第36話 反逆者達の結末
~サイドアウト~
スイーツ王国は、この世界で一番大きな大陸の東端に存在する。
それはつまり、その大陸から東にある他の大陸、島へ向かう際、スイーツ王国から船を出すのが一番近いということだ。
スイーツ王国で貿易が発展している理由はここにある。
しかし、利点を持つということは、同時に狙われる理由を持つということになる。
スイーツ王国は戦争を嫌っているが、軍、兵士のレベルは世界でもトップクラスだ。
その理由は、過去幾度となく他国に狙われ、侵略戦争を仕掛けられてきたからである。
現在は世界中で戦争を嫌う考えが普及し始めていること、また、過去の戦争を乗り越えてきた実績のおかげで、スイーツ王国と戦おうなどと無謀な考えを持つ国は少ない。
……しかし、あくまで“少ない”のであり、全くないわけではない。
それゆえ、スイーツ王国では今なお、軍のレベルが維持され続けている。
「………」
ここはそんなスイーツ王国軍の本部。
普段から兵士達が己を鍛えるために使っている、血と汗が染みついたグラウンド。
……今のはあくまでも比喩だが、現時刻が夕方であるがゆえ、グラウンドは夕日の光に赤く染まっていた。
そのグラウンドの端にある段差に座り込み、ただグラウンドを見つめている女性がいた。
その目にはいつもの覇気がなく、思考を停止させているのが見て取れる。
実際彼女は考えを止めていた、理由はそう、3年前から続く、苦しみから逃れるために……。
「……中将」
声が聞こえ、女性は……イアは、思考を取り戻す。
振り向くと、彼女の幼馴染が険しい顔で立っていた。
「どうしたんですか、ロギさん?今は夕食の時間ですよ?」
「いえ、中将の姿が見えなかったので」
「……今は、2人です」
一瞬顔の険しさが増した後、ロギは小さく嘆息した。
“あの頃”が忘れられなくて、少しでもそれを望むイアと、そして、3年経ってもイアを救うことができない、自分自身に、呆れていた。
「お前は、この時期になるといつもそうだな。この前も言ったはずだ。
お前は、過去に囚われる必要などない、と」
「……ありがとうございます。
でも……そんな簡単に、割り切れないんです」
うつむいて力なく笑うイアの隣に、ロギは黙って座った。
「私が反乱軍に加わってなかったら、きっと、王国軍が撤退して、町が占拠されるなんてこと、ありませんでした」
「………」
「ロギさんは、3年前にはもう、軍にいたんですよね?」
「……あぁ」
「それを知ってたら、私も国王様のこと、もう少し信じられたかも……いえ、たぶん、あなたに会いに行ってたと思います。
そうしたら……」
「……それを言うなら、俺も同じだ」
「え?」
イアが驚き、顔を上げる。
その瞳には、わずかに涙が溜まっていた。
「俺は、お前が国を恨んでいると思っていた。
……俺達の村を助けてくれなかった、とな」
「そ、そんなこと!!」
「……俺は、軍に入るまでは恨んでいた。
恨んでいたからこそ、軍に入ったんだ」
「私達みたいに、故郷を失う子供が出ないように、ですか?」
「………」
図星だったのか、ロギは押し黙る。
それを見て、イアはうれしそうに微笑んだ。
「とにかく、俺はお前を誤解していた。
その誤解さえなければ、お前の誤解を解くことができたかもしれない」
「で、ですが……」
「まぁ、こんな仮定の話をいくら言った所で、何の意味もないだろう」
「あ……」
そこまで言われて、イアは気づいた。
ロギがは自分を励まして、いや、激励してくれていることに。
「そーそー!仮定より俺は現実の話を聞きたいなー!」
「……どこから沸いたんだ貴様」
「はっはー!俺は虫じゃないぜー?」
空気をぶち壊してきたのはエンジ。
2人と同じ精鋭部隊『ソレイユ』の一員だ。
「エ、エンジさん、どうしたんですか?」
「いやー?お2人がなんだか話し込んでたみたいだから、気づかれないようにこっそり聞いてたんだなー!」
「……盗み聞きか、いい度胸だな」
「おーいおい人聞きが悪いなー!俺はただ2人の話をこっそり聞いてただけだぜー?」
「それが盗み聞きだと言ってるんだ……!」
「ま、まぁまぁロギさん、落ち着いて下さい……」
怒りで口調がきつくなっているロギを、なんとかイアがなだめる。
「それでエンジさん、現実の話って?」
「おぉーっとそうだった!
聞いた話だとイア中将、かの『英雄』と一戦かましたんだろー?
その体験談なんか聞きたいなーっと思ってなー!」
「おい、エンジ……!」
「……はい、構いません」
「しかし、中将……」
ロギが心配するのももっともだった。
何せ、さっきまでイアはまさにそのことで苦しんでいたのだから。
しかし、イアは首を横に振る。
「今、ロギさんが言ったじゃないですか。
仮定をいくら話しても意味がないって。
……そろそろ私も、逃げるのはやめにしたいんです」
「………」
イアの決意を知り、ロギは納得したのか、反論をやめた。
それを確認し、イアは話し始める。
「3年前のあの日……私は、反乱軍の本拠地にいました」
反乱軍の本拠地で、イアは地平線を見ていた。
ここからは見えないが、この先ではきっと、反乱軍と王国軍が戦っているのだろう。
いや、もしかしたら、王国軍は降伏してくれるかもしれないが……。
『……はぁ』
自分でも無意識の内に、イアはため息をつく。
本当なら、イアは前線に出て戦うつもりだった、自分の力で、少しでも犠牲者を減らすために……。
しかし、そう願うイアに、反乱軍の幹部達はこう言った。
あなたは存在だけで相手を威圧できるんだ、危険に身をさらす必要はない。
それに、万一あなたがやられてしまったら、逆に王国軍を勢いづかせてしまう、と。
そう言われて、イアは本拠地にとどまった。
『………』
おかしい、とイアは自分に疑問を感じていた。
人の役に立とうと魔法を習い、そして世に出てきたのに。
反乱を起こした人達を救おうと、反乱軍に参加したのに。
……自分は今、何をしてるんだろう。
疑問に答えが出ない。
そして、それを無意識の内に納得しようとしている自分がいる。
そのことにも疑問を感じた。
何か……何か、違和感を感じる。
もやもやとした感情の中で、イアはふと思った。
……まるで、魔法をかけられているようだ、と……。
その時、突然派手な爆発音と、大勢の悲鳴が聞こえてきた。
急いで現場へ駆けつけると、そこには倒れている反乱軍の人達と、そして……。
「……そして?」
不自然に言葉を区切ったイアに、エンジは聞き返す。
少しの沈黙の後、イアは再び話しだした。
「……女の子が、立っていました」
「……は?」
「年はおそらく……13、4ぐらいだったと、思います」
その言葉に、ロギとエンジは顔を見合わせた。
今の話の流れからして、その子こそが『白の英雄』なのだろう。
話には聞いていたが、実際に当事者から聞くと……。
「なーイア中将。まさかとは思うけど、見た目に油断したせいで負けたってオチじゃねぇよなー?」
笑いながら言うエンジだが、実際それは十分考えられた。
イアは優しい性格だが、戦場ではそれが甘さとなり、命取りになることだってある。
しかし、イアは首を横に振った。
「私は……油断なんて、していませんでした。
……いえ」
その時、ロギとエンジは気づいた。
イアの顔色が少し悪く、声が震えていることに。
「油断なんて……できませんでした。
その子と対峙した瞬間、私は、どうやって逃げようか、考えていたんです。
……本能、とでも言えばいいでしょうか。
それが、全力で警鐘を鳴らしていました。
……この子と戦っちゃいけない、と……」
イアの言葉と表情から、それが決して冗談じゃないと、ロギとエンジは感じていた。
「……それで?」
ロギに聞かれ、イアは話を再開した。
逃げようと、そう思いつつも、イアは逃げられなかった。
正確には逃げられなかった半分、逃げなかった半分だ。
逃げられなかったのは、その子の威圧感があまりにも強く、逃げ出すような余裕がなかったから。
そして逃げなかったのは、その子によって、反乱軍の人達が倒されたからだ。
『……すごい魔力だね。もしかして、君が『星の賢者』?』
少女特有の、高い声。
普通ならかわいいと思うような声だが、それすらも、今はイアに恐怖を与えた。
『いたぞ!!あいつだ!!』
その時、5人の反乱軍の人が来て、その子に銃を向けた。
それを見て、イアは極度の緊張で枯れたのどを使い、なんとか声を張り上げた。
『ダメ!!』
しかし、男達はそれを無視して引き金を引いた。
この時イアが叫んだのは、男達の身を案じたからだったが、おそらく男達は、その子の安否を考えてだと、勘違いをしたのだろう。
そのため、それを甘い考えと切って捨て、発砲したのだ。
『縮地』
瞬間、その子の姿がかき消えた。
……消えたのだ、本当に。
まるで、元々そこにはいなかったかのように。
当然発射された銃弾は虚空を横切り、誰も傷つけることなく壁へとぶつかる。
直後、人の倒れる音が聞こえた。
おそるおそる目を向けると、今発砲した人達が倒れていて、その子はその人達の後ろに立っていた。
それを見て、ようやくイアは気づいた。
この子は消えたんじゃない。
“消えたと錯覚するほどの速度”で、あそこまで移動したんだ。
……勝てない。
この子は次元が違う存在だと、イアは理解させられた。
しかし、イアの中から逃走の2文字は消えていた。
なぜなら、目の前で反乱軍の人達を倒された、仲間に、危害を加えられたのだから。
『……逃げないの?』
その子の声。それには応じず、イアは『集中』を始める。
それと同時に、頭の片隅で考え始める。
さっきこの子が消えたのとほぼ同時に、凄まじい衝撃音がした。
……ソニックブームだ。
つまり、この子は“少なくとも音速以上の速度”で移動したということになる。それも、何の補助魔法も、道具も使ってない状態で。
……ありえない。人間はそんな速度で動ける生物じゃない。
けれど、目の前の現実を否定した所で、何の意味もない!
1秒にも満たない『集中』の後、できる限りの力を込めて魔法を発動させる。
『地底より地の集いを呼ぶ 砕け ガイアス!!』
直径1m強の岩が現れ、その子へと向かうも、それは一瞬で緑色の刀に切り裂かれ、バラバラにされてしまう。
しかし、それは予想内だ。元より今の魔法で倒せるとは思っていない。
イアの目的は、時間稼ぎ。弱い魔法で少しでも動きを止め、その隙に一瞬でも長く『集中』をする。
『星の化身よ その姿を槍と化し
彼の者を貫け! ガイアランス!!』
多数の岩の槍が現れ、凄まじい速度でその子へと迫る。
発動ギリギリの魔力しか込められなかったが、ガイアランスは強力な魔法だ。
例え相手がA級冒険者でも重傷を負わせることが可能だろう。
イアはこれで決めるつもりだった。
しかし、
『……仕方ないかな。
これはまだ使いこなせてないから、できれば使いたくなかったんだけど』
一瞬、その子の体が純白の光に包まれた。
『属は正、力は滅び、型は信頼 ……―――』
その子が何かを呟いた、その瞬間。
白い光が岩の槍を包み込み、一瞬にして消滅させた。
イアが驚愕に目を見開いている隙に、その子はイアの後ろにいた。
『ごめんね、少し寝てて。
目が覚めたら、きっと全部終わってるから』
首に衝撃が走り、イアの意識はそこで途絶えた……。
「私が話せるのは、ここまでです。
その後、私が起きた時には……全て、終わっていました」
「………」
「たっはー……すげぇなぁ、『白の英雄』。
ホント聞いただけだと、冗談としか思えないなー」
「……だが、事実なのだろう?」
「はい、私達は『英雄』達に倒され……いいえ、救われました。
あの人達がいなかったら、本当に、全面衝突していたらと思うと……ゾッとします」
その時は、この国の大地が真っ赤に染まっていただろう。
今の、このグラウンドよりも、赤く……。
「私達は……未遂とはいえ、それだけ罪深いことをしました。
本当なら、許されることでは……」
「はっはー!ホント真面目だなーイア中将は!
まぁそれも魅力だけど、真面目すぎるのも考えもんだぜー?
な、ロギ准将!」
「……中将、何度も言ったはずです。その罪は……」
「えぇ、分かっています」
そう言ってイアは、にっこりと笑う。
……まだ少し無理をしている風にも見えたが、少しずつ、傷は治っていると、ロギは感じた。
「私達の罪は、もう、“許されている”……」
~ハディサイド~
「さて、壮大に遠回りをしちゃったけど、話に戻ろうか」
「あ、忘れてた」
それを聞いて、グリーは大きく嘆息する。
「……言っておくけど、また最初からなんてごめんだからね?」
「いや!今までの話は覚えてるってちゃんと!!
人々がだまされて反乱を起こして、その人達を信じたランディアさんも反乱に参加して、で、『英雄』がその反乱を治めた、と」
「うん、『反乱』のあらましは大体そんな感じだよ。
その後、黒幕達は牢に幽閉されて、反乱に参加した人達は故郷へと帰った。
壊れた建物とかもそんなになかったらしいし、復興にもそんなに時間はかからなかったみたいだよ。
これはすぐに兵を撤退させた、国王のおかげかな」
「なるほど……あれ?」
「どうしたのハディ?」
「いや、幽閉って……普通、死刑じゃねぇの?」
「あぁ、それね……。
本当なら死刑になるはずだったみたいだよ、でも、実際は終身刑になってるんだ」
終身刑……一生牢屋ってことだよな。
まぁ、考えようによっては死刑よりきついけど……。
「それが『英雄』達……正確には、『黒の英雄』が出した条件だったらしいよ」
「『英雄』が?」
「うん。反乱を治めた後、2人の英雄は一度国王の元へ行ったらしいんだ。
そこで『黒の英雄』が国王に、『俺は死が嫌いなんだ。俺が関わったからには1人の死者も出すな』。
って言ったんだってさ」
「……なんじゃそりゃ」
死が嫌いって……あれ、なんか聞いたことあるような。
最近だと思うんだけど、どこで聞いたっけ……?
「実際には、この反乱の犠牲者は0じゃないよ。
反乱に参加した人達の故郷で、餓死者は流石にいなかったみたいだけど、体調を崩したり、病気になった人もいる。
それに最初に反乱軍が町を占拠した時、王国軍との争いで、多数の負傷者と……3人の犠牲者が出てる」
「やっぱり、いるんだな、犠牲者……」
「……ただね、『英雄』が関わってからは、1人の犠牲者も出てないんだ。黒幕達を含めて、ね」
本格的な戦いはそこからだったはずなのに……それは正に『英雄』の活躍だよな。
「これにはやっぱり批判もあるんだよ。
黒幕達は死刑にすべきだ、ってね」
「……だよな。でも、なってないんだろ?」
「そう、批判を言った人達も、『英雄』との約束だって言われたら、ほとんどの人は納得したみたいだよ。
……その人達は、大半が占拠されてた町の人々や、黒幕達に利用された、反乱に参加した人達、つまり、『英雄』に救われた人達だったからね」
「なるほどな……」
「ねぇ、そういえば、その黒幕達って、結局何がしたかったのかな?」
と、メリスがグリーに質問をした。
何がしたかったって……。
「だって、別にこの国を滅ぼしても、その人達に何の得もないんじゃ……」
「……そもそも、滅ぼすというのは言い過ぎだね。
例え『英雄』達がいなかったとしても、王国軍と反乱軍じゃ、やっぱり王国軍の方が上だ。
首都1つ落とすことができなかっただろうから、この国を滅ぼすなんて無理だったと思うよ」
「じゃあ、何で……」
「……メリス、その黒幕達だけど、どんな人達だったか覚えているかい?」
「え……っとー……」
「商人風の人達、か?」
「そう」
「あ、あーうん!覚えてるよ!!」
いや、忘れてたろ……。
と思ったけど、口に出さないでおく。
「その商人風の人達なんだけどね。
全員、レイド帝国出身者だったんだ」
「レ、レイド帝国!?」
グリーの話に思わず大きな声が出る。
レイド帝国ってのは、この国のすぐ西にある、この大陸の半分を手中に収めている大帝国だ。
最近は侵略とかしないで、おとなしくしてるらしいけど……。
「そのこともあって、一説ではこう言われてるんだ。
“黒幕達の目的はスイーツ王国を弱らせることで、その後ろにはレイド帝国があったんじゃないか”ってね」
「なっ!?それって……!!」
「そう、レイド帝国による『侵略』の一端だった。
……ただ、僕はこの説の信憑性、微妙だと思うんだ」
「微妙?」
「終身刑になった黒幕達は、全員レイド帝国との関わりを否定してるんだよ。
レイド帝国も同様だ」
「しらばっくれてるんじゃ……」
「そこまでレイド帝国に尽くす理由がないと思うけどね……。
祖国のために、っていうなら、とんでもない愛国心だよ。
それならまだ本人達が言った、『国を乗っ取るつもりだった』の方が信憑性が高いと思う」
「国を乗っ取るって……首都すら落とせなかったんだろ?」
「本人達によると、本当はたった10万人じゃなくて、もっと大勢……それこそ、町や村の人達全員を操るつもりだったらしい」
「全員って……」
「黒幕達が利用しようとした町や村の総人口は200万人以上、14歳以下の子供や65歳以上の老人を抜いても、120万人を超えてたからね」
「多っ!!……ってか、それならむしろ、反乱に参加したのが10万人って……」
「そう、少ないぐらいだよ。
その理由についてもいろいろ説があるけど、一番はおそらく、『国王への信頼』だ」
「信頼?」
「反乱が起きた一番の決め手は操心魔法だよ。
だけど、操心魔法はあくまでも心を惑わせる魔法だ。
つまり、『国王へ怒りへ向けろ』という操心魔法をかけられても、“心の底から国王を信じてる人達”には、効果が薄いんだ」
「そっか……」
そういう意味じゃ、黒幕達の謀略からこの国を救ったのって、国王と国民達の信頼だったのかも……。
「……逆にいえば、操心魔法にかかって反乱に参加してしまった人達は、“国王を心から信じることができなかった”とも考えられるんだ」
「……え?」
いや、確かに、そうともいえるかも知れないけど、そんな言い方は……。
「そのこともあって、反乱に参加した人達は、愛国心の強い人達から、こう呼ばれることがあるんだ。
……『反逆者』、とね」
「っ!!やっぱり、『反逆者』ってのは……」
「そう、反乱に参加した人達を軽蔑して使う言葉だよ。
……だから、この村では禁句になってるんだろうね」
この村は半年前にランディアさんに救われた。
ランディアさんも反乱に参加してたから、ランディアさんを軽蔑するような言葉を許さなかったのか……。
「……あれ、でもさ、今ランディアさん、軍にいるんだよな?
なんで……まさか、反乱に参加したから……」
あり得る、『星の賢者』は軍からしたら、のどから手が出るぐらい欲しい人材だろうし……。
と考えたのだが、
「いや、それはないよ」
その考えはグリーにあっさり否定された。
「反乱に参加した人達は、一切罪に問われていないんだ。
国王がその人達を集めて、直々に告げたんだって、『お前達の罪を許す』ってね」
「じゃあ、ランディアさんが今軍にいるのは……」
本人の意思……いや、
「罪滅ぼし……か」
「違う!!」
声と共に、バン!と大きな音がした。
メリスが机に自分の手を叩きつけた音だ。
「昔のことは、分からないけど……!
でも!きっと今は違うよ!!
チョコレート町で魔物と戦って、町を救って、みんなから感謝されて!
イアさん、うれしそうに笑ってた!!誇らしげに笑ってた!!
ただの罪滅ぼしなんかじゃ……絶対にないよ!!」
「メリス……」
メリスの目には、小さく涙が光っていた。
……良かった。反乱に参加してたって知っても、
メリスにとって、やっぱりランディアさんは憧れの人なんだ。
「……だな!きっと、人を助けたくて軍にいるんだろうな。
この村を救ったみたいに」
「……うん!」
そう言ってメリスは笑顔を見せる。
「さてと、長くなったけど、僕の話はここまでだよ。
ちょうど夕食の時間だし、食堂へ行こうか」
「おう!」
「わーい!私お腹ペコペコー!!」
「……お前病み上がりだよな?」
いや、昼はメリスにしてはありえないぐらい少なかったから、分からなくはないんだけど……。
「だって明日はタルト町まで歩かなきゃいけないんだから、たくさん食べてたくさん寝て完璧に治さなきゃ!!」
「その意気だよメリス!」
相変わらずマイペースだなこの兄妹……。
「ま、いいか、元気が一番だしな」
元気に笑うメリスを見て、俺はそう呟いたのだった。
では次回予告です!
「グリーだよ」
「ハディだ……ってまたこの組み合わせか」
「まぁ、3人から2人を選んでローテーションしてるからね。
1周したらまた1人に戻すらしいよ」
「1周って……えー、今回が俺とグリー……じゃなくて、
グリーと俺、だから」
「次回の僕とメリスで最後だね」
「早いなおい!!」
「まぁ、また気が向いたらやるらしいけどね。
それじゃハディくん、次回予告」
「俺か……。
えー、次回は第四章最終話!
俺達は早速当初の目的地であるタルト町へ向かう……
けど、その前にある場所へ向かうんだ。
次回、冒険者ライフ!第37話『星の賢者』!
過去を人を判断するための材料にするってのは、
間違っちゃいないだろうけどな」
「けど、過去はイコール現在ではないよ。
過去だけを見ていては、
その人を本当に理解することなんてできないだろうさ」