可奈ちゃん推し (終)
少し寂しい気もするが、彼女の人気が証明されたようで誇らしい気持ちにもなる。しばらくその場に溶け込んで話を聞いていたところ、一人の女性が俺に尋ねてきた。
「もしかして可奈ちゃん推しなんですか?」
「え? ああ、まぁ……一応そうですね」
「同じです! 私は初期から追い続けてて、去年のカーテンコールフェスにも行ったんですよ!」
「え、それ凄いですね!」
「いえいえ! あなたはどうなんですか? 新規ファンさん?」
「一応は……まだ浅いですけど……」
彼女は興奮気味に語り始める。「実は最近、可奈ちゃんが雑誌で密かに恋愛の話をしてて……それがネットでちょっと炎上してるんですよね」
(恋愛……!?)
突然のワードに鼓動が跳ねる。詳しく聞こうとしたとき、彼女の携帯が鳴り出し、話は中断されてしまった。どうやら急用のようで、慌てて荷物を持って去っていく。
取り残された俺は、心臓の高鳴りを抑えきれずにいた。
(恋愛……可奈ちゃんが……?)
思考を巡らせながらグラスを空けると、不意に肩を叩かれる。振り向くとさっきの神田さんが立っていた。
「大丈夫ですか? 顔色悪いですよ」
「いえ……ちょっと動揺してしまいまして」
「そうなんですか。でも、気にしすぎないようにね。アイドルだって普通の女の子なんですから、色々悩むこともあるでしょう」
──普通の女の子か。そうだよな……。彼女たちも人間なんだし、そういう面があって当然だ。なぜ自分は勝手に偶像視してしまっていたのか。彼女たちにもそれぞれ人生があり、喜怒哀楽がある。それを忘れてはいけない。
「ありがとうございます。肝に銘じます」
「どういたしまして。もし何かあればまた話してください」
そう言って神田さんは他のテーブルへ移動していった。彼の優しさに感謝しながら、俺も新たな気持ちで二次会へ臨む決意を固めたのだった。
(よし……今日は沢山話して、沢山学ぼう!)
グラスを空け、次なる挑戦へと歩みを進める。
俺のアイドルライフはまだまだ始まったばかりだ。
(終わり)




