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雪が溶けたら(314文字)
「雪が溶けたら何になる?」
「そりゃあ、水さ」
タロウが言った。その隣で、ジロウが言った。
「そう思うだろう。しかしタロウ、それは安直さ。僕らの友達、マサトくんはなんと言ったと思う」
「水じゃあないのか」
「そうさ」
ジロウの口角はニヤリと上がっていた。
それから、もったいぶって言う。
「『春』、さ。雪が溶けたら、春が来ると言ったんだ」
「ははぁ。素敵だ。マサトくんは、とても美しい心の持ち主なんだねぇ」
タロウはにっこりとした笑みを浮かべた。
あたりには雪が降りしきる。雲の隙間からお月様の覗く、夜であった。
「良い春が、来ると良いねぇ」
「そうだなぁ」
タロウとジロウはじっと、雪を見上げ続けていた。
マサトくんの家の庭に、雪だるまの兄弟が並んでいた。




