第13話 長文すぎるお礼
「連絡は結論から簡潔に。長文になると要点がぼけるし、読む側の負担にもなるの」
オンライン会議の画面の向こうで、部下が「気をつけます」とメモを取った。
仕事中の養母は、今日も無駄がない。
でも、その日のLIMEは違った。
要点も結論も、とっくにどこかへ消えていた。
[LIME:アカネ]
『今日はありがとう』
『通話のこと、びっくりさせちゃったのに優しくしてくれてすごく嬉しかったの』
『変なふうに聞こえてなかったかなとか、迷惑じゃなかったかなとか、あとからいっぱい考えちゃって』
『でも、シュンくんが嬉しいって言ってくれたの、本当に嬉しくて』
『なんだかちゃんとお礼が言いたかったの』
長い!
いや、待って。
長い長い長い!
一通でスクロール入るの初めて見たんだけど!?
しかも内容が全部かわいい。
全部俺のこと考えてる文だ。
心臓に悪すぎるだろ。
『今日はありがとう』だけで終われたはずなのに、
そこから不安も嬉しさも全部盛りになるの、
ほんと恋愛初心者すぎる。
ガチャッ!
「真守くん、やっぱり長すぎたかしら……!」
うわ、来た!
今日は完全に青ざめてる!
送った直後に後悔するの早い!
「お礼だけのつもりだったのに、気づいたらどんどん増えちゃって……」
「あー……」
「重いわよね? 読むの面倒って思われたわよね? 要点がぼけてるわよね?」
いや、
要点はむしろめちゃくちゃわかる。
『嬉しかった』
『不安だった』
『でもやっぱり嬉しかった』
全部わかる。
わかりすぎる。
「別に嫌じゃないと思うよ」
「ほんと?」
「うん。短くなくても、ちゃんと気持ちが入ってたら嬉しいと思う」
大丈夫だ。
少なくとも俺なら、
長いって思う前に、
こんなに俺のことで頭いっぱいだったんだってわかってにやける。
……いま普通ににやけてるし。
「でも、仕事だったら絶対こんなの書かないのに……」
「仕事じゃないし」
「そ、それはそうだけど……」
さっきまで
『簡潔に』って言ってた人が、
恋愛だと一番長くなるのほんとずるい。
「とにかく、返ってくるまで待ってみれば?」
「うぅ……そうよね……」
[LIME:シュン]
『長くても全然嫌じゃないです』
『アカネさんの気持ちがいっぱい伝わって、すごく嬉しかったです』
『そういうの、もっと聞きたいって思いました』
「えっ……」
養母が固まった。
次の瞬間、顔が一気にゆるむ。
「もっと……?」
だめだ。
そこ拾うと思った。
「じゃ、じゃあ、次はもう少し短く……」
うん。
たぶん無理だな。
「でも、ちゃんと伝えたいし……」
ほらもう伸びる気配しかしない!
次はたぶん、
『今日はありがとう』で始まって、
気づいたら八行になってる。
でも、そんなふうに気持ちがあふれて止まらない養母も、
やっぱりかわいくて仕方なかった。




