第9話「冒険の予兆」
「ふっ」
短い息を吐き俺は雅狼を振るう。黒剣はそのまま抵抗もなくゴブリンの首を飛ばす。体を反転させ後ろにいたゴブリンに向かって後ろ蹴りの「黒鉄」を食らわせる。そして前方にいた3匹目ゴブリンにバレッタを向け、「黒弾丸」を射ち眉間に吸い込められこちらもノックアウト。
あれから3日がすぎていた。
俺は街の近くに出て魔物を狩り、魔石を売るといった行為を繰り返していた。「黒剣「雅狼」」の切れ味が物の見事にすごく強力な武器となっている。俺には剣術の心得は無いが長年愛用していたかの様な剣さばきが出来る。これはこの武器を手にしたメリットだ。
倒した魔物から魔石を取り出す。
「もう、ゴブリンではご主人様の相手にはなりませんであります」
「まぁ確かにそろそろ歯ごたえのある奴と喧嘩りたいな」
俺は顔に獰猛な笑みを浮かべる。ここら辺に出てくるゴブリンを狩り尽くす感じで俺はゴブリンを狩っていた。とまぁこれには訳があり最近、この辺でゴブリンが大量発生しているらしくそれの討伐指令のクエストがありそれをエリナに強引に勧められて仕方なくクエストを受けた。クエストの内容はゴブリンの10体以上の討伐。最低十匹の上限なしだ。さっきので何体目だったけ。忘れた。だけどそのかいあってかかなり金が貯まった。
「ギャ」
ゴブリンが向こうから走って来るのが見える。
俺は効率の良い狩り方見つけた。普通ならば魔物を倒したら剥ぎ取りをしなるべく速くそのば離れなけばならない。魔物の血で他の魔物が集まってくるからだ。俺はそれを上手く利用した。
今俺の周りにかなりのゴブリンの死体が散らばっている。
「お、来た、来た」
ゴブリンの群れが来た。
「油断してなりません弓矢を持っているゴブリンがいるであります」
「了解」
返事ともに駆け出す俺。右手に黒剣、左にベレッタさらに両拳に「黒血」掛けることが出来る様になった為、手首まで真っ黒だ。
俺は最初にゴブリンに剣を振うる。あちらも剣を振ってきたが錆びた剣を黒剣は砕き折りながら首に一閃。結構な数が集まっていた。30匹位だろうか。これだけの数を真っ向から相手にするのは面倒だな。あれをやろう。俺はホバーボードを影から出し上に飛ぶ。3メートル位まで上がり下に向かってベレッタで魔法を放つ。
「黒弾丸」
まだ俺はこの銃――木をその形にしただけだけどを使い慣れていない為こうやって練習するのだ。斬り合った方が楽しいが、こちらもまた捨てがたい。俺は魔法を打ちながら影へ剣をしまいさらにもう一丁のベレッタを出す。
「二丁拳銃だぜ」
黒い雨がゴブリン達を襲う。赤い血が飛び散り苦痛の叫びを上げるゴブリン共。俺はなるべく狙いを定める様にしてはいるのだがかなり難しく訓練がまだ必要だなこりゃ。俺は大半を蹴散らしたあと俺は下に降りる。残りは5匹だな。駆け出し、一匹に剣を走らせ頭を突き抜く。ゴブリンを蹴飛ばし剣を抜く。
「おぉ!」
弓矢が飛んできた。足元に突き刺さる。
「やろ~」
ボードに乗り最速でゴブリンに肉迫し剣を振り抜く。そのまま、3体のゴブリンを倒した。俺は魔石を剥ぎ取り。今日はこの辺にしておくか。街に戻る準備を始めた。
✵
「また、沢山倒しましたね」
と少し引きつった笑みをしてくるエリナ。
「そりゃどーも」
軽く言葉を返す。
「ではこれが今回の報酬です」
と羊皮紙を渡してくるエリナ。それに手を翳す事で報酬がギルドカードに入金するシステムだ。全く便利だよな。
「なぁ、早くランク上げてくれよ」
「無理ですよ、まだゴブリンしか倒していないでしょ?」
この3日間で距離が近づいたのかたまに言葉が敬語じゃなくなる。まぁいいんだけど。
「私の一存でランクを上げることこは出来ません」
冒険者にはランクがありS、A、B、C、D、E、F、G、H、Iの10段階に分かれている。俺はまだなったばかりなんで最下位のIランクだ。さらに魔物にもランク同じようにある。ゴブリンはIランクだ。
「ゴブリンを何体倒したら上がるんだ?」
「そうですね、1000体位ではないでしょうか」
「1000体ね」
ランクが上がるにはギルドにそれだけのランクに見合う成果を残し報告するもしくはギルドからランクが上がる為のクエストを受けクリアしなければならいということとだった。物凄くめんどくせぇ。
「後何匹だ?」
「120体位倒したから、あと880体くらいですかね」
「そんだけ倒したらなれんのか?えーと……」
「Hランク」
「そうそう、Hランクに」
「はぁ、クエストしっかりとこなして行けば直ぐになれますよクロウさんだったら」
「クエストねぇ」
「何なら選別しましょうかクエスト?」
「まじか!助かるそれをクリアすればランクが上がるんだな?」
「そうです」
「悪いな仕事増やしちまって」
「いえ、仕事ですから文句はありません」
「今度、何か奢ってやるから」
「ナンパですか?」
エリナが少し睨んでくる。
「は、何言ってんだお前?ナンパって俺がそんなことするわけないだろ」
そう言うとエリナは少しつまらそうに。
「そうですか」
「俺はただ、世話になってるから感謝の気持ちなんだが。悪い、迷惑だったな」
人の都合も考えずに……浅はかだったか。
「いえ、せっかくのお誘いを無碍にすることもありません。いいでしょう付き合ってあげますよ」
「いいのか?」
「そう言っています」
「少し顔が赤いけど、どうかしたのか?」
エリナはハッとなり。
「あ、赤くなっていません!」
ドンとカウンターを叩きものすごい剣幕で顔を近づけて来る。
「そ、そうか」
さらにハッとなってさらに顔を赤くする。
何がしたいんだこいつは?
「じゃ、よろしくな」
「は、はい分かりました」
俺はその場を後にしようとするかと思った時。周りの冒険者の声が聴こえてきた。
「おい、また冒険者が帰ってこないらしいぜ」
「おいおいまたかよ」
「これで何件目だよ」
「死者の森での行方不明事件」
「棺の館に向かった奴ら消えてるんだろ?死者の森はそんあにランクは高く無いし全員が全員帰って来てない訳ではない。棺の館に向かった奴らが帰って来てないんだ。やっぱりそこに何かあると見て間違いないだろう」
死者の森、棺の館。そしてそこから帰ってこない冒険者。事件と危険の匂い。これはつまり冒険をして来いと言うお告げだ。
「クロウさん?クローさーん」
ヤバイ行きたいな、死者の森、棺の館。
「クロウさんってば!」
「おう!な、なんだ」
少しムッと顔をしてる顔が近くにあった。
「物凄く、いやらしい顔をしていましたよ?」
「い、いやらしい顔だと!」
「なんというか……いらしかったです!」
「わ、わかったから」
「し、死者の森ってなんだ?」
「はい……?死者の森ですか。もしかして行くつもりですか……」
「いや、行くってまだ決めたわけじゃないけど」
「いくつもりですね!」
「はい」
すげ~剣幕だなおい。思わず答えちまったよ。
「あそこの森はソロでは危険すぎます。出てくる魔物の大半が毒などの状態異常の攻撃を持っています。さらにランクはG認定の迷宮です。クロウさんのランクはIですよ無理です!」
「だけど……」
「どうしてそんなに行きたいんですか?」
「えーと、面白そうだから?」
「なっ!」
言葉を無くすエリナ。
「そんな理由で命を捨てるのですか?」
「いや、まぁ。死ぬつもりは無いけど。それも理由に入ってるかな」
「はぁ、クロウさんは馬鹿なんですね分かりました」
「いや、まぁ否定はしないけど。ほら、まだなんで帰ってこないのか分からないんだろ?」
「そうですが」
「だから、その調査をしに行くよ。これが本音だ。なっ?」
「なっ?じゃありませんよ!どれだけ危険な事か分かっているんですか!」
「分かったよ。行きゃなかいいんだろ行きゃなか」
「そうです。分かっていただけましたか?」
全く参ったなぁ。これじゃあ森の場所が分かんねー。さてどうしたもんか?