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冒険者ライフ!  作者: 作者X
第三章 弱肉強食
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第21話 共存共栄(きょうぞんきょうえい)


「んー、この町ってけっこう都会っぽいよな……」


現場に行く途中、家や街灯を見てそう思った。


後、屋台の準備をしてる人がちらほらいるな。

祭りでもあるのか?


「まぁ、スイーツ王国は貿易でも有名だからね。

 この町は港町だけあって貿易もしてるし」

「へぇ……」

「……あれ、兄さん、それ何?」


メリスがグリーの持っている本を見る。


表紙には『魔法入門』と書かれていた。


「何って……」

「兄さんにしては珍しい本読んでるかなって」

「そうか?」


グリーは魔物図鑑とか魔術書とかよく読んでるけど……。


「だって、それ図鑑とかじゃなくて入門書でしょ?魔法を使う人が読む本だよ?」

「そういやそうだな」

「いや、魔法を覚えてみようと思ってね」

「え?」

「僕は普段から本を読んでるのと、昔メリスの修業に少し付き合ってたおかげで普通の人より魔力が高いみたいなんだ。

 だから、治癒魔法の一つでも使えるようになれば、仕事で役に立つんじゃないかと思ってね」


そう言ってグリーは本を閉じる。


「治癒魔法か……、確かに助かるけど」

「でも兄さん、魔法なんてそんな簡単に使えるようにならないよ?」

「一朝一夕でどうにかなるとは思ってないよ。

 まぁ少しずつ、ね。僕だって、二人の役に立ちたいんだ」

「いや、グリーには十分助けられてるって!」


戦闘でもグリーの補助には助けられてるし、依頼を受ける時や狩った魔物を売る時にもグリーの交渉には助けられてる!


「それに、何より……」


グリーはフッと笑みを浮かべてこう言った。


「僕が治癒魔法を使えれば、メリスが怪我をした時すぐに治してあげられるじゃないか!」

「あぁうん、言うと思った」


実にグリーらしい理由だ。

ってかそっちが本音だろ。


「そのうち披露したいと思ってるよ。楽しみにしててね」

「……おう!」

「がんばってね兄さん!!」


グリーもがんばってるんだな……。

俺も、もっと剣の腕を上げないと。


『銀狼』ロギ・シルムさんを思い出す。

……あのレベルになるのはまだ無理だけど、いつかは、あの人にも負けないぐらいに……!






「そういや、プラムさんってなんか俺達に冷たかったよな」


数分歩きながら話しているうちに、ふと『紫黒の魔女』プラムさんの話になる。


「ひょっとして旅の冒険者に嫌な思い出でもあるとか」

「……確かに、それも考えられるね。

 依頼料の前金だけ持ち逃げしたり、失敗した後謝罪もせずに逃げる悪質な冒険者とかもいるし」

「えぇ!?私達はそんなことしないよ!!」

「それが信じられるかどうかってことだろ」


俺達を信じてくれ!!なんて言ったら余計怪しいし。


「それよりも、ギルド長って立場があるから、じゃないかな」

「立場?」

「うん。前に言った通り、この町のギルドは住民からの信頼が厚いんだ」


そういや、パンフレットにも大きく載せられてたっけ。


「だから、ギルド長であるプラムさんはその期待に応えないといけない。

 ……よそ者だと、その辺りは信頼しきれないんだろうね。

 コウルさんのことはなんだかんだで信頼してる感じだったし」

「結局、信頼を得るには行動で示すしかないってことか……」

「そうなるね。

 ……僕達がこの町にいる間に信頼を得られるかどうかは分からないけど」


グリーはそう言って苦笑いを浮かべる。


とりあえず、俺達がやるべきことは受けた依頼を全力でこなすこと、だよな!











「ここか……」


ギルドを出てから30分ほど歩き、俺達は依頼主のニームル養殖場に到着した。


名前が養殖場ってことは、農場よりも養殖の方を重点的にやってるのかな?


「『危険、関係者以外立ち入り禁止!!』って書いてあるね……」


施設の周りは柵で囲まれていて、メリスの言うとおり、警告が出されている。


まぁ、低位とはいえ魔物を育ててるんだもんな。一般人が入ったらやばい。


と、その時、入口から一人の男の人がやってきた。


藍色の髪に黒い瞳。

歳は二十代後半ってところか。


「あ、冒険者の方達ですか?」

「はい、依頼を受けてきました」

「そうですか……」


その男の人は一瞬、少し落胆したような表情になる。


「申し遅れました。

 私はこの施設を管理しているクアル・ニームルと申します」


クアルさんは愛想笑いを浮かべてそう言う。


……なんか、あんまり歓迎されてないような……?


「あ、俺はハディです。こっちは仲間のメリスとグルードです」

「初めまして!」

「よろしくお願いします」


俺達もクアルさんに自己紹介をする。


……メリスは気にしてないみたいだけど、グリーは気づいてるっぽいな。


「それでは、中を案内します」


クアルさんに先導されて、俺達は施設の中へと入っていった。




「わぁー!!すっごーい!!」


メリスは中に入るやいなや、目を輝かせる。


そこにあったのは、一面に広がる生簀(いけす)だ。

ここが養殖場なんだろうな。


「ここでは『メニーフィッシュ』を養殖しています」

「メニーフィッシュ?」


「危険度E以下の低位魔魚だよ。

 ワイルドウルフより弱いけど、繁殖力と生命力が強いし、食用になるんだ」


柵に手をかけて生簀をのぞいてみると、中には多数の魚影が見えた。


「……ハディくん、あんまり乗り出すと危ないよ?」

「え?ひょっとして飛び出してきたりするのか?」

「水から出てくることはありませんが、万が一、生簀に落ちたら……」

「………気をつけます」


絶対ケガじゃすまないよな、それ。



「それで、メニーフィッシュを収穫すればいいんですか?」

「あ、いえ、メニーフィッシュはまだ育てている途中です。

 収穫していただくのはこちらの方です」


クアルさんが手で指し示す。

その先……生簀の向こうには、小さなビニールハウスのようなものがいくつか並んでいた。

そこだけ天井がガラス張りで、光が入りこむようになっている。

またよく見ると、生簀からポンプのようなもので、その中に水を送っているみたいだ。

となると、そっちが農業の方なのか。


「皆さんに収穫していただくのは、この魔物達です」


クアルさんに促されて、俺達はビニールハウスの中をのぞき見る。


………そこには、見知った魔物がいた。



「……水のカズラ?」

「はい、ご存知ですか?」

「えぇ、前に狩ったことがあるので」


『小人の遊び場』で狩った低位魔草だ。

ここでは栽培してるんだな……。


「それでは、注意事項をいくつかしておきたいと思います」


そう言われて、俺達はクアルさんの方を向く。


「これから皆さんには水のカズラを収穫していただきますが、まず、一つ残らず狩り尽くして下さい。

 栽培用の種はもう採ってありますし、残してしまうと、次の栽培に支障が出てしまいますので」


前の奴が残ってると、種をまいてもそいつらに食べられるかもしれないし、そもそも種をまく人が危険だから、ってことか。


「それと、メリスさんは魔法使いだと聞いていますが、どんな魔法をお使いになるんですか?」

「あ、炎魔法と水魔法です!」

「……メリス、手は挙げなくていいって」

「では、炎魔法は使わないで下さい」

「……え?」


メリスが目を丸くする。


一応、メリスは炎魔法の方が得意だもんな。


「この水のカズラは、傷薬の材料として出荷する予定なんです。

 それに、この中は深さ5cm程の水が張ってますので、灰にしてしまうと回収できないと思います」


そっか水が張ってるのか。

……動きにくそうだな……。


「すみません、質問いいですか?」

「はい、どうぞ」

「水のカズラはどのように狩ればいいですか?」


………?

グリーの言ってることがよく分からない。


「焦がしたり、燃やしたりしなければ、どのように収穫されても構いません。

 できれば本体だけを倒して、つるはきれいなままにしていただけるとありがたいですが、どの道すり潰すので、斬ったり撃ったりされても問題ありません」


クアルさんは俺とグリーを見て言う。


……あれ?俺は剣を腰に下げてるから分かるだろうけど、グリーが銃を使うってよく分かったな。


「あ、はい!質問いいですか!?」


メリスが手をビシッと上げる。

珍しいな、メリスが質問なんて。


「はい、何でしょう?」

「ここって、クアルさんしかいないんですか?」


依頼と全く関係ねぇ。


……でも確かに、クアルさん以外に人がいないな。


「……実は、現在ここで働いているのは、私を含めてたった三人なんです」


クアルさんは苦笑いを浮かべながら、メリスの質問に答える。


「アクアポニックスはまだあまり有名ではありませんし、それに育てているのが魔物なので、少し敬遠されているみたいなんです」

「怖がられてるってことですか?」

「はい、最悪命の危険もないとは言えませんし」


そりゃ魔物だからな……、魔物は『人を襲う動物』だ。

人喰い……は言い過ぎかもしれないけど、それに近い奴らばっかりだ。


「給料はかなり良いと思うんですが………」


クアルさんは小さくため息をつく。


……まぁ、誰だって命の方が大事だよな。


「人が少ないせいで、今日は私の他は、午後から一人が来るだけなんです。

 私も出勤したのはついさっきで、それ以前は誰もいませんでした」

「……いいんですか?動物を育ててるのに」

「大丈夫ですよ。

 餌以外はほとんど自動ですし、魔物だから生命力が強いですし。

 ……ただ、あまり餌をやらないと共食いを始めるのですが……」


基本的に魔物は食欲がすごいもんな……。

メリスに比べたら全然だろうけど。


「ハディ、今なんか失礼なこと考えなかった?」

「いや、別に……」


慌ててメリスから目をそらす。


「それと、養殖のものは弱いと思われがちですが、このビニールハウスの中で餌の取り合いなど、同族との競争で鍛えられてますので、野性程ではありませんが強いです。

 お気をつけ下さい」

「え、水のカズラにも餌やってるんですか?」

「はい、植物ですが雑食性ですし、排水中の栄養分だけじゃ足りないんです」


なるほど……。


「最後に一ついいですか?」

「はい、どうぞ」


グリーが質問をする。


「このビニールハウスですが、耐久性はどれぐらいあるのですか?」

「一応魔物用のものなので、それなりに耐久性はあります。

 極端な話、銃で撃ったり、魔法をぶつけたりしても、そう簡単に破れることはありません」


じゃあ、思いっきりやっても大丈夫だな。


「……ただ、メリスさんは『魔導師(ウィザード)』だと聞いています。

 メリスさんの全力の魔法をぶつけられたら、流石に危ないと思います」

「だってよ、メリス」

「はい!火事にしないように気をつけます!!」

「それ以前に炎魔法使うなって言われたろ!!」


ブレイアムを建物にぶつけたら火事じゃ済まないぞ!!


「水のカズラには水魔法があんまり効かないから、今回メリスには補助を任せるよ」

「んー……がんばるね!」


グリーの指示に、少し不満げながらもにっこり笑うメリス。



「説明は以上ですが、他に質問はありますか?」

「いえ」

「大丈夫です」


クアルさんは俺達に確認すると、鍵を取り出し、ビニールハウスの入口を開ける。


「それではよろしくお願いします。

 一応1時に昼食を用意しておきますので、キリの良い所まで終わりましたら出てきて下さい」


あ、まかない付きだったのか今回の仕事。


「すみません!!質問いいですかっ!?」

「え、はいどうぞ」


突然大きな声を上げるメリスに、少し驚くクアルさん。


メリスは真剣なまなざしで、クアルさんに質問をぶつけた。


「まかないっておかわり有りですか!?」

「少しは自重しろ!!」

「えー……申し訳ありませんが、お弁当なのでおかわりはありません」


メリスの欲望まるだしな質問に、クアルさんは苦笑しながらそう答えるのだった。










サブタイトル解説

共存共栄(きょうぞんきょうえい)

自他共に生存し、繁栄すること。

魔草と魔魚、

また冒険者と依頼主の関係を表すのにいいと思い使いました。


では次回予告です!


「メリスです!

 いよいよ仕事を始める私達!

 でも相手は危険度Eだし、楽勝だよね!!


 そして、クアルさんからギルドの話を聞くんだけど、

 これって私達にはあんまり関係ないような……?


 次回、冒険者ライフ!第22話『芳声嘉誉(ほうせいかよ)』!!

 確か……、気にし過ぎてもダメだけど、

 気にしなさ過ぎてもダメだって、兄さんが言ってたよ?」



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