第48話 妖精修行①
「……優也、ちょっと特訓でもしねぇか?」
「特訓? ……そうだね、わかった。やろう!」
負けないために準備をするのは当たり前だ。負けたら最悪死ぬ、死にたくないから戦う。
守りたいから、戦うんだ。
「で、特訓って何するの?」
「うーん、それなんだよなぁ」
「決まってないのか……」
そう、何をすればいいのか分からない。
本番まで一週間。その間、出場選手は準備期間として休みが与えられる。
だが、あまりにも短い。
この一週間に基礎トレーニングを積んだとしても、結果はさほど出ないだろう。ならばどうするか、それが思い浮かばない。
「「うーん……」」
「……あの。私が修行をつけましょうか?」
そう声を上げたのは、居候の妹(?)であるフィリア。
……そうだ、そうか!
「フィリアは百年生きてる! その分経験があるのか!」
「は、はい……一応は」
「お願いしますフィリアさん!」
「頼む!」
「わかりました、やってみます!」
そうして俺達は、妖精の修行を受けることになった。
彼女の願いで修行場所は「渦巻きの森」となり、一週間そこで特訓する。
昨日ぶりだが、異世界というのを実感する空気感だ。
「こ、ここが異世界……普通の森に見えるけど……でもっ、空気が重いし魔力が練りにくいね」
「ああ。俺も昨日はチャージして一発魔法を使えたからな」
まあ、『閃光の鋭斬』を一発とカウントしていいのかは疑問だが。
「じゃあ、さっそく始めましょうか」
「おっし。何からやるんだ先生?」
「そうですね……時間が無いようですし、実戦でいきましょうか。先ずは私に一発入れてください。話はそれからです」
「「えっ」」
「安心してください! 最大火力はレイマに及びませんが、継戦能力はあるはずですから!」
「何も安心できねぇ⁉」
「やばいよ兄さん……絶対に選択ミスだよ!」
フィリアは短い木の杖を手に構え、それを唱え始めた。
「【渦中の火元ありて、悠久の輪廻へと誘う迷いの森。疾走の疾風をここに、弓の弦は弾かれた】!」
「詠唱魔法⁉」
「初めて見た……」
俺達の世界で詠唱は無用の長物だ。魔法の最適化が進んだ現代では、イメージ次第で殆どの魔法が使える。
無論才能の有無が関係してくるが、ここまで長い呪文やら詠唱は聞かない。
「【穿て、グラムアーサー】――――――【グラディス・イグニア】!」
「⁉」
放たれたのは七方向から接近してくる炎のレーザー。
……マズいなコレ。
「《刀剣魔法》――――――!」
「《障壁魔法》――――――!」
俺達はそれぞれ、剣と盾を構築してそれを防ぐ。
優也の盾は硬い。そう簡単に破られる筈はないが――――――。
問題は俺だ。
「これっ、追尾してきやがる!」
「急いで斬らないとあぶないですよー」
「わーっとるわァ!」
《乱撃六閃》。
インプットしておいたパターンを状況に合わせて発動する。
六連撃によって叩き落とし、何とか難を逃れた。
「まだまだいきますよー!」
「ウッソだろお前⁉」
「に、逃げるよ兄さん!」
砲撃魔法に正面から突っ込むのは分が悪い。
やるなら不意討ちだが……。
「ほらほらー、どこに隠れたんですかー?」
「「……っ⁉」」
あまりに濃い弾幕の密度で俺達は身動きが取れないでいる。
妖精式鬼畜特訓……流石にこれは、予想外だった。
ていうか絶対ダメだろこのやり方。バカスカ撃たれて逃げて隠れて……コレが何の役に立つって言うんだ。
「兄さん」
「んっ?」
「やろう。こんな理不尽にも抗えなきゃ、母さんを守ることなんて出来やしない!」
「――――――!」
ああ、そうか。
フィリア……お前は俺達を試しているんだな。
俺達が諦めるか、抗うか。絶対的強者を前にして、一歩を踏み出せるかを。
「ああ、やるぞ優也!」
正面から勝負を挑むのは最後の手段。
頭を回せ、思考を止めるな。
考えろ、足りない頭を使って策を立てるんだ。
考えろ、考えろ、考えろ、考えろ……!
……――――――考えろ……!
一つ、思いついた。
「即興。俺らですら使ったことがない技を使う」
「……本気?」
「本気だ。ありえないことをやるんだ……アイツの弱点は、長く生き過ぎたこと」
「生き過ぎた……?」
「アイツは森で長い間モンスターを狩ってきた。つまり、狩る側に慣れきっているんだ。付け入る隙は、その一点!」
「そうか……狩人の視点で、彼女をハントする――――奇抜な方法の一発勝負。不意打ちで勝負を決めるってこと?」
「そうだ。俺の『閃光の鋭斬』はチャージの隙と発生音がデカすぎる……だから使うのは、一工程魔法もしくは、剣技」
「分かった。それでいこう、兄さん……やれやれ、その頭の回転をいつも出してくれれば」
「うっせ」
チャンスは一度きり。
それ以降は警戒が強くなるはずだ。一発勝負の攻防で、全てを決める。




