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第47話 お前を離さない

 デイちゃんの元を去った僕たちはリュウがいるという噂のベイサイドエリアへ向かっていた。


「お前、探偵道具の記憶もないんやな」


「そんな記憶ないよ!」


「そうか……。この事件を解決したら、一から説明せなあかんな。相棒として知っとかな……」


「説明しなくていいよ! この事件が解決したらお前とは相棒じゃなくなるんだから!」


「……! そうか元の世界ではオレ達は……」


「おい、ハッタリ!」


「な、なんや?」


「リュウがいた!」


 僕のことを相棒気分で話しかけてくるハッタリの話を遮った。探偵道具のことは少しだけ気になる。他にどんな道具があるのかを聞きたい気持ちもあったけど、今はリュウのことだ。元の世界に帰れたら、たっぷり……。いや、そうか。元の世界ではハッタリとは何でもない関係なんだ。あいつはあかねちゃんの相棒気取りの嫌なやつで……。


——コイツは今どんな気持ちなんだろう


 こっちの世界ではハッタリの相棒は僕だ。ハッタリは僕と数々の事件を解決したと言っていた。こっちの僕はハッタリのことをどう思っていたんだろう。正直僕からすると、あかねちゃんにちょっかいをかける変な男としか思ってない。2人で信頼を築いて事件解決したりしていたのだろうか。コイツと仲睦まじく何かをするのなんて正直想像もつかないけど。


——いや、どうでもいい。今は……


「じゃあ早速……」


 僕は思考を振り切る意味でもリュウの元へと近づこうとした。そんな僕をハッタリは制してきた。


「待て! 一旦様子見や!」


「え、何でだよ」


「あのリュウがもうUSBメモリを受け取ってるかどうかわからへんやろ。これから犯人が近づいてくるかもしれへんのやから……一旦様子見や!」


「た、確かにそうか。悪い」


 ハッタリと僕は物陰に隠れて、ベイサイドエリアのベンチに座っているリュウの様子を眺めていた。隠れるにしてはコイツの探偵の格好は目立ちすぎる気がするのは僕の気にしすぎだろうか。道ゆく人の注目を集めている気がする。


「全く……。すぐ突っ込む癖は変わらへんな」


 ハッタリがぼそっと呟く。僕にすぐ突っ込む癖なんかないぞ。こっちの世界の僕はすぐ突っ込む奴だったのか?


「そうや。迷子犬事件の時はお前が突っ込んで、ペンキを倒したんや! あっはっは、あれは傑作やったなぁ! おっさんもブチギレとったで!」


「そうか……」


 迷子犬事件の記憶と言ったら、雨でびしょ濡れになった記憶しかない。おっさんをブチギレさせたのか……。申し訳ない、おっさん……。


「ありがとうな」


「は?」


 ハッタリが僕に向かって突然お礼の言葉を言う。気持ち悪い奴だ。思い出話をして、急にお礼を言ってきて、何がしたいんだ。酔っぱらいなのか?


「急に何だよ、気持ち悪い」


「いや、考えたんやけどな。この事件が終わったら……」


「おい! ハッタリ!!」


「何やねん! 今大事な話を……」


「リュ、リュウがいる……!」


「アホ。リュウはさっきからおるやろうが。また記憶喪失にでもなったんか……」


「違うって! 新しいリュウが!」


「は?」


「リュウが2人いる……!」


◆◆◆


——なるほどなぁ


「そんなことで成功者に……?」


「なれるよ。君なら!」


 僕たちは2人のリュウが話しているベンチに近寄り、2人の会話を盗み聞きしていた。この未来から来たリュウの筋書き通りに改変された世界が、あのビッグボスのいない、あかねちゃんと僕も出会わない世界だったのだ。しかし、こんな思い通りに進む事があるんだな。インフルエンサーってそんなに簡単に成功できるのか? インフルエンサー絶対成功メソッドなんてふざけた名前のメソッドで成功できるなんて到底思えないけど……。


——もしかしたらこのリュウってすごい奴なのかもな


 リュウは成功できるポテンシャルを持っていた奴だったのかもしれない。正直僕にとってはリュウはパークで迷惑行為を働いた迷惑客のイメージしかない。あの時逃げられたのを今も覚えている。ビッグボスに捕まえておいてと頼まれたのに逃してしまったのだ。


——今日はもう逃さない!


 僕は手をぎゅっと握りしめた。僕があの時ちゃんと捕まえていれば、今日のこの歴史改変もなかったのかもしれない。あの日の僕の失敗から全てのことが繋がっているのだとしたら……。今日、僕が今日この手でちゃんと歴史を元に戻してやる!


「なるほどな〜。こうゆうことやったって訳や」


——ハッタリ?!


 僕がリュウを捕まえにかかろうとした瞬間、ハッタリがヌッと2人の前に出ていった。そして、華麗にUSBメモリをリュウから奪ったのだ。


——出遅れた!


 くそ、僕がリュウから奪おうと思ってたのに。探偵みたいにカッコつけやがって! 僕に突っ込み癖があるなんて言って、お前だって突っ込んでるじゃないか。


「か、返せよ! そのUSB!!」


 リュウの手がハッタリの方へと伸びる。このリュウは未来から来た方のリュウだ。さっきハッタリがUSBメモリを奪ったのはこの時代のリュウで……。ええい、ややこしい! 10年前のリュウは過去リュウ。未来から来たリュウは未来リュウと呼ぼう。いや、そんなことはどうでも良い。


ガシッ


 僕は未来リュウの手を掴んだ。忘れたことがないあの感触だ。あの日、未来リュウが迷惑行為をしたあの日。話してしまったこの腕。もう離さない。僕はもう離さないぞ、未来リュウ。この腕を捕まえて、僕はビッグボスとあかねちゃんを取り戻すんだ。


「今度は絶対に逃さないぞ、リュウ!」

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