死の花畑
お久しぶりです…
久々すぎてもう何を描いてるのだか…
ツッコミどころ多々あるかもしれませんが、大目に見てくれる方のみご覧ください…
いいですか、くれぐれも生温い目でご覧ください…
観念したように力を抜いたわたくしを荷物のように担ぎ、ニルス様…様はつけなくてもいいですね、ニルスさんはせせら笑いました。
「ふん、最初からおとなしくしていればいいんです。」
ぐぇ、お腹が苦しいです。
背中に顔を打ち付け、鼻の頭がひりひり。
きっとオデコも赤くなっていますね…
森の中をすごい速さでかけぬけるなんて、どんな訓練をされているのでしょう?
見たことがある騎士の方々の動きではない気がするので、裏社会の人、なのでしょうか。
魔法で捉えるほうが楽なのにしないということは、そこまで魔法に特化した人物ではない、と判断して、手の中にある物にこっそりと魔力を込めます。
アラン様、気づいてくださるでしょうか…?
男の背に隠してバレないように、魔力を込めては明かりを灯した花びらを落とし続けていたのですが、どのくらいそうしていたのか…ピタッと走るのをやめました。
「きゃ、うっ」
どさりと、投げ降ろされます。
その拍子に花畑に落ちて見失ったリュダシスの花を慌てて探そうと顔を巡らせると、髪を強く引っ張られ無理矢理顔を上げさせられて。
「痛…っ」
「何をしているんです?随分余裕がおありのようだ」
ぞくり。
殺気、とはこういうものなのでしょうか。
狂気のこもった瞳で見据えられ、情けなくもカタカタと体が震えてしまいます。
「お花を育てるしか能のない土いじり令嬢の死に場所に相応しい花畑だと思いませんか」
ここは、王妃様への花束を摘みにきた湖畔の花畑…
確かに、美しい花畑ですが、剣を突きつけられているこんなときに目をやるほど馬鹿ではありません。
逃げなくてはと思うのに、体が言うことを聞かず、ニルス様が剣を掲げるのが、ゆっくりに見えます。
あぁ、死んじゃうのかしら。
「ご安心ください。心臓をひとつき、すぐ終わーーっ!?」
不自然なところで言葉を切ったニルスさんのすぐ後ろで静かな声。
「ーーーシアから手を離せ」
来て、くれた………
「アランさ…っ、あぅっ!?」
髪を力任せに引いて横に投げ飛ばされ、木に激突した衝撃で咳き込み、たまらず地面にうずくまります。い、痛いぃ……
「シア!…っ貴様ぁッ!!!」
その視線だけで相手を焼き尽くすかのような激情が炎となってアラン様から吹き荒れ。
遠くにいるわたくしにすら頬にちりちりと熱が伝わり、その凄まじさがわかり、呼びかけようとした声をおもわず飲み込んでしまいました。
炎を纏った剣で相手を圧倒していくアラン様。
すごい、やはり、お強い
倒すのは時間の問題でしょう。
けれど。
全身の痛みに動けないでいるわたくしの目に映るのは、炎に焼き尽くされて死んでいく花畑。
植物たちの断末魔が聞こえてくるかのように、すべてが赤に染まっていく。
これ以上は…!
「アラン様…っおやめください!!」
「本当に。何をなさっているんです、殿下」
わたくしの悲鳴じみた叫びに応えたのは、底冷えしそうなほど冷たく響く声。
「少し頭をお冷やしくださいませ。」
どしゃあんっっ!!
「ぶわ!?」
「ぎゃあぶ、ゴボッガボ!?」
バケツの水をひっくり返したかのような雨がアラン様とニルスさんにだけ集中的に降り注ぎ、花畑の火も鎮火。
「アデルお姉、さま……!」
「シア。無事?怪我は?」
「ありませんわ。アラン様が助けてくださいました。」
キッとお姉様に睨まれたニルスさんは、顔を水の塊に覆われて、溺れたように手足をばたつかせて転げ回っています。
「………アデル…けほっ、熱くなりすぎた、礼を言う。…そいつは…黒幕の正体を吐かせるのに、念のため半殺しくらいにしておいてくれ。」
体制を立て直し、肩で息をしているアラン様のおそばに行きたいのですが、まだ戦いの余韻に場が痺れているように感じて、足は地面に縫い止められています。
もどかしい思いで唇を噛み締めた時、背後から唸り声が強風と共に耳に届きます。
「ーーしぃいぃぃぁあぁぁああぁあぁぁああぁ!!」
どかぁぁああん!!!!
「お、お兄様!?」
風で落ち葉を巻き上げなら太い木に突撃してきたのは、ノエルお兄様。
あっ、アラン様も風の巻き添えを食らって吹っ飛んでしまいました…!だ、大丈夫でしょうか…!?
すでにぐったりしていたニルスさんですが、あっという間にお兄様によってお顔の形が変わり、そうこうしているうちに後から来た騎士の皆さんに連れていかれました。
色んなことが急展開すぎて、思わず呆けてしまいました。
ハッとして
「アラン様….!お怪我はあり…っ」
駆け寄ってそう言い切る前に、気づけばアラン様の腕の中にいました。
「シア………無事でよかった………………」
力の抜けた声でそう囁かれては、恥ずかしいのに動けません。
水に濡れたからなのか少し震える腕にそっと手をやると、さらに強く抱きしめられました。
「アラン様。助けてくださって、ありがとうございます。」
安心感とドキドキと、色んな気持ちを全部込めて、ようやく、それだけ伝えることができました。
その後、わたくし達のところに険しい表情でノエルお兄様がやってくるまで、じっと2人で身を寄せ合っていたのでした。




