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序章 ~優しい人々~

書き溜めを知らず、プロットからそのまま書き起こして投稿してました。鈍い投稿ですが、まったりお付き合いいただけると幸いです。m(_ _)m

 新暦改め、開拓歴元年。


 今が新暦から何年たったのか、正確な年数が分からないため、1から歴史を始める事になった各シェルター。


 いずれ公募で名前は改めるとして、とりあえず開拓が始まった年。ゆえに開拓歴とした。

 

 安直な思考と名付けは父ゆずりな百香である。

 

 なにしろ、やる事は山積みだ。生き延びた人々の健康診断。まだ身体の感覚が怪しく、リハビリを兼ねて、ラジオ体操とシェルター内の整理や確認。その合間に、ちまちまとお掃除。

 

 内部事情を知る者の五割が死亡したため、各部署の筆頭に関係者をおいて、残りは経験者を募集し穴を埋める。

 

 元々高齢化が進んで、人口が落ち込んでいた日本で、六十才以上の殆どの老人が死亡したため、シェルター内の人口は五百万前後となっていた。

 

 不幸中の幸いと言えなくもないが、実はこの中には、多くの妊婦も含まれている。

 

 病気ではないといえ、胎児をかかえた身重な身体では、冷凍睡眠を乗り越えられなかったのだ。

 冷凍睡眠は危険なため、夫婦の営みは控え、期せずして妊娠した場合、中絶が推奨されていた。

 カプセルに入る際も、入る入らないの選択が残されている。

 高齢者や病人は、まず生き延びられない。

 それを正直に話し、シェルター内の居住区を終の住処にする事も出来た。

 しかし、誰も居住区に残る事は選ばなかった。


 ある老人は言う。


「ダメだったとして、文字通り眠るように逝けるんだろ? 皆にかこまれて逝けるなら、本望だよ」


 ある少女は言う。


「生きてるだけの人生なんて嫌なの。奇跡のパーセンテージが残ってるなら、そっちに賭けるわ」

 

 人間は強かった。


 妊婦も同じで、子供と二人で無為に暮らし、置き去りにして先に逝くくらいなら、奇跡にかけます。ダメでも二人で逝けます。....と。


 子供を殺す選択肢は皆無だったようだ。


 そして全てが遥か高みに登った。本人自身の選択だからと、遺族の方は私達を全く責めなかった。


 確かにその通りだろう。しかし、私達には返す言葉もない。


 .....笑って下さい。誰よりも奇跡のパーセンテージを信じたかったのは私達だったんです。


 百香は、鼻の奥がツンとなり、あわてて天井を見上げた。潤む視界を瞬きで乾かす。


 多くの遺体は、そのまま再び冷却処理され、地上の残留放射能が規定値に下がった後火葬する事になった。

 後十数年もすれば、防護服なしでも地上に出られるだろう。


「今年はプランツテロ。来年は野草かな。露草や朝顔も植えて....紫がピンクにならなきゃ、ほぼ安心だ」


 いずれ遺骨が埋葬される場所は、溢れる程の花で満たそう。自己満足なんだって分かってる。それでも何かせずにおれない。


 弱いなぁ。


 鼻を啜る百香に想定外の爆弾が落とされるのは、今から2ヶ月後の話である。




 今日も百香は地上で開拓していた。無造作に掘り返し、ミントの種を蒔く。


 かれこれ数ヶ月。人海戦術の力押しで、人々はシェルター近辺の土壌改良に乗り出していた。


 フォークを突き刺し、テコの原理で土を返す。十五程の人が並んで後ろ歩きしつつ、ガシガシ土を返していく。

 その後、袋をかかえた人間が手を使って種をバラ蒔いていた。

 

 一組二十人程で、東西南北、百組以上が開墾作業に明け暮れている。人海戦術、数の暴力。ゴリゴリ押し押し、力押し。

 

 この2ヶ月で、かなりの土地が緑になった。

 

 機械? ある訳ナス。そんなスペース作るなら、物資詰め込むわ。ガソリンだって備蓄はあるけど、五台のみ用意された周辺探索用の強化ジープ、ガニメデXの燃料です。無駄遣い、イクナイ。


 故に全て人力。数で力押しって素敵ね。


 百香は一息つくと、少し高い位置から周囲を見渡した。

 

 シェルターの入り口から中心に、クローバー。その外周にミント。さらに外周にドクダミ。レンゲもチラホラ混ぜてある。

 シェルターの入り口からここらまで、眼に鮮やかな緑が広がっていた。

 

 テロリストども、半端ないな。


 渇きに強く匍匐性で、大地を覆う植物たちは、保湿性も高く、緑肥としても優秀だ。

 根を張って緑になっても、適当にガシガシ掘り返すと、さらに深く根を張っていく。

 いじめるほど元気になる植物。それが、テロプランツ。

 すでにミントも二周目。そろそろ一周目のドクダミが根を張り、土も柔らかくなってるだろう。引っくり返すか。

 

 初めてシェルターから出た時を百香は思い出す。

 衝撃だった。地表全て、あます所なく瓦礫で埋め尽くされていたからだ。

 

 建物らしき物は何もなく、大小様々な瓦礫が大地にひしめき、所々にある緩かな高陵地帯が、実は風化したミサイル着弾跡だったとは、後日判明した驚きである。


 シェルターに装備された防護服は百万着。男性が中心となって、瓦礫を撤去した。

 

 バケツリレーならぬ瓦礫リレー。

 

 先ほど述べた高陵の深い所に、人海戦術で瓦礫を集め、でこぼこだった周辺をなるべく平坦になるよう百万人交代で、毎日頑張った。

 

 結果、5日ほどでシェルター周辺の瓦礫は撤去され、ちらほらと緑が繁る地表があらわれる。

 

 そう、大地は死んでいなかったのだ。

 

 瓦礫の覆いがむしろ湿度を保ったのだろう。本当に気持ちばかりではあるが、芝のような、スギナのような、極わずかな草が、まばらに大地に根を張っていた。


 安堵と感動の入り混じる複雑な気持ちを押さえつけ、百香は思う。


 明日から開墾だな。


 健気に頑張る緑を掘り返して、新たに種を蒔くのだ。ここまで生き延びた草達だ。根こそぎ引っくり返しても、また逞しく根を張るだろう。


 大戦という試練を乗り越え、慎ましく生きる緑に、再び試練を与えた百香だった。

 

 広がり始めた緑を眺めながら、ニマニマと百香の顔が緩む。そんな彼女の後ろから、けたたましい声が聞こえた。

 

「代行っ、八葉さんが倒れましたっ!」


 男は大きく手を振りながら、呼ぶように百香を手招きする。


 は?


 百香は眼を見開いたまま立ち上がった。 慌てる男が、こけつまろびつ百香に駆け寄る。


「栽培エリアで....っ、苗を間引いてる途中で、いきなり崩れるように。今、医局ですっ」


 防護服の中が白くなるほど息を切らせ、男は百香に、そう伝えた。


「母さんっ」


 まとわりつく防護服を物ともせずに、百香は顔面蒼白なまま、シェルターへ向かってダッシュした。

 

 防護服ごとシャワーで放射能を洗い流し、走るな危険の張り紙が見えた気がするが、眼の端にも止めず、百香は疾風の如く、医局の受付を無視して応急処置室に飛び込む。


「母さんっっ!」


 処置室のベッドで母八葉は、身体を起こしてドクターと話をしていた。

 気鬱げな顔で深刻そうな母の雰囲気に、百香は全身から血の気が下がる。

 ふと顔を上げた母の眼が、入り口の百香と重なるが、母は、つと視線をそらし、顔を背けた。


「母さん....?」


 病気なの? 倒れるなんて、悪い病気なの?


 口を開かずとも分かる百香の表情。それに気づいたドクターが、肩を竦めながら苦笑した。


「大丈夫、おめでただよ」


 は?


「はああぁぁぁ??!!」


百香の思考の斜め上をいく想定外の爆弾発言。


 絶叫が彼女の口を突く。母八葉は顔を背けたまま俯き、首から耳まで真っ赤にしていた。

 

 開拓歴元春(多分) 百香に弟妹が出来る(予定)

つまり、母ちゃんと父ちゃんは、最後の時をイチャイチャ過ごしたと。....リア充め。

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