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冒険者ライフ!  作者: 作者X
第四章 3年前の物語
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49/71

第37話 星の賢者

※7/11 次回予告に少し付け加えました。

「……どう?」

「安心しろ、平熱だ」


不安げな顔をするメリスに、体温計を見せる。

その画面には、36.5℃と映っていた。


「よかったー!!これなら大丈夫だよね?」

「あぁ、って言っても病み上がりだからな。あんまり無理はするなよ?」

「分かってるよ!」


そう言ってメリスはうれしそうに笑う。

にしても、風邪が治って本当に良かった。

今日の夜10時までにタルト町のギルドに行かなきゃ、審査が受けられないからな。

別に無理して受ける必要はないけど、これで受けられなかったらメリス気にするだろうし。

今は朝の7時30分、念のために10時にはこの町を出るつもりだ。


「あれ、兄さんは?」

「グリーなら外で魔法の練習してる。審査までになんとか形にしたいってさ」


……でも、グリーってまだ練習始めて1週間ぐらいしか経ってないよな。

いくらなんでも無理なんじゃ……。


「大丈夫だよきっと!兄さん昔よく私の修業に付き合ってくれたし、魔力高いから!」

「……そうか、ところで俺は今『無理なんじゃ』って思っただけで、口に出してなかったんだけど」

「顔に書いてあったよ?」


さも当然というような顔をするメリス。

いや、普通の人間は読心なんてできないはずだろ。


「……前々から思ってたけど、お前実は異能者なんじゃねぇの?」

「えー何言ってるのハディ。『異能』なんてただの伝説でしょ?」

「いや、本当にいるらしいけどな。まぁ、見たことないけど」

「100万人に1人程度の確率で生まれるんだってさ。一生に1人見るかどうかだよ」


と、グリーが戻ってきた。

相変わらず物知りだなこいつ……。


「お、グリー、どうだ調子は?」

「そうだね……」


グリーは目を閉じ、『集中』を開始する。

……お、結構いい感じに光ってるな。


「生命の力よ 光と化して彼の者の傷を癒せ ヒール!」


グリーが突き出した右手から、白い光が現れる。


「おぉっ!!」


成功……と思ったその瞬間、光は消えてしまった。


「……ま、こんな感じかな。

 直接触れないと届かないし、効力もたぶんほとんどないよ」

「いや、でも十分すごいだろ!」

「そうだよ兄さん!これでもうケガなんて怖くないね!!」

「そうとも!まぁ、ケガをしないのが一番だけどね、戦闘だとどうしてもケガをすることがあるから、その時はすぐに僕に言うんだよ、メリス!」

「うん!!」

「待てグリー、俺は?」

「……バンソウコウならそこにあるよ?」

「魔法は!?」


まさかの差別。泣きそうだ。


「もう兄さん!ハディが一番ケガをしやすいんだから!」

「わ、分かってるよメリス。ハディくんもちゃんと治療するよ」


グリーを説得してくれるなんて、いい所あるなメリス。


「ハディはおっちょこちょいでケガをしやすいんだから!」

「余計なお世話だ!!」

「えーだって、この前ブラッディヴァインと戦った時、油断して攻撃に当たってたでしょ?」

「うぐっ……」

「それに昨日、稽古の時に油断して、クイトくんから一発くらったって聞いたよ?」

「しゃべったのかあいつ!!」


くそ!ちゃんと口止めをするべきだった!


「……あんまり心配させないでよ」

「あ?何か言ったか?」

「な、なんでもない!!」


ぼそっと何かを呟いたから聞いてみたけど、メリスはすごい勢いで首を振るだけだった。

どうしたんだ、一体?


「……さぁ2人とも、そろそろ朝ご飯に行こうよ」

「そうだな……ってグリー?何か怒ってないか?」

「はっはっは……何を言ってるんだいハディくん。僕は全然全く少しもこれっぽっちも怒ってないよ……?」

「なら、銃に手をかけるな!!」


こわいコワい怖い!!

朝なのにグリーの殺気で辺りが暗く見える!!


「どうしたの2人とも?早く行こうよ!お腹空いちゃった!」

「そうだね、行こうか」


一瞬で辺りが明るくなる。

……殺気でここまでできるなんて、実はグリーも異能者なんじゃないだろうか。


「あ、みなさん、おはようございます!」

「おっはよー、メリスさん風邪の具合はどう?」


と、食堂に行く途中でビレン姉弟に会った。


「うん、もう大丈夫だよ!2人にも心配かけちゃったみたいでごめんね」

「いいっていいって!ほらみんな、朝ご飯できてるよ。それを知らせに行こうとしてたんだ」

「悪いなわざわざ……」

「いいってば!それに、みんなもうすぐ出発しちゃうんでしょ?

 だったら最後ぐらいは、ね」


ランジは少しさびしそうに笑う。

会ってまだ3日目だけど、やっぱり別れってさびしいよな。

旅の冒険者なんてしてる以上、今まで何度も経験してきたけど、やっぱりさびしいものはさびしいし、これは別に、無理に慣れなくてもいいと思う。


「あ、あのハディさん!」

「ん?」


食堂で席に着き、料理を待っていると、リンが緊張した様子で話しかけてきた。


「朝食後にお時間ありますか?」

「え?まぁ、少しぐらいなら……」

「それじゃ8時30分に、昨日の修行場に来てもらってもいいですか?最後に稽古をつけてもらいたくて……」

「そうだな……うん、少しだけならいいぞ。クイトも一緒か?」

「はい!ありがとうございます!」


8時30分からか、じゃあ1時間ぐらいはできるな。

……いや、待て俺。今日その後、10時間歩くんだぞ。

1時間みっちり稽古した後10時間歩くってのは……。


「……あ、あのハディさん。稽古は一度お手合わせして頂ければ十分です」

「え?」

「タルト町まで歩いて行くと聞いてますから、これからそんなに歩くのに、何時間も稽古に付き合わせるわけにはいきません」

「そ、そうか?悪いな……」

「いえ、こちらこそ、勝手なお願いをしてしまってすみません」

「いや、それはいいけど……」


ってか、今考え読まれたような……。

そんなに顔に出やすいのか俺?


「うん!ハディは考えがすぐ顔に出るもんね!!

「……黙ってろ『読心のメリス』」

「何その異名!?かっこいい!!」

「気に入りやがった!?」

「ほら2人とも、料理できたよ」


騒いでいるとランジが料理を運んできてくれた。


「悪いな、騒がしくて」

「いいよ、朝はあんまりお客さんいないしね」

「あ、なぁランジ」


戻ろうとするランジを呼び止める。


「どうしたの?」

「お前は将来の夢とかあるのか?」

「将来の夢?」

「あぁ、昨日リンとクイトを一撃で沈めてただろ。

 お前もその気になってしっかり鍛えれば、冒険者とか兵士として、かなりいい線いくと思うんだけど……」

「んー……そういってくれるのはうれしいけどさ」


ランジは照れくさそうに頬をかきながら言う。


「でも、やめとくよ。俺の夢は冒険者でも、兵士でもないから」

「じゃあ……」

「……俺の夢は、この宿屋なんだ。

 今の内にお母さんをしっかり手伝って、大人になったらこの宿屋を受け継ぐ。それが俺の夢だよ。

 冒険者も兵士も立派な職業だけどさ、お客さんをもてなす宿屋だって、それに負けないぐらい立派な職業だと、俺は思ってるよ」

「……だな。ごめんな、急に変なこと聞いて」

「いいよ、認めてもらえるのはうれしいし」


ランジは屈託のない笑顔でそう言うと、奥へと下がって行く。


「でも、どうしたのハディ?急にあんなこと聞いて……」

「いや別に、ただ……あいつら見てると、子供の頃とか思い出してな」

「十年一昔って言うし、ちょうど一昔ぐらい前だよね」

「子供見てると、もう大人になったんだなって、嫌でも思い知らされるよ」

「なんか年寄りみたいなセリフ……」

「うるせぇ」

「まぁ、僕達はまだまだ若者だけどね。でも、先輩として子供達に教えられることぐらい、あると思うよ」

「……だよな。んじゃ、しっかりやらないとな!」


そうこうしている内に食事終了。

……まぁ、メリスはもっと早く終わってたけど。

他愛もない話をしていると、気づけば時計は8時20分を指していた。


「それじゃ、行ってくる」

「行ってらっしゃーい!!」

「がんばってきなよ」


一応早めに来たんだけど、クイトとリンはすでに到着し、素振りをしていた。


「あ、ハディさん!」

「よっしゃ来たな!今日もよろしくお願いしますっと!」

「2人共やる気満々だな、それじゃ昨日と同じように……」

「あ、いえ」

「ハディさん、今日は1人ずつ実戦稽古やってくれよ!」

「1人ずつ?」


確かに昨日も、1人ずつ稽古したりもしたけど、勝敗をつけるような実戦稽古は全部2対1だったのに。


「ほら、俺とリンって将来の夢違うだろ?

 いつまでもつるんでるわけじゃねぇからな、1人で戦うことも考えないと、ってさ」

「そういうわけです」

「……なるほどな、それじゃ、先はどっちだ?」

「もちろん俺だ!!」


昨日と同じように、言うや否やクイトは木刀を振りかぶって突進してくる。

相変わらず子供にしては……いや、小さい子供だからこそできる高速移動だ。

この『勢い』こそがクイトの武器だろう。

……だけど、


「悪いな、その速さはもう慣れた!!」


突っ込んでくるクイトの木刀に狙いを定め、タイミングを合わせて自分の木刀をぶつける!


「ぐっ!……まだ、まだぁ!!」


昨日とは違い、弾き飛ばされまいと意地を見せるクイト。

……だけど、


「悪いな!」

「うわっ!!」


手に力を込め、力任せにクイトの木刀を弾き飛ばす。

全体重かけてきたけど、力は俺の方が上だったみたいだな。


「くっそお!!」

「それじゃ、次は私です!」


悔しがるクイトの前にリンが出てくる。

昨日の稽古からすると、リンは『不意打ち』が得意みたいだけど、1人で一体どうするのか……。


「参ります!!」


と、リンは木刀を振りかぶったまま高く跳躍した。

ただジャンプして斬りかかってくるだけか?

不思議に思いつつも、それを受け止めようと木刀を構える。

が、しかし、


「っ!?」


リンは木刀を縦ではなく斜めに振り下ろすことで、わざと攻撃を外した。

当然、衝撃に備えていた俺は不意をつかれ、無防備な状態になる。

やべっ、フェイントか!!


「はぁぁっ!!」


振り下ろした状態から木刀を反転させ、逆方向へと放つ。

その刃は確実に俺を捕える……はずだった。


 ドガッ!!


「っ!!」

「惜しかったな」


リンの手から叩き落とされた木刀が地面に落ちる。

俺はリンがわざと斬撃を外した瞬間、反射的に体を半回転させ、今まさに向かってこようとした木刀を、自分の木刀で叩き落としたんだ。

今のは正直危なかった、もう少し遅かったら確実にくらってたな。


「ダメでしたか……結構自信あったんですが」

「俺もだよ、あーやっぱ現役冒険者は違うな……!」

「いや、2人とも昨日より強くなってたぞ。正直また驚かされてる」


昨日は子供なのに強かったことに驚いたけど、今日は成長具合に驚かされた。


「そりゃな!俺達だって昨日の稽古をもとにいろいろ考えたんだぜ!!」

「そうです!私達なりにがんばったつもりです!」

「そっか……昨日の稽古がためになったんなら良かったよ」

「はい!!……本当は、もっと稽古をつけて頂きたいんですが……」

「わがまま言うなってリン!この人達にはこの人達の目的ってのがあるんだからよ!」


暗い表情になるリンを、クイトがなだめる。


「ごめんな、けど、俺達はいろんな場所を旅して回ってるからな。

 きっとまた会うこともあるって」

「それじゃ、その時、また稽古をつけて頂けますか?」

「あ、俺も俺も!!」

「おう!約束する!その時までしっかり稽古しろよ!」


いつになるかは分からないけど、その時、この2人はもっと強くなってるだろう。

俺も負けないようにがんばらないとな!


「と、それじゃそろそろ行くな」

「あれ、もう行くのかよ?」

「まだ9時前ですが……」

「いや、村を出る前に、行く所があるんだ」

「ふーん……?」

「それじゃ、またな!2人とも!」

「おう、ありがとうございました!!」

「また絶対会いましょうね!!」


手を振ってくれた2人に手を振り返し、俺はメリスとグリーの元へと急いだ。



「遅いよハディ!」

「悪い悪い」

「それじゃ行こうか。場所は聞いてきたからさ」


グリーの指示に従って、その場所へと歩く。


「ここか?」

「うん」


到着したのは、この村の中ではかなり大きな家。

チャイムを鳴らすと、返事が聞こえ、扉が開く。


「おや、あなた方は……」

「おはようございます村長さん」

「おっ、冒険者さん達じゃないか。

 村長に用事か?」

「あ、エレルさんも、ちょうど良かった。

 お2人に伝えたいことがあったんです」

「ほほぅ、どうされましたかな?」

「俺にも?」


不思議がる2人に、メリスが口を開く。


「私達、この村に来る少し前に、イアさん……イア・ランディアさんに会ったんです」

『!!』


メリスの言葉を聞いた2人が驚きをあらわにする。


「その時、イアさんと一緒に仕事をしたんですが、その仕事で、イアさんは大きな町を1つ救いました。

 それだけじゃないです。

 イアさんがいなかったら、きっと私達はその仕事で死んでた思います」


不意に、ジェネラルドラゴンと戦った時のことを思い出す。

イアさん達が助けてくれなければ、俺達は全員黒焦げになってたはずだ。


「イアさんは今も、兵士として国民を救い続けてます。

 ……『反逆者』だろうがなんだろうが、あの人はすごい人です!私の、憧れの人なんです」

『………』


メリスが禁句を言ったにも関わらず、2人は怒ることなく、むしろ、穏やかな笑みを浮かべた。


「……そうですな、例え他の者があの人をののしったとしても、あの人がこの村の恩人だという事実は何ら変わらない」

「禁句とか……少し神経過敏になってたのかもしれませんね。

 まぁ、恩人をののしられたら、やっぱり許せないと思いますがね」

「旅の方々、それを我々に伝えて下さり、ありがとうございます」

「い、いいえそんな!私だってイアさんの悪口を言われたら許せません!」

「それが嬉しいのです。我々と同じように、あの人を尊敬する人がいるということが、ね」

「あ……」


村長さんの言葉に、メリスはうれしそうな笑みを浮かべる。


「と、引き止めちまって悪いな。あんたらもう出発すんだろ?」

「あ、はい」

「そうですか……。また、ぜひこの村に立ち寄って下され。

 歓迎いたしますぞ」

「ありがとうございます。それじゃ」


2人に別れを言い、村から出発する。

さてと、これから10時間歩くんだよな……。

まぁ、途中休憩はさみながら行けばいいか。


「……ねぇ、ハディ」

「ん?」


と、隣を歩くメリスが話しかけてきた。

見ると、メリスは満面の笑みを浮かべていた。


「私の憧れの人は、やっぱり私の思った通りの人だったよ」

「……だな」


メリスの笑顔を見て、俺も自然に笑顔で返すのだった。






では次回予告です!


「グリーだよ」

「メリスです!……兄さん大変!

 もう第四章終了だよ!?」

「次の第五章が最終章だからね。

 いよいよこの物語も終わりが見えてきたって所かな」

「むー……少しさびしいなぁ……」

「仕方ないよメリス。

 始まりがあれば終わりがあるものだよ。

 逆に、終わりがあれば始まりがある。

 受け入れて、前に進めばいいんだよ」

「……そうだね、兄さん!

 それじゃ次回予告いってみよう!!

 私達はやっとタルト町に到着して、

 ギルドに申請へ向かうんだよ!

 そして、ハディはこの町で、ある人と出会うの。

 次回、冒険者ライフ!第五章『伝説』!第38話『タルト町』!!

 兄さん、運命って信じる?」

「もちろん!僕とメリスが兄妹になったのは運命……、

 コホン、ごめん、まじめに答えるよ。

 運命を否定する気はないけれどね、

 結局は考え方次第だと思うよ。

 運命を信じれば運命、

 信じなければただの偶然、って具合にね」



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