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第23話 in my room

 素敵だなと思った。夢なんかないって言ってたけど、彼は私と同じ夢を持っているのかなと勝手に思っていた。別に好きだったなんて思ってないけど。パークを辞めちゃうって聞いてショックだった。彼と2人でなら、パークをどんどんと良くしていける感覚があった。最後に彼が辞めちゃうって言いに来た時、私は必死に私の気持ちをポケットの中に押し込めていた。


——辞めないでよ、ってどうして言えなかったんだろう


 ツリー点灯式の最中、数秒そのことを考えていた。その数秒のことだった。ツリーの飾りが落ちそうになっていることに気づくのが遅れてしまった。


——あっ!


 そう思ったけど足が動くのが遅れた。それは彼のことを考えていたから。足が遅れた時に後悔した。彼だったら迷わず動けていたのかな……とも思ってしまった。


「危ない!! 下がれぇ!!」


——あ、シャクレさん


 点灯式に参加していたダンサーのシャクレさんが誰より先に前に飛び出していた。意外だった。シャクレさんがこんなことをする人だったなんて。

 

 シャクレさんの指示によって、お客様と私たちスタッフも下がる。しかし、1人だけ逃げ遅れた子どもがいた。


「危ない!! お客様はこの俺、シャクレが守るぅ!!」


——良かった……


 シャクレさんのおかげで子どもは無事だった。ツリーの点灯式の事故は被害者ゼロで終わることができたのだ。ほっ、と安堵した私に同時に後悔が襲う。どうして私は動けなかったのか。安堵するだけで良かったのか。何が世界一のパークを目指す……だ。


◆◆◆


『危ない!! お客様はこの俺、シャクレが守るぅ!!』


 私は自分の部屋で“ツリー点灯式事件”の動画を見ていた。この動画を見かえす度に、自分のダメさに嫌気がさす。


 テレビにシャクレさんが出る度にこの動画が紹介される。その回数だけ私のダメな姿が沢山の人に見られている気がした。


——ヨコイくん……


 あの日、ヨコイくんがいたらと思ってしまう。あの場にいなくても、このことを、私の後悔を話せたらどんなに気が楽になるだろう。大丈夫って、励ましてくれるのかな。


 あの日からヨコイくんは一度も姿を現していない。あの日ちゃんと「辞めないでよ」って言えてたら、違った未来が待っていたのかな。


 自分の部屋に籠る度に、あの日ポケットで握りしめた後悔がもわもわと部屋中を覆う感覚がした。この後悔の部屋から私は決して出ることができない。


『過去を振り返るなよ』


『俯いてる場合じゃないよ』


 どこかから声が聞こえる。でも私には聞こえない。後悔という部屋に閉じこもったままの私には、ただただあの日の言えなかった言葉と出来なかったことが反響しているだけだった。

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