プロローグ④
「あの、日本語喋れるんですか?」
あまりに突飛な状況に、俺は思わず敬語で聞いてしまう。
『いや、これはそういうスキルなので、別に私が日本語ができるわけではないです』
すると、龍の方も敬語で言葉を返してきた。
「あーそうなんですね。で、私は何で、今も宙に浮いているのでしょうか」
俺は龍に飛び掛かったままの状態である。
スキルの力で身体能力を強化したとしても、そんな芸当は当然できず、なにかしら別の力が働いていない限りは起こり得ないことだ。
目の前の龍は宙に浮くスキル?を持っていると思われ、ほぼ間違いなく、俺に干渉しているはずである。
『あっすみません、じゃあ、解除しますね』
龍が軽く上下に頭を振りながら、そう言うと同時に、俺は地面に落下する。
そして、ドシンと大きな音を立てながら、俺は無事着地した。
『流石ですね。私が見かける人間さんはいつも弱そうなのしかいないので』
「いや、俺はここ最近、毎日このダンジョンに来ているぞ」
『あっいえ、私、基本的には寝ておりまして、一ヶ月に一回程度しか目覚めないんですよね』
「そうですか……よくお眠りになるんですね」
『はい、寝るのは気持ちいいので』
そこから会話が途切れてしまい、無言の状況が続く。
(てか、なんで俺は、さっきまで戦っていた龍とこんな会話しているんだ)
さっきまで白熱した戦闘をしていたはずであり、こんな世間話のような会話をしていることの方がおかしい。
「あーさっきまで、戦っていたと思うんだが、もういいのか?」
『そうだったんですか。てっきり、私は遊んでいるのかと』
(龍にとってはじゃれ合ってる感じだったのか)
俺の知っている龍は、確かにもっと強い印象がある。
初撃を防げたのは、運の要素を加味して可能だった感じはするが、その後の噛みつきに対して、先に攻撃できたのは、後になって考えてみれば、不自然な感じもあった。
「それで、どうして俺とたた……遊ぼうと思ったんだ?」
それが一番の疑問である。
ダンジョン内部にいるモンスターというのは、人類、探索者とは敵対関係にあるはずだ。
探索者に友好的に接してきたという例はあるにはあるが、そう多くはない。
トップクラスの強さを誇る、龍という存在が探索者にじゃれつくなど、聞いたことのない出来事である。
『普通に暇だったからですけど?』
(意味わからんぞ)
龍が首をかしげて、不思議そうに言うが、「そうなのか」と納得できるような内容ではなかった。
「じゃあ、俺がダンジョンの外に向かおうとして、ブレスを放ったのは、なんでなんだ?」
『折角、話しかけようとしたら、いきなり逃げたので、とりあえずはブレスかなって』
(軽い、あまりにも軽すぎる)
龍という存在の自由奔放さに、立ち眩みが起きそうになる。
(だけど、助かりそうではあるな)
「じゃあ、俺はそろそろ、家に帰るから。えーっと、ごゆっくりしてください」
俺はこのカオスな状況から離脱すべく、ゆっくりと後ずさりをする。
『だったら、私も連れて行ってくれません?』
龍の言葉に、俺はピシりと石化した時のような感覚が生まれた。
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