1話 出会い
今日も暇だなぁ。
「あの……すいません」
「ん?」
突然、声をかけられた。
振り向くと、そこには一人の女の子が立っていた。
「えっと……何か用かな? 道に迷ったとか?」
「いえ、そうではなくて……」
女の子は、少し恥ずかしそうにしながら、こう言った。
「私……その……アイドルの矢吹可奈って言います!」
「……え?」
……今なんて言った?
「だから、私……アイドルなんです」
……聞き間違いじゃなかったらしい。
「あ、ああ! そうなんだ! それは凄いなぁ!」
「あはは、ありがとうございます!」
……女の子は恥ずかしそうに、でも嬉しそうに笑った。
「それで、その矢吹さんが俺に何の用かな?」
「あ、はい。えっと……その……」
女の子はモジモジしながら言った。
「私と……握手してもらえませんか!?」
「……え?」
……え?
「あの……ダメでしょうか……?」
女の子が不安そうに聞いてくる。
「いや、別に構わないけど……」
「本当ですか!? あ、ありがとうございます!」
「……どういたしまして」
女の子は満面の笑みを浮かべた後、右手を差し出してきた。俺はその手を取り、握手をした。
「やったー!! 嬉しいです! ずっと憧れだったんです! シンデレラガールズの皆さんの……」
「シンデレラガールズ?」
「はい! 私たちのユニット名です!」
……知らない。
「そ、そうなんだね」
「あ、ごめんなさい! ついつい夢中になっちゃって……」
女の子はハッとしたように口を押さえた。
「それじゃあ、ありがとうございました!」
そして、女の子は走り去って行った。
……なんだったんだろう。嵐みたいな子だったな。
それにしても、シンデレラガールズか……
俺はスマホを取り出し、検索をしてみた。
“シンデレラガールズ” で検索すると、たくさんの情報がヒットする。
「へぇ……モバゲーのゲームだって」
色々調べていると、先程の女の子の写真を見つけた。
『矢吹可奈 CV: 種田梨沙』
これがさっきの子か……可愛い顔してるなぁ。
他のアイドルたちの画像も見てみる。美少女揃いだ。
「……俺もこんな可愛い子たちとお近づきになりたいよなぁ」
んな独り言を呟いていると、ふと気づいた。
あれ? ちょっと待てよ……
なんで俺はあの子と普通に会話してたんだ?
あの子はアイドルで、俺はただの一般人だぞ?
普通、そんな簡単に話しかけてこないだろ?
それに、あの子は俺のことを知ってるような口ぶりだったし……
もしかして、俺は有名人なのか!?
いやいや、そんな馬鹿な!
だが、そう考えると辻褄が合う……
まさか、俺は無意識のうちに芸能界デビューしていたのか!?




