第13話 指切りげんまん
「いやぁ、楽しかったぁ!」
「そうだね……」
僕たちはフードカートで軽食を買って食べていた。流石に“絶望”10回連続はやり過ぎだと思う。誘導のスタッフの人も「こんなに乗る人は初めて見ました」と話していた。あまりに僕たちが乗るものだから、前から一列目二列目三列目と色んな場所で楽しめように毎回違う列に案内してくれた。おかげで様々な恐怖体験をした。1番前が1番怖いかと思いきや、最後列も結構怖い。真ん中も真ん中で違う怖さがあり、ジェットコースターの乗車位置一つで感じ方がここまで変わるものなんだなと思っていた。
「スタッフの人もノリノリで楽しかったねー」
後半はあかねちゃんが「レッツ絶望〜!」という掛け声を生み出し、それが自然とスタッフの人にも定着していた。あかねちゃんがこの遊園地のスタッフの間で、“絶望お姉さん”みたいな変なあだ名をつけられてないことを祈るばかりだ。
「やっぱり90度に落ちていくから、落下が一瞬なんだよね。あれがもっと長く楽しめたらいいのに……」
僕はポテトをひょいっとつまみながら、あかねちゃんの話を聞いていた。フードの味はうちのパークの方が上だななどと考えていると、あかねちゃんが先程までとは違う温度で話し始めた。
「タテノくん、ありがとうね。付き合ってくれて、おかげで本当に楽しいよ」
「え。お、俺も本当に楽しいよ!」
「前にさ、来た時も……」
「あの時は“絶望”に乗らなくて残念だったよね」
「ううん。あの時も今日くらい楽しかったよ。タテノくんのおかげで」
——あ、あかねちゃん……!
僕は猛烈に感動していた。前に来た時はシステム不具合でジェットコースターに乗れなくて悲しむあかねちゃんを楽しませるのに必死だった。楽しいとは言ってくれてたけど、実際はどうだったんだろうと思っていたのだ。
「ね、今日もメリーゴーランドのろうよ」
「うん! のろう!」
「今日は馬から転げ落ちないでよ?」
——うっ!
そう、前回メリーゴーランドに乗った時は僕が馬からバランスを崩して転げ落ちてしまったのだ。あの時は恥ずかしかった。スタッフさんに緊急停止もさせてしまって、迷惑をかけてしまった。
「こ、今回は大丈夫なはず……!」
「はずって! あはは!」
◆◆◆
「これに乗ろっか」
あかねちゃんがそう言うと白馬の上に跨った。僕もその横の馬に跨る。なんだか前よりも距離が近いように感じた。
ゴゥン
少しするとメリーゴーランドが動き始める。馬が上下し、くるくると回転をし始める。
「メリーゴーランドもメリーゴーランドで楽しんだよね。このキラキラとした感じが好きでさ」
そう言うとあかねちゃんは周りを見回す。やり過ぎなんじゃないかというくらい電飾で飾られたそれらは夕焼けに照らされてより一層キラキラと光っているように見えた。
——1番キラキラしているのは君だよ、あかねちゃん
僕は一瞬そう思ったが、前回の反省を生かしてバランスを崩さないようにしっかりと棒に捕まることに集中していた。前回は何か考え事をしていた時にバランスを崩してしまった気がする。僕が集中していると、あかねちゃんが話し始める。
「ねぇ、タテノくん。クリスマスって予定ある?」
「え?」
「あるの?」
「いや、ないけど……」
「良かった。実はクリスマス限定のコースターがあって」
「う、うん……」
「一緒に行かない?」
「い、行きたい」
「……! 良かった……。楽しみにしてるね!」
——え?
——え?
——え?
今何が起こったんだ。クリスマスの予定を聞かれて、空いてて、それで、クリスマスにあかねちゃんと遊ぶ……。それってデート……。
「う、うわぁぁあ!!!」
状況を整理しようとしたタテノくんはバランスを崩し、馬から崩れ落ちる。それに気づいたスタッフさんはメリーゴーランドを緊急停止させ、タテノくんに駆け寄るのだった。
「だ、大丈夫ですか?!」
「は、はひぃ。大丈夫です……」
「もう、何回落ちるのよ! あはは!」
あかねちゃんが笑っている。僕はスタッフさんに申し訳なさを感じると共に、これによってクリスマスのデートがなしになってしまわないように祈っていた。




