第85話 スキルとは
2人にスクトゥムが協力してくれることを話すと、いぶかし気ながらも檻のそばに来てくれた。
「本当に私たちに手伝ってくれるのね。罠だったら容赦しないよ?」
『そんなことないっす! 僕は怒っているわけですよ! いたいけな女の子になんてことするんだって! ちきしょう! リビングメイルめ! 許せねえ!』
意気込むスクトゥムをアオは冷めた目で見つめていた。
「えっと。スクトゥムさんはパメラさんと交渉したいそうですよ。体の操作には興味がないけど、ここでやりたいことがあるらしく」
『ああ! 言わないで! こういうのは印象が大事だから!』
必死で取り繕うスクトゥムとアオを呆れた目で見る2人だった。
「私たちが必死でヒントを探してる間に仲良くなっているし」
「でも、ヒントになりそうなものはなかったから仕方ないね。えっと、檻はどうやって開けるのかな? カギとかもないようだけど」
どうやら2人はスクトゥムの同行を認めてくれるらしい。ほっとしたアオは、檻に近づいて鉄格子を握った。
『えっと、アオくん?』
「カギがないんなら仕方ないですよね。ちょっと下がっていてください」
2人とスクトゥムは不思議そうにしながら離れてくれた。アオは深呼吸すると、鉄格子を握った。そして大きく息を吸い込むと。
「があああああああああああああ」
力の限り、鉄格子を壊そうとした。掛け声とともにどんどん広がる鉄格子。鉄格子が変形し、檻には人一人が通れるような隙間が難なくできてしまう。
『おお! さすがアオくん! この鉄格子! 僕が何をしても壊れなかったのに!』
「これが虎の力・・・。鉄格子を簡単に広げるなんて」
「ほら! 檻が治っちゃうかもしれないから! 君も速く出なさい!」
パメラに言われ、慌てて檻から出るスクトゥムだった。
『いやぁ。やっぱ檻の外は空気がおいしいや! 正直、することがなくて暇だったんだよね。檻の中だと何もすることないし』
「でも、いいの? 何もやることがないのは檻の外でも同じでしょう? 本当はパメラの身体を手に入れようとしてるんじゃないの? そうなったらさすがに許さないけど」
いぶかしげなケイに、あわあわと首を振るスクトゥムだった。
『だ、大丈夫っす! 檻から出ればなんとかなる! それでゲステレからデータをダウンロードできれば、こっちでゲームとかできるようになるし! あれは、もともと僕たち天族のための魔道具ですしね』
「スマホのこと? ってか、ダウンロードって何?」
胸を張るスクトゥムをいぶかし気に見るアシェリだった。
『へへっ。あれはゲステレっていう魔道具で、なんとこの世界で取れた魔石から作られた、高度な魔道具なんですよ。皆さんたちの世界のスマホとよく似た性能があるんですよね。さすがにインターネットとかはできないけど』
そう言うと、スクトゥムは身振り手振りで説明してくれた。
『この塔に接続すれば最新の機能に加え、僕らの一族の能力を使えるんです。あ! もちろん僕は皆さんを傷つけようなんて思ってないですよ』
「さすがにこの場でそんなことさせないけどね。でも、あなたたちの一族の能力? 何かスキルでも見せてくれようって言うの?」
いぶかし気なケイに、笑いながらちっちと指を振るスクトゥムだった。
『僕たち一族の能力は『落とし込み』っす! これは、相手の能力をコピーして自分でも使えるようにする能力でした。使うのに相手の許可がいるし、落とし込んでも本来の能力の3割くらいしか威力が出せない。しかも相手の力はそのままっていう矮小な能力だったんですけど、僕らの祖がある魔族と交渉したことでものすごく有能な能力に変わったんっす!』
怒涛に説明してくれるスクトゥムに、アオたち3人は圧倒されてしまう。
「ある、悪魔?」
『その悪魔はリブラリ。古くから存在する巨大な悪魔で、何にもしない、毒にも薬にもならないような悪魔です。でも、この悪魔には特徴があって、僕の世界のあらゆるものの情報を集め、それをため込んでいくんっすよ!』
唾を飛ばしながらスクトゥムは説明を続ける。
『リブラリが得た情報は膨大で、僕ら天族が力を使えば様々な情報を得られるんっす! ポイント…、まあ魔力みたいなもんっすね。ちょっと違うけど。それさえ支払えばゲームだって落とし込むことができる! これがあればここで無限に遊べますよ! 大きな画面とかもポイントを払えば呼び出せるし』
「ちょっと待って! それじゃあスキルって言うのは!」
きょとんとしてケイを見るスクトゥムに、真剣な顔になるアシェリ。ごくりとつばを飲むと、静かな表情で言葉を続けた。
「そのリブラリっていう悪魔から、技術をダウンロードしているってことね」
『え? あ、そうっすね。そんな感じかな? 塔はリブラリとつながっていて、塔とゲステレをつなげることで、リブラリからスキルを『落とし込む』ことができるんすよ」
スクトゥムの説明に、ほうと息を吐くアオだった。
「つまりスキルって言うのは、あなたたちの力を使ってリブラリから能力をダウンロードすることを言うのね」
『そうっすね。なんでも過去の偉人が使った技術を落とし込むことでその技や魔法が使えるようになるらしいっす。でもいきなり細かい能力は落とし込めなくて、少しずつ体を慣らしていく必要があるんっす。それがレベルかな? レベルを上げるということは僕らの世界の魔力に体を馴染ませるということでもある。レベル周りのことはゲステレで制御してて、いきなり難しいスキルを落とし込めないようになってたりします。土台もないのに高レベルの能力を使おうとしても発動しなくて、かえって暴走することもありますから』
スクトゥムの説明で、スキルにいろんな能力があることの理由が分かったような気がした。
「じゃ、じゃあポイントっていうのは・・・」
「!! 待って! なんか来る!」
さらに質問を続けようとするケイをアオが遮った。アオの耳は、この部屋に突撃してくる何者かの足音を拾っていた。
あっという間に臨戦態勢になる2人だった。アオとスクトゥムも慌てて彼女たちに習う。
「来ているのは鎧? リビングメイルが、こっちに来ている?」
「みんな、油断しないでね。こういう時はパメラがすかさず前に出てくれるんだけど、今は私で我慢して」
そう言って前に出てくれたアシェリだった。レイピアを握る手は震えているけど、ケイたちを何としても守ろうという意気込みが感じられた。
足元は大きくなり、そして部屋の前の扉が音を立てて開かれた。現れた人影を見て2人が絶句した。アオにとっても驚きだった。
その人影は、大きな鎧を着たパメラの幼女だったから。
「パメラ!」
『動くなよ。動けばこの女がどうなるかは分からんぞ。この女の命は私が握っているのだからな』
女のような声だった。でもパメラとは声が違う。その証拠に、鎧をまとったパメラの口は動いていない。
鎧が、リビングメイルがアオたちに話しかけているのだ。




