第三話 弾む話と一つの契約
そんなある日、今日もまたいつものようにサチの紹介で一人の男の相手をすることになった。駅のコーヒーショップの前で待ち合わせていると、そこに若い男の人がやってきた。私を見るなり駆け寄ってきて、
「ミズハさん・・・ですか?」
と聞いてきた。まるで恋人同士の待ち合わせのようだな。
「そうですけど・・・」
戸惑いながら答える私に、
「よかった。会えた。」
と飛び切りの笑顔を見せた。それは、誰が見ても援助の相手との出会い方ではないだろう。私は大笑いしてしまった。
「で、どうします?」
笑いも収まった私が、彼に聞くと、彼は、
「もちろん、ホテルに行きましょう。」
とさわやかに答えた。ああ、やっぱりな、私は軽い失望感と諦めが混じった思いを伏せながら、彼とホテルに向かった。
ホテルに着いて、早速シャワーでも浴びようと服に手をかけると、彼が、
「ちょっと待ってください。」
と言って私の手を掴んだ。なんだよと思いつつ彼を見ると、
「今日は僕とそういうことはしなくていいんです。僕とお話をしてもらえませんか?」
と言った。きょとんとする私を尻目に彼は冷蔵庫のジュースを取り出し、私に一本渡した。 「エッチしないの?お金は・・・」
「それはきちんと支払います。心配しないで。」
それならまあいっかと思いつつ、本当にくれるのかなと心配になったが、とりあえず口にしたジュースでそれ以上言葉が出なかった。
それから彼と二人でベッドに座り、たわいもない話をした。私は学校のこと、うちの家族のこと、前のバイトのこと、そしてサチのこと。エイジの話はしなかった。だってまだ思い出にはしたくなかったから。彼は破天荒なサチの話を気に入ったらしく、特にファミレスで男の人にタンカを切った話に大笑いをしていた。一方彼・・・その時に初めて名前を聞いたのだが、ユウタは、歳は私の一こ下の15歳。だが、体が弱いらしく今は学校に通っておらず、通信を受けていること、親たちは医者をやっているらしく、家にはいつもお手伝いさんしかいないということ、将来は医者ではなく弁護士になりたいということを話してくれた。
今日初めて話をしたわりには話がよく合って、私は思ったより楽しかった。と言っても自己紹介以降ユウタはほとんど聞き役になっていたのだが・・・。約束の時間もきたので帰ろうと支度をしていると、ユウタはお札を二枚私に渡した。
「楽しかったし、お金いいよ、いらない。」
断ろうとすると、
「約束だからね、受け取ってよ。その代わり、次も僕の指名を受けてくれない?」
彼はそう言ってさらに二枚のお札を渡してくれた。お医者さんの家だし、お金持ちなんだろうな、私は断るのもバカらしいのでそれを受け取った。
こうして、ユウタと私のちょっと変わった援助交際が始まった。




