第19話 ありがとう
「どうぞ、召し上がれ!」
「おぉっ……‼ いただききます!」
出てきたのは、コース料理さながらの食事達。
この世界で食べる食事といえば乾燥パンやら具の少ないシチューやら微妙なものばかりだった。
現実の家で食べる母の味が好きなせいか、それが酷く苦痛に感じたものだ。
でも、この料理は違う。
シチューには具が沢山入っているし、サラダやチキン、豚等……。
飽きないメニューばかり!
「ホワイトさんはスゲーな!
こんなに料理が作れるなんて! しかも戦闘も強いしよ」
俺は戦闘しか能がないから羨ましい限りだ。
「いっ、いえそんなこと……。私、ある程度一人でやれるように育てられたので……」
「へーっ」
お嬢様となるとそういう家もあるのだろうか。
未来の指導者になれ、的な。
「…………でもあまり、他の人に披露できる機会がなくて……マオさんが喜んでくれて良かったです」
「そうなのかぁ。おっ、これも美味い!」
料理かぁ、優也が得意なんだけど……俺はそこそこ。
得意料理は卵焼きとサンドイッチね。
「ふふっ」
「んっ、どうした?」
「いいえ、ただすごく美味しそうに食べるものだから……」
「だってウメェから! 凄いと思うよ、何でも出来るの!」
彼女が笑ってくれる、そのためならちゃんと……美味しく頂こう。
味わって。
「いやぁ美味かった。ありがとう!」
「…………お礼を言うのはこっちの方ですよ」
「えっ?」
「ああっ、気にしないで下さい。
よかったです、喜んでもらえて……あの、実は少し聞いてもらいたい話があって……いいですか?」
「ん、いいけど……」
「私、ソード・オブ・シャリアっていうクランに入ってるんです」
「えっ! 入ったクランってシャリアだったのか⁉
それは凄い、よかったなぁ」
「そう、何ですけど……私、少し悩んでるんです」
「悩み……っていうと、クランの人と仲が悪いとか?」
そういうことは仕方がない。
俺だって今までのゲームでも何回かクランが空中分解したからな。
主に色恋沙汰で。
「いえっ、そういう訳じゃないんですが……私、実力が足りているのか不安なんです」
「実力? 今日見た限り全然強いと思うけど」
「…………私は前に似たような世界に居たことがあります」
「似たような世界……」
ニューワールド・ファンタズムに似た世界――――それは恐らく、フルダイブ技術のテストソフトだろう。
一般人には公開されていないが、ホワイトさんのような貴族民はプレイする機会があったのか?
だが、それなら何故――――――?
「その世界ではもっと、私は強かった。
今とは比べ物にならない程、強くあれた。それこそ、今の貴方のように……」
「俺、みたいに……?」
「はい。でも、今ではあの時みたいに動けません……システムが変わったせいなのか、
それとも……私が変わってしまったのか。
あの時のように動けないのか、そう考えてしまって」
「………きっと、大丈夫だよ」
「そう、ですかね……」
ああ、きっとそうだよ。
「ホワイトさんの剣も、槍も、綺麗だった。
それにまだゲームが始まって二ヶ月だぜ? まだまだこれから、強くなればいいさ!」
「これから……でももし、私に時間がないと言ったら、どうします?」
「時間が、無い?」
それは、まさか……。
「病気とか――――――」
「もし、もしです!」
「…………そうだな。でも、変わらないと思うよ。
人はいきなり強くなったりしない。
例え人に飛躍したように見られても……それって、積み重ねてきた結果のことなんだと思う」
「結果……やっぱり、積み重ねが大事ですよね」
「そうだよ、何事も経験しないと出来ないさ。
大丈夫だよきっと。
ホワイトさんが諦めなければ……ね――――――アンタもやろうぜ、ゲームってやつをさ」
この世界は所詮お遊び。だったら、それに全力を尽くそうじゃないか。
『そうだ、―――はいつだって一人じゃない!』
「…………?」
「どうかしました?」
「いやっ、何でもない」
気のせいか……今、何か声がしたような――――――。
「…………マオさん、私……頑張ってみます」
「ああ、頑張れ!」
「…………だから、マオさんも頑張って、楽しんで下さいね。
私、応援してますから!」
「…………ああ」
そうか……楽しむ、か。




