善悪審判(718文字)
ここは死後の世界。
一面の地面が雲であり、空は真っ青。そこに、大神殿の祭壇かと見まごうほどの、黄金色の法壇があり、多数の天使が列席している。真ん中の天使だけ白い翼を三対持っていて、つまり長の立場らしかった。
天使たちが喧々諤々、議論を交わす。
「この男は、必ず地獄に向かわせるべきだ。この男のせいで、どれだけの人間が不幸になったと思っている!」
「いいや、天国に住まわせるべきです。彼のおかげで、人類は一つの輪へと近づきつつあるではありませんか……!」
論争の焦点となっているのは、一人の男。法壇の向かいにある、控えめな造りの審問台にて、冷や汗を垂らしている。清潔な白いローブがその禿頭に、やけに似合っていた。
議論はさらに紛糾する。
「天国派も地獄派も、どちらも一理あるよ。どうだろう、ここは一つ一年変わりで、天地を行き来させるというのは……」
「とんでもない! それは思考放棄というものでしょう。そんなことするくらいなら、魂を二つに切り分けて両方に住まわせる方がマシだ……!」
争点の男がゲェッという顔をした。具体的にどうなるかはさっぱりだが、とにかくとんでもないことになりそうなのは分かる。
そんな男の青い顔を見て、同情したのか、議長の天使が「静粛に!」とガベルを叩いた。
静まり返った死後審判の場で、議長はため息をつきながら、男へ語りかける。
「申し訳ありませんね。スマートフォンの生みの親、スマ・トーフォン氏。なにせ、あなたの発明のおかげで、文明も、国際交流も、社会ストレスも、一気に加速した。あなたの人生が善であるか悪であるか決めるのは、まだ判断材料が足りないのです。現世の行く末を見るためにも、この議論の決着まであと一世紀ほどの時間を頂きたく……」




