第二話 金の支配の元に・・・
サチと仲良くなったのは、エイジと別れてすぐだった。暗闇のどん底に突き落とされたかのような失恋の日々・・・そんな私に、
「どした?ミズハっち?死にそうな顔してますけど〜」
普段はまったくグループも違い、話なんかほとんどしなかったサチが急に私に話しかけてきた。最初は警戒心を持っていた私も、まったく裏表のなく、努めて明るいサチに心を開いていった。死をも覚悟し、かみそりを左手の手首に通したこともあった。そんな私にとって、サチと一緒にいることで、傷ついた手首にバンソウコウをはられているようかに感じたのだった。
ちなみに後に聞いた話。何であの時私に話しかけたの?とサチに聞いたら?
「えっ?全然覚えてないんだけど・・・多分、なんとなく・・・かな?」
まったく・・・サチらしい。
サチの裏の仕事・・・それは、今はやりの?援助交際。始めた理由は簡単。面白そうだから。サチは良くも悪くも面白いの一言で判断して動く。そういう私も、サチに誘われて援助を始めた。私の理由は単に、私を救ってくれたサチが勧めてくれたから。そして何よりどんな人でも男の人のそばにいたかった。それだけ。最初に聞いたときは確かに大丈夫かなと思った。でも私はサチを信用している。だから始めることにした。だって他に信用できる人なんてもういないんだもの。
最初の客はどこかの会社の役員かなんかだった。私を見るなり勝手に興奮して、あっと言う間に事は終わった。それで2万円。初めてお金をもらった時、私はそれまで働いていたコンビニのバイトをやめることにした。ほんの1時間我慢するだけでバイトの4日分稼いでしまったからだ。
それからもサチの紹介により、私の客は途絶えることがなかった。私はそれでよかった。少し我慢して大金を手に入れる。お金を手にしている時、知らないおっさんに抱かれている時、私はエイジのことも忘れることが出来た。いや、心の中はあの時から変わっていないのかもしれない。本当は泣き崩れたあの場所から一歩も進めてはいないのかもしれない。それに気づくのはもっと後になってからだった。