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内務局員アンナはお掃除をがんばります!  作者: 朝日 橋立
一章め 内務局員アンナです!
3/10

三話め 内務局のお仕事です!

ちょっと今回はグロめです。

具体的にいうと、性的描写の比喩があります。

 今日も今日とて曇った空を見上げる。

 もうすぐ雪が降り始めるだろうか?

 そう考えると、今日の仕事終わりが楽しみだ。

 今日の仕事は孤児院への潜入だった。


 聖フランコ孤児院は旧体制時代の名残らしい。

 ナスターシヤさん達の捜査も芳しくなく、私に潜入しろと命令が下りた。

 というのも、私は年齢も年齢だから容易に孤児院へと潜入できるのだ。

 実は今年で十一歳になる訳だからね。


 さて、目の前で椅子に座る女性はシスターさんのような調子だ。

 宗教的なものは身に着けていないが、何だか目の奥に厭な光がある。


「これまでどうやって過ごしてきたの?」


 彼女は恐る恐るというように聞いた。

 全く私を疑っている様子はない。


「えっと。親戚のおじさんのお家で」


 拙いように言葉を並べる。

 頭に思い浮かべたのは初めて逮捕したおじさんである。

 彼はいけ好かない奴だった。

 私を連れ込んですぐに殴られた驚きは忘れられない。


「そこで沢山叩かれて、怖くって……」


 この渾身の演技は決まったと思い、シスターさんの方を見る。

 彼女は同情するように目に涙を浮かべている。


 この演技の為に腕につけた打痕を彼女にちらっと見せる。

 まあ、というように口を覆うのだから面白い。


 これはあのおじさんに殴られた意義もあったなと思う。

 ちなみに、そのおじさんにはお酒も飲まされそうになった。

 ヤバいなと思って銃をばんっと撃つと、すぐに大人しくなったので私に銃の素晴らしさも教えてくれた。


「もう安心して。ここは新しい家よ」


 シスターさんは私を抱きしめた。

 それに身体を震わせる。これは驚いたためだった。


 手の先に銃の存在を認識してから、弱く抱き返す。


 ……服が随分とさらさらしている。絹だろうか?

 この人は善良に思えるが、違うのかもしれない。

 実際今見てみると、肌艶も良い。


 観察をしていると、シスターさんは満足したのか私の手を引いて歩き出した。

 孤児院の中は質素というよりも、金欠という様子が強い。

 廊下の壁紙の一つに、不自然に綺麗な箇所があった。ちょっと前までは絵画があったのだろう。


「院長先生と面談をしましょう。きっと受け入れて頂けます」


 シスターさんは私を院長室と書かれた部屋に通した。

 ここは成金趣味を感じた。

 お金の流れがよく分からない。


 院長先生と呼ばれた男はこちらを一瞥すると、分かりやすく笑顔となった。

 私が次に絵を描くとき、彼を参考にすることだろう。


「君、名前はなんて言うんだい?」


「えっと、アンナです。ずっとおじさんの家に居て、それ以外は分からないです。ごめんなさい」


 大人しく本名を名乗ることにした。

 嘘の中に真実を混ぜた方が信じられるらしい、という言葉を思い出したためだ。


 シスターさんが院長さんに耳打ちをした。

 彼は悲し気な顔をすると、私を抱きしめた。

 私は大体肩にかかるくらいに髪を伸ばしているのだが、彼は私の髪をその手で掬った。


「困ったことがあったらおじさんに頼りなさい」


 院長さんは耳元で囁いた。

 いまだ彼は髪を撫でている。


 私自身、こういった人種は得意ではない。

 母のお客さんを思い出すためであるが、仕事だからある程度我慢をしないと……。

 そう! 我慢して、終わったらまたクッキーでも買って帰ろう!

 よし、やる気が出てきたぞ。


「部屋に案内してあげましょうか」


 シスターさんがそう言うまで、私は院長さんに抱きしめられ続けた。

 その間何度か銃を触れたが、これは盗まれていないかを確認するためだった。


 案内された部屋は六人部屋で、他の五人の子供たちも揃っていた。

 顔を見ると、とても苦労してそうだなぁと思う。


「アンナです。しばらくお願いします」


 子供だけになった部屋で頭を下げる。

 全員が私を遠巻きに見ていた。

 仲良くはしてくれないらしい。少し悲しい。


 ……とりあえず夜に院長室に潜入しようかな。

 何か見つかるといいな。ここは少し気が滅入ってしまう。




 *




 闇夜に紛れて院内を歩くのはそう、私です。

 何だかこういった所の夜は怖くてあまり好きじゃないなって思う。


 キシキシと小さくなってしまうのは床が悪いだろう。

 これでバレてしまったらと考えると冷や冷やする。


 ……最悪はもう銃を撃っていいだろう。

 本来の計画では汚職の証拠を見つけて、外で待機してる局員と合流するというものだ。

 しかし、臨機応変に対応することが必要だろう。


 銃を確認してから院長室の扉を開ける。

 静かな室内に安堵してから電灯をつける。


 室内の沢山の引き出しに、やはり溜息が漏れる。

 仕方ないと割り切って資料に適当に目を通し、外れを投げ捨てることを繰り返した。


 結果としてそれっぽい資料はなかった。

 人身売買か売春の斡旋とかが見つかると思ったが、それ相応の隠蔽をしてるらしい。


「何本骨折ったら吐くかな」


 面倒になって院長さんを探すことにした。

 資料を吐かせるか、あるいは認めるまで頑張ってみようか。


 こんな簡単な解決策があったのに、どうして無駄なことをしていたのか……。

 内務局らしい方法で解決が出来たのに。


 疲れた疲れたと、思いながら部屋を出たところで、視界が回った。

 電灯が視界に映っている。


 院長さんの顔がぬっと現れて、押し倒されたことに気付いた。

 なるほど。どうやら警戒を忘れていたらしい。

 これは大変だなと思う。


「驚いたよ。会いに行ったのに」


「私も驚きましたね。どいてもらえますか?」


「どうしてさ」


 これは困った。

 ……手は動かせるし、いけるね。


「もう一度言いますよ。善良なあなたの隣人として。どいてくれませんか?」


 院長さんは何も答えなかった。

 二度銃声が響いた。私がいえるのはそれだけである。




 *




「無事解決してよかったですね!」


 暗くなった空からは雪がしんしんと降っている。

 指揮をとってるナスターシヤに声をかけた。


「大丈夫だったの?」


 彼女は心配するように声を発した。

 無事情報は手に入れたために頷いた。

 今回は人身売買と自白も引き出せたのだから万々歳だろう。

 多少の反省文は免除されるはずだ。


 それに汚れを排除できたと考えると、清々しい気分ですらあった。

 私はやはり掃除が好きらしかった。


 シスターさんが連行されているのが見えた。

 彼女と目が合う。

 何だか恨めし気な目に思えた。


 善良な人がそのような目をすることは理解ができる。

 でも、善良でない彼女がその目をするのが不可解だった。


「どうかしたんですか?」


「お前を呪ってやる」


 短い言葉にやはり不可解は深まる。

 善人が一度の悪で裁かれるのに、どうして悪人が裁かれないことがあるんだろう。


「本当に厭な汚れだなぁ」


 そんな言葉が思わず口から出ていた。

自重したのですが嫌な要素がだいぶ残りました。

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