第24話 さあ
《白き心の遠い石》、その効果はステータスの強化。
制限時間はたったの10秒。
――――――――――――――――――充分。
「いくぜっ!――――――うおっ⁉」
一歩踏み出しただけで突進したかのように前進してしまった。
レベルが上がった時とも違う、こんな感覚初めてだ。
まるで自分の身体に有り得ない力が流れ込んできたように……!
「せあっ!」
そんなこと、考えている暇はないよな!
「だらぁ―――ッ‼」
斬って斬って斬って斬りまくる!
『……ッ!』
「寡黙になりやがったなぁ!」
まだだ、まだ……速く!
もっと、もっと速く!
「ハァッ‼」
片手剣単発突進技、ソニックリード。
突進によってボスの背後に回り、またもやラッシュを再開する。
「せいっ!」
残り7秒……間に合え!
敏捷だけじゃなく筋力も向上している筈だ、これでやれなきゃ全部終わる!
楽しむんだろうが、緒方玲真!
◇◇◇
「……すごい」
私には、彼が勇者のように見えた。
助けられたのもあるだろうけど、彼の戦いを見て―――昔の知人を思い出す。
いいや、知人なんて呼び方じゃおかしい。
私の大切な人。
その人と彼の姿が重なった。
彼の剣筋やあらゆる動き……その全てが、あの人を彷彿とさせる。
「……――ホワイト……」
「アリスさん……!」
私が所属するクランの代表、アリス。
細剣使いの女傑で、攻略連合軍でも屈指の戦闘力を有する――――――。
でも、この戦いには踏み込めない。
あまりにもレベルが違う。数値的なものもそうだけど、心の持ち方……彼の戦う意志には勝てない。
これが私の弱さなのだと実感させられる。
「……彼が、マオ」
代表の呟きはどこかおぼろげだった。
見ている場所が違うような違和感を覚える。
「ええ、私たちの恩人ですよ。彼が来てくれなかったら、今頃……」
「そう……そうね。ああ、本当に白い……」
「…………?」
白い?
今の彼は黒一色の装備で、どこにも白なんて見当たらない。
髪も瞳も真っ黒だ。
いったい何が……。
「……でも、まだ黒い」
「アリスさん?」
「いいえ、気にしないで」
もしかして、マオさんと代表は知り合いなのだろうか。
それ以外考えられない口ぶり……でも、何だろう。
「…………」
「どうかした?」
「…………いえ」
何だか胸がズキッと痛む……。
どうしてだろう。
「――――――っ」
◇◇◇
「不味った……!」
予想以上に、速い!
というより反射してきやがる! 俺の攻撃を簡単に払いやがるぞ!
「クッソ……ヤバい、効果が切れる……!」
『……』
最上段――――――。
「双錬斬魔っ…………!」
パリィ成功……だが、もう後がない。
これ以上の技なんてないぞ――――――。
「クソがっ…………!」
ああ、俺……努力した気でいたんだ。
ただゲームの中で戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って……それだけで強くなったと勘違いしてたんだ。
本当に強いやつは、最初から強い。
みんな赤ん坊から始まったっていうけど、誰かに助けられたというけど。
俺は少し、違うと思う。
強さって言うのは、《結果》だ。
過去なんてどうでもいい、要は今勝てているかどうかなんだと思う。
だって、肝心なところで負けたら意味がないじゃないか。
強く生きようとしても、それが心に突き刺さる。
なりたいのは、何だ。
目の前に立ち塞がる、高い高い壁。
『さぁ、君はどうするかな?』
――――――高い壁……だから、何だってんだ。
俺はどれだけ傷ついても、諦めるつもりはねぇぞ。
その壁に梯子が無いのなら、俺はその壁をぶっ壊す。
斬って、殴って。俺なりのやり方で常識なんて捻じ曲げてやる。
『――――――っ⁉』
ボスの胸部を、投擲された槍が貫いた。
投げたのは、ホワイトさん。
これが最後の隙。最後のチャンス。
「…………………………うぉおおおおおお――――――っ!!!!!!!!!」
『―――ッッッ!!!!!!!』
ボスより一瞬早く、俺の身体が動き出した。
しかし、それにも反応してくる。
騎士剣と片手剣が衝突し、宙で火花が散った。
儚い破砕音とともに二刀の剣が崩壊する。
俺がなりたいのは、主人公だ。
考えるよりも早く、俺は《黒鉄の片手剣》を実体化。そして発動速度が最も速いスキル《インパルス・ヴォーパル》を放った。
「せぁああああ――――ッッッ!!!!!!!」
『…………………………』
ボスのHPが全損し、その肉体はポリゴンとなって霧散する。
コングラチュレーション、と表示されたのを見て全身から力が抜けてしまう。
「…………やった」
倒した実感のないまま、俺は上へと拳を突き上げる。
爆ぜたような歓声が鳴り響くが、俺の耳には酷く遠い場所のように感じた。
明日は私情にて投稿致しません。




