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冒険者ライフ!  作者: 作者X
第三章 弱肉強食
30/71

第22話 芳声嘉誉(ほうせいかよ)

~サイドアウト~



ここはヨーグルト港町の近くにある海岸。

ギルドのエース、コウル・フレディアはその辺りを歩き回っていた。

そのそばには火を纏う赤いトカゲ、サラマンダーが浮遊している。


「ん~……おっかしいなぁ……」


コウルは頭をかきながら、不満そうにうめく。


「ねぇヒヒ、近くで変な気配とか感じる?」


ヒヒと呼ばれたサラマンダーは、それに応えるように辺りをうかがい始める。


と、何かを探知したらしく、ヒヒは近くの波打ち際を注視する。

コウルも気づき、それにならう。


次の瞬間、大きさ1m程のカニが砂の中から現れ、コウルに襲いかかってきた。


レッサークラブ、危険度Eの低位魔獣だ。

危険度Eの中でも危険度Dに近い強さを持ち、カニなのに前にも走ることができる。


「頼んだよヒヒ!」


コウルの周りが赤く光る。

すると、それに呼応するようにヒヒの体が赤く光った。


「行け!!」


コウルの声を聞き、ヒヒは口から炎を吐きだす。

レッサークラブはあっという間に炎に飲み込まれ、黒焦げになって倒れた。


「お疲れヒヒ!」


コウルのねぎらいの言葉に、ヒヒは目を細めて傾く。


「……でも、こいつも違うね……」


事切れたレッサークラブを見て、コウルは小さく嘆息する。


「おっかしいな、目撃情報は多いのに、これだけ探しても一匹も見つからないなんて……」


落胆するコウルを励ますように、ヒヒが周りを飛び回る。


「ん、大丈夫だよヒヒ、ありがとう」


コウルはヒヒに笑顔を向けてそう言うと、大きく伸びをする。


「さってと、がんばりますかね。

 ……手を抜いたらギルド長に殺されるし」


コウルは少し自嘲的に笑い、調査を再開するのだった。











~ハディサイド~




「はあぁぁっ!!」


気合いと共に水のカズラの本体である、緑色のつぼみのようなものを切り裂く。


「ふぅ……これで何体目だっけ」

「丁度30体目だよ。

 ……まだたくさんいるけどね」


グリーはうねうねと周りをただよっているつるを見て呟く。


「確か一つのビニールハウスに、50体ぐらいいるって言ってたよな……」

「じゃあもう半分以上終わったの?」

「……このビニールハウスは、な。

 ビニールハウスは全部で五つあるからな?」


ほっとした表情のメリスに釘を刺しておく。


「お昼休憩までに、できれば二つ終わらせておきたいかな。

 ……後半は休憩も必要だろうし」


銃声と共に、少し離れた場所にいた水のカズラの本体が吹き飛ぶ。


「ハディ後ろ!!」


メリスの声に慌ててしゃがむ、と、さっきまで俺の頭があった場所を、緑色のつるが通っていった。

振り返り、その水のカズラに迫り、斬り伏せる。


「サンキューメリス!」

「気をつけてよ!」


メリスはそういうと、『集中』を始める。


メリスの周りが青く光るのを見て、二本のつるが襲いかかった。


しかし、それがメリスに届くより早く、俺とグリーがそれぞれ本体を倒す。


「……海底より水の集いを呼ぶ……」


メリスの両手の間に、水が大きな球体となって現れる。

そして四つに分裂し、メリスの周りを囲む。


「流せ アクアム!!」


四つの球体それぞれから水柱が飛び出し、凄まじい勢いで水のカズラを襲う。


上から押しつぶしたり、押し流してビニールハウスの壁に叩きつけたり。

……あ、今ので五体目だ。


「アクアムは一つ一つの威力は低いけど、長時間操れるのが強みだよね」

「いや、十分威力高いだろ」


つぶされた水のカズラを見て呟く。


うーん、植物だからまだいいけど、これ動物だったらけっこうグロいよな……。


「と、おしゃべりしてる場合じゃないか!」


剣の柄を握り直し、近くにいた水のカズラへ向かって走る。


……やっぱ水が張ってて走りにくいな。

一応防水加工されたくつを貸してもらったから、これでも少しはマシなんだろうけど。


向かってきたつるを右へ跳んでかわし、距離を詰めて本体を切り裂く。


「よし……うわっ!!」


右から飛んできたつるを慌てて前へ跳んでかわす。


あっぶね、油断した……!


その水のカズラに狙いを定め、一気に肉迫して斬り伏せる。


水のカズラの武器は長いつるだ。

遠くから飛んでくるのは厄介だけど、その分一度伸ばしたら戻すのに時間がかかるからな、その間無防備になるのが弱点だ。


さらに近くに二体の水のカズラを発見し、そっちに向かって走る……と、向こうも俺に気づき、つるを伸ばしてきた。


……足元に水が張ってるからな。

やっぱりその音で気づかれるか……!


一本目をしゃがんでかわし、二本目を切り裂いて本体に迫り、二体とも真っ二つにする。


「さて、後は……」


周りを見ると、もう生きている水のカズラは見当たらない。


「ここはもう終わりみたいだね」

「それじゃ、次に行くか!」

「水のカズラを回収してから、ね」


グリーは大きな袋を出す。


そういえば、回収もするんだっけ。






「あれ、もう終わったんですか?」


回収し終えてビニールハウスから出ると、クアルさんに驚かれた。


「はい……あ、これここに置いておけばいいですか?」

「あ、はい」


水のカズラが入った三つの袋をビニールハウスの近くに置く。


「それじゃ、次行くか!」

「うーん、今12時前だから、ちょっとギリギリかもね」


12時前か……。

始めたのが11時少し前だったから、やっぱ1時間はかかるな……。


「お弁当は少しぐらい食べるのが遅れても大丈夫ですので、ゆっくりで構いません。残りもよろしくお願いします」


クアルさんが笑顔でそう言った。


なんか、少し態度が軟化したような……?


「ハディ、寒いよ?」

「心の声にダメ出しすんな!ってか、別にダジャレ言ったつもりはなかったんだけど」

「ほら二人とも、じゃれてないで行くよ……?」

「分かった!!分かったからグリー、その黒いオーラをしまえ!!」


依頼主の前だからさすがに銃は突き付けてこないけど、殺気だけで十分怖い。


とりあえず祟られないうちに仕事を始めよう。

グリーも仕事中はそっちに集中するだろうし……。


「ハディくん、無駄なことを考えてないかい?」

「バカな!?心を読まれた!?」

「……カマかけただけなんだけどね?」

「ハディ、無駄だって認めちゃダメでしょ」


次々にダメ出しをしてくる二人。

こういう時ホント息ぴったりだよなこいつら……。











「ラスト!!」


二つ目のビニールハウス最後の水のカズラを斬り倒す。


これで後三つ、大体150体ぐらいか……。


「……多いな」

「そんなの今更でしょ。ファイト!!」

「なんだその他人事みたいな言い方!?」

「何言ってるんだいハディくん!メリスもしっかり働いているじゃないか!!」

「いや、サボってるなんて言ってないけど」

「ハディひどーい!!」

「人の話聞け!!むしろ聞いててわざと言ってるだろお前ら!!」


グリーはともかく、メリスは絶対わざとだ、絶対。


「絶対」

「なんで三回も言うの!?」


メリスめ、やっぱり心読んでやがったか。

見切った!見切ったぞ!これでもうメリスの読心なんて怖くな……


「ハディ、果たしてそうかな?」

「うわ、また読まれた!!」


くそ!やっぱり常に読まれてるんじゃどうしようもない!!


「二・人・と・も?じゃれてないで仕事してね……?」


グリーが殺気を向けてきた……俺に対して。

グリーが銃を向けてきた……俺に対して。


「待てグリー!!メリスは!?」

「僕がメリスに殺気や銃を向けるわけないだろう?」

「分かってたけど理不尽だ!!」

「ほらハディ!早く仕事しなきゃ!」

「おいコラ元凶!!いつの間に仕事始めたんだ!?」


既にメリスの持っている袋は大きくふくらんでいる。

油断も隙もない……!!


「『大きくふくらんでいる』だって!?ハディくんメリスのどこを見ているんだい!?」

「そこだけ!?中途半端に心読むなグリー!!」


こうして、俺はグリーに追われながら水のカズラを回収していくのだった。






「あ、皆さんお疲れ様……、どうしました?」

「……いえ、何でもありません」


ビニールハウスから出ると、クアルさんに心配された。

たぶん俺が疲れているように見えたんだろう。

正直自分でもそう思う。


「もう100体程相手にしているわけですからね。疲れていて当然だと思います」


違うんです、仲間に追われていたんです。とはとても言えない。


「先程お弁当が届きましたので、お昼にして下さい」

「はーい!!」

「メリス、手は上げなくていい」


興奮気味のメリスをなだめて、クアルさんについていく。


案内されたのは小さな休憩室だった。

小さいっていっても飯食べるぐらいなら十分だけど。


「すみません、休憩室はここしかないもので、私もご一緒しますがよろしいですか?」

「はい、もちろん」


机には四つの弁当が置かれていた。

……普通の大きさだけど、メリス足りるか……?


「それでは、いただきます」


クアルさんにならって、全員いただきますと言い、弁当を食べ始める。


んー、やっぱり仕事の後の飯って格別だよな!

ここまでビニールハウス一つ1時間ぐらいで終わってるからあんまりあせる必要もないし。

ここはゆっくり昼飯を堪能するとし……




「ごちそう様ーー!!」


ツッコまない!!ツッコまないぞ!!


「え、あ、あの……」

「気にしないでください、こういう奴なんです!」


戸惑うクアルさんに弁明しておく。

そりゃ仮にも女が弁当を5分足らずで食べ終わったら驚くよな!!


「そういえば、クアルさんは僕達のこと、ギルドからどのくらい聞いていらしたんですか?」

「どのくらい……と言うと?」

「いえ、初めに僕達を見た時、少し不安そうな顔をされていたようなので」


グリーの言葉を聞き、クアルさんは気まずそうな顔をする。


「はは……申し訳ないです。

 いつもはギルドのエースの方に来て頂いているもので、少し不安だったんです」


「エースって、コウルさんですか?」


確かプラムさんはギルド長で、エースはコウルさんだったよな。

……まぁ、ギルド所属の冒険者はコウルさん一人だって言ってたけど。


「はい、コウルさんはC(クラス)冒険者で、実力もあるし、町のみんなから信頼されていますよ」

「C(クラス)!?」


あ、あの人が!?


「レイラさんに比べたら普通だけど、十分天才の部類だね……」

「……プラムさんに脅されてた姿からは想像できないけど」

「それと、プラムさんはB(クラス)ですよ」

「B!?え、あの人冒険者なんですか!?」

「当たり前だよハディくん。

 基本的に冒険者ギルドの職員は冒険者しかなれないんだから」


そういやそうだっけ……。


「プラムさんはコウルさん以上に町の人に慕われていますよ。

 あの人は実力はもちろん、この町のことを本当によく考えてくれていますから」


クアルさんはうれしそうに話す。


『魔女』なんて異名だと悪いイメージがありそうだけど、プラムさんは町の人達にちゃんと信頼されてるみたいだ。

ギルドに多く依頼がいってるのも、そのおかげなんだろうな。


……その分コウルさんが苦労してるけど。


「あなた達のこともプラムさんに聞いたんですよ。

 剣士一人、『魔導師(ウィザード)』一人、それと銃使いが一人って」

「……見抜かれてたんだね」


グリーが小さく呟く。


どうやらプラムさんはかなり俺達のことを見抜いてたみたいだ。

実力とかも計られてたのかも……。

そう考えると、最初追い払われそうになったのって、俺達が力不足だと思われたから、だよな……。


「あの、私達のことどんな風に聞いてたんですか?」

「え……っと、そうですね……」


クアルさんが少し言い淀む。

やっぱり、きつい評価なのか……。


「お願いします、俺も気になりますし。

 少しぐらいひどいことを言われても大丈夫です!」

「……分かりました」


クアルさんが真剣な表情になる。

一体なんて言われたんだ?

……いや、どんな風に言われたって俺はくじけたりしない。

さぁ、どんと来い!!




「『バカそうだけど仕事はたぶん大丈夫』、と……」


その評価はあんまりでしょプラムさん!?


「それで少し不安だったんです」

「はは……」


そりゃ不安になりますよ!!

もう少し言い方ってものが……。


「何でも、顔がバカそうだから初め追っ払おうかと思ったらしくて……」

「そんな理由!?」


俺達そんな理由で最初『帰れ』って言われたのか!?


「『実力は申し分ない』とも言われたんですが、やっぱり少し不安で……」

「ははは……」


どうしよう、実力は認められてるって喜ぶべきか、バカってなんだ!?って怒るべきか判断に困る。



「そっかー、じゃあ最初追い返されそうになったの、ハディのせいだったんだ」

「待てコラメリス!!誰がバカ面だ!?」

「むっ!じゃあ私のせいだっていうの?責任転換はよくないよハディ!!」

「それを言うなら責任転()だ!絶対お前の方がバカだろ!!」

「バカって言う方がバカなんだよ!!」

「子供かお前は!?」



「……止めなくてよろしいんですか?」

「放っておけばその内止まりますよ」

「そ、そうですか?」

「はい、なんだかんだであの二人は仲が良いですから。

 ……仲が、良いですから……」

「グ、グリーさん?なんだか声が怖いのですが……」



な、なんだ!?外野から殺気を感じる!?


「二人とも、食べ終わったのならさっさと仕事に戻るよ……?」

「はーい!」

「お、おう……」


とりあえずグリーに黙らさ……止められて、俺達は仕事に戻るのだった。













「これで最後、か」


最後、一番奥のビニールハウスを前に、俺は呟いた。


「二人とも、休憩は必要ないかい?」

「うん!大丈夫!」

「疲れてないわけじゃないけどな。後50体ぐらいなら大丈夫だ」

「それじゃ、行こうか」

「おう!これで最後だ!」


やる気満々でビニールハウスの中に入る俺達を、一番に迎えたのは……


異臭、だった……。


「え……?」


思わず、そんな言葉が口からもれる。


俺達の目の前に広がっているのは、大量の、水のカズラの死体。


「な、なんだこれ……!?」


手に取ってみると、まるで何かに食い散らかされたように見えた。

水が張ってて分かりにくいけど、ぐしゃぐしゃになったつるや本体からは汁が出ていて、異臭の正体はこれみたいだ。


「ハ……ハディ!!」


メリスが震えた声を出す。

その指の差す先にいたのは……。


「何だ……こいつ……!?」


そこにいたのは……、巨大な赤い魔物だった。

赤い葉が何枚もくるまれたような物体から、五本の大きく、太いつるが伸びている。


本能的に、感じた。

やばい、と……!!


「ブ、ブラッディ、ヴァイン………!?」


グリーも驚愕の表情でその魔物を見ていた。


グリーのその反応を見て、俺の勘が当たったと、確信した。


その魔物……ブラッディヴァインは、何かに気づいたような反応を見せた後、赤いつるを二本、こっちに向けてきた。

……気づかれたみたいだ。


「……ハディくん」

「危険度C、か?」


グリーは緊張した面持ちで傾き、メリスはビクッと肩を振るわせる。


体が震えそうになるのをぐっとこらえ、ゆっくりと、剣を引き抜く。


何でそんな魔物がここにいるんだ?

戦ったとしても、勝てるのか?


そんな疑問が浮かんだが、すぐに消した。

……そんなことを考えている余裕なんて、ない!


「ギシャアアアアアアァァァァァァァァアアアアアアア!!!」


巨竜の咆哮のような音が響き、二本の赤いつるが、凄まじい勢いで俺達に襲いかかってきた。










サブタイトル解説

芳声嘉誉(ほうせいかよ)

意味は良い評判。

主人公達や町の人から見たギルドの印象です。


では次回予告です!


「グリーだよ。

 突如現れた危険度Cの魔物、ブラッディヴァイン。

 戸惑う間もなく、僕達は戦うことを余儀なくされる。

 僕達に勝機はあるんだろうか?


 次回、冒険者ライフ!第23話『孤軍奮闘(こぐんふんとう)』!

 あの時とは違うかもしれない。

 でも、きっと無理なんかじゃないはずだ!」



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