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内務局員アンナはお掃除をがんばります!  作者: 朝日 橋立
三章め 西方方面軍ですよ!
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二十一話め 平穏な生活です!

 ゆったりと紅茶を淹れてから書類に目を通す。

 これに書かれたものと言えば、何がこの小隊に与えられたとかそういったことばかりである。

 たいして前の基地と変わらないこれらの書類に、少しばかりの嫌気が差しつつも暖炉へと目を向ける。


 サンクト=ピーテル軍管区旗下の小隊に移ってからというもの、始まった戦争ではこの小隊は戦闘行為を行っていない。

 これは何か邪な理由があった訳でも、そして私の卑怯、臆病によるものではない。

 駐屯部隊というのがほど近い。


 先鋒の部隊は元々こっちの軍管区の部隊が担当して、結局私たちはバックアップ、後詰の部隊である。

 しかし、遊ばせているのもということなのだろう。

 私たちは住民の管理もほどほどにしていた。


 ……ほどほどである。

 パトロールという名の買い物であったり、世間話に過ぎない。

 これらはまた別の部隊の本職であるのだからね。奪うわけにはいかない。


「はあ」


 大きくため息をついてから上着を手に取った。

 つい先日ピョートル中隊長から頂いたこれは、あんまり暖かくはないのだが折角の貰い物だ。ただ捨てるだけではもったいない。


 貰った家から出て、見慣れたご近所と挨拶をする。

 徴収された家に来た外国人を受け入れてもらえるのは嬉しいが、しかしそう単純なものでもないだろう。警戒するに越したことはない。


「数はそろってますか?」


「ああ、ヴロンスキー少尉。数えたところ問題はありません」


「なるほど……。あれは?」


「さあ? こちらには載ってません」


 軍曹の書類を見ると、私が知っていることばかりしか書いていない。

 こんな沢山の何かを納入する予定は知らないのだが……。


「失礼。アンナ・ヴロンスキー少尉です。これは?」


「ヴロンスキー少尉、申し遅れました。輜重部隊のロン曹長です。こちらは前線部隊への補給物資です」


「補給物資ですか? 現地から徴発したものでどうにかなってると聞きましたが」


「……失礼します」


 曹長は小さな声で説明を続けた。

 少しこそばゆいので突然はやめてほしいものだ。


「どうやら旅団規模の戦車部隊が現れたらしく。……所属はおそらくジェールです」


「なるほど……。あちらからの宣戦布告はなかったと記憶してますが」


「バトル陸軍に巧妙に偽装されているみたいです」


「はあ、撃滅したものが出てくるですから、ほぼ確定したようなものですか」


 戦争の最初期の辺りだろうか。

 一個旅団の戦車部隊を撃滅したというのを噂で聞いた。

 実際連戦連勝を続けているらしく、それも事実なのだろうと勘繰っていた。


「この街はどれくらいで出ます?」


「そうですねー。馬次第です。少々疲労も溜まっていて、おそらく今日明日では難しいです」


「了解です。何か困ったことがあれば言ってください。ある程度手助けします」


「それはありがたいです」




 *




「うわー、寒いですね」


 手袋の先の冷気に、顔を顰めながらお茶を淹れた。

 席に座ったケーレルさんは、お茶菓子を口にしている。


「いやー、冬に戦争なんてありえないよ、ほんと」


 彼は文句を、それはそれは嫌そうに口にする。

 この街に駐屯する駐屯部隊の一つは彼の小隊だったのである。

 これは中々の僥倖で、学生時代の話で花を咲かそうと計画したのだ。


「最近はほんと寒さが染みます。皆さんお酒を沢山飲みますし、中々面倒な季節ですよ」


「あー酒ね。飲んでるかい?」


「いやあ、私はあんまりです」


「そうか、そうか。俺が秘蔵のワインを開けてやってもいいぜ」


「遠慮します。渋いだけじゃないですか」


「分かってないね、お前は」


 たわ言を言いあいつつ、お茶をすする。

 あんまり美味しいものではないが、とても渋く出してある。

 理由はというと、こうした方が飲む量を減らせるからである。


「そういえば、なんか知らんやつら見たけど、あれはなんなんかね」


「ああ、恐らく輜重じゃないですかね。今朝話してまして」


「ああー、輜重。補給が破綻でもしたかな」


「さあ? ここでは聞こえるのは噂ばかりです」


「あれはいつまでいるか知ってるか?」


「えーと、あんまり長くはないらしいですね」


「へー。あっ、そういえばあれってどうなった配置転換」


「私はもうずっとここですね」


 ケーレルさんは残念そうに頭を下げた。

 本当に残念そうな姿だ。


「俺はもうちょい前線の街だ」


「ああー、でももうそろそろ戦争も終わるでしょうし、それまでの辛抱ですよ。殺されないでくださいよ、住民も恐ろしいものですからね」




 *




 ……夜のことである。

 大体三時がもう少し過ぎたところで通信を受け取った。


 曰くこちら側の動きがあちらに、バトルに露呈している可能性がある。

 補給路の襲撃と、攻撃への対応が早まっているらしい。


 しかし、任されたことといえば、レジスタンスを掃討しろというものだ。

 いるかも分からないスパイを探す仕事でなくて助かった。

 ただ、レジスタンスか……。これも中々に厄介だ。

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