって目の上のたんこぶだった織田信秀はもういないんです。今が好機、何を恐れる事がありますか?」
それに対して坂井大善は少し呆れた口調で返す。斯波家が落ちぶれた理由も分かるものだと内心では思ったが口には出さなかった。
「そ…そうだな。だが…これだけは言っておく。あまり織田信長を甘く見ない方がいい。それこそ信秀と対峙する気で挑まねば、こちらが痛い目を見る事になる。私が言えるのはこれだけだ。」
発言力もない斯波義統はそれだけ言い残して早々に部屋から立ち去った。
(フンッ……臆しやがって、この負け犬が!!もうとっくに斯波家の時代は終わっている。)
そして義統は自身の部屋に戻ると護衛と言う名の『烏』部隊の監視役に話した内容を伝えていく。
「今回はアイツらが勝手に企てた事。知っていたら報告していたし、私は戦うつもりも裏切るつもりもないからな。」
「ええ。存じておりますよ。」
義統自身も生かされていると言う認識は持っている。実際にここまで生かしているのも使い道があるからであって、信長を裏切るつもりなら首が飛ぶだけ。
「人質は城内の一つの部屋にまとめているらしい。人数もそれなりにおるし警備も厳重だ。全員を一気に逃すのはいくらお前達とて無理であろうよ。」
「分かりました。引き続きお願いします。戦いに関係ない些細な事でも構いませんので。」
義統に戦いを止めるだけの力がない事は分かっているので、今回は情報収集の為だけに動いて貰う事にした。
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〜陣幕〜
一方、信長達は二つの軍と合流し軽く挨拶を交わすと簡易な陣幕の中に集まっていた。
「此度は御助力、感謝致します。」
「ガーハッハッハッ。堅苦しいのはよいよい。それよりも清洲織田家じゃ。信秀様が恩赦を与えたと言うのにこれではの。」
「これが清洲織田家のやり方よ。昔を知る者なら何も驚きはせんが、確かに此度の一連の動きは頭にくる。信長はこのまま攻め込むつもりなのか?」
織田信長、柴田勝家、織田信光が卓を囲む。
「ええ。このまま清洲城に攻め入りましょう。おそらく相手はそれを見て清洲城から兵を出してくるはず。」
信長は簡易な地図を広げて清洲城から南へ約五キロの地点を指差した。
「“萱津“か…近くに川も流れてるし清洲織田家からすれば逃げ道を塞ぎたいだろうしな。」
信光が瞬時に相手の意図を理解して。
「ガーハッハッハッ。勝てればの話よ。攻めが得意なワシの兵600。守りが得意な信光様の兵400。それに臨機応変に動ける信長様の兵1000で合計2000。わずか一日でこれだけの数が揃うとは思ってもいないだろう。」
勝家が冷静に現状を分析する。
「しかし奪われた松葉城と深田城は位置的に無視出来ません。清洲城に送られた人質を解放するまでは、この中の誰かが城の前に布陣した方がいいでしょう。」
「それなら私が行く。清洲織田家側の兵も多少は城に入っているだろうから戦いになるかもしれん。そう考えると守りが得意な私がこの中では一番適任だろう。」
信光自ら志願する。
「叔父上、有難う御座います。」
こうして次々に作戦が決まっていく。
大まかには織田信長と柴田勝家の二軍で清洲織田兵の本隊と対峙し、織田信光軍が背後を守る。
「では…お願いします!!」
「「御意!!」」
信長は考えられる最も攻撃的な布陣を選択した。時間をかけたくない理由が一番にくるが、信長が最初に考えていた戦力よりも大幅に増強された戦力。少しばかり無謀であっても勝家と信光がいるからこそ出来ると思えた。
そして信長達の動きを見た坂井大善は、清州城から実力者の坂井甚介を大将に据えて出撃を始める。
北上する信長達と南下する清洲織田軍。予想通り織田信長と坂井大膳の両軍は萱津の地で激突する事になる。
【萱津の戦い】
尾張ノ国•萱津
〜織田連合軍〜
総大将•織田信長(兵1000)
大将•柴田勝家(兵600)
大将•織田信光(兵400)
〜清洲織田軍〜
総大将•坂井大善
大将•坂井甚介(兵1500)
松葉城(兵300)
深田城(兵200)




