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内務局員アンナはお掃除をがんばります!  作者: 朝日 橋立
三章め 西方方面軍ですよ!
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二十話め お仕事ですもの!

 怪しい人物を探しつつも、ままならない生活を続けていた。

 西方方面軍基地からの移動ももうすぐなので、何かしらの成果は挙げなければならないのだけどね……。


 尽きない悩みはあって、これが尽きる未来は全く想像できない。

 しかし、仕事はやってくるものである。

 ……といっても、これは明確に仕事という感じはしない。


「セミョーン将軍失礼します。アンナ・ヴロンスキー少尉です」


 こんな風に扉を開けて言う。

 そもそも私はピョートル中隊長の部下であって、将軍の直属の部下ではないのだが、しかし何か呼ばれたら従わないとならないものである。


 悩ましいことにこれを起因に売女と呼ばれていることは知っている。

 全くこれも私を悩ます一因だが、しかし……やはり、悩ましいことに私は仕事人なのだ。


「ヴロンスキー少尉待ってたよ。待ちくたびれたというべきかな」


「申し訳ございません。小隊での仕事が積もっておりました」


「ははは、冗談だよ。さて、少尉君に荷物持ちを任せたいんだがかまわないかな?」


「承知いたしました。仕事ですからね」


「まだ言えない政治があってね。君にはそこに付き合ってもらおう」


 渡された鞄を受け取ると、将軍の背中を追った。

 彼は髭を気にしながら歩いていた。


「政治ですか? 人事によるものですか」


「いや、民族だ」


 民族というと、幾つか思い至るものがある。

 ここも多民族地域だからこその事情があるのだろう。

 しかし、セミョーン将軍が対応するということはコサック民族だろうか。

 といっても彼と同じ民族のコサックとは限らないが……。


 車に乗せて頂いて、それから暫く揺られて田舎というべき場所に辿り着く。

 かなりの寒さに体を震わせつつも、一個の民家にお邪魔することになった。


「いやはや、久しぶりじゃないか」


 セミョーン将軍が民家の親父さんと抱き合った。

 親しい関係に見える。

 私的なことには付き合わせないでもらいたいものだ……。


「待ってたよ、セミョーン。話は通してある。……あれは?」


「ありがとう。あれは私が可愛がってる部下でね。なかなか気の利くやつだよ。あとで菓子でも出してくれ」


 会釈をして将軍の手招きに応じて彼を追った。

 民家の一室に入ると、そこに大男がいる。

 彼の服は軍服か……あんまり見たことない。

 ……白軍の残党だろうか。面倒なものを持ってきたものだ。


「久しいな。カール君」


 カールと呼ばれた男が吹かした煙草を潰す。

 仰々しい動きである。

 ゆっくりと動いているともいえるが、何か迫力を感じた。体格の良さだろう。


「俺はお前と仲良くするつもりはない」


「そうか。私もだ。仕事は君に以前伝えたとおりだ。書類はここに」


 将軍に鞄を受け渡す。

 彼はそこから一つの書類を場に置いた。

 のぞき見はしなかった。これはあんまり知ったところで利益はないと思えたからである。


「さて、君と私とでは色々と禍根はある。しかしだね、我々はもとに戻ろうではないか。君が将軍であるように私も将軍で、じきに君は大統領にもなる。まあそれも短い期間ではあるが」


 ……できるのなら面倒なことを起こさないでほしい。

 その処理をするのは私だろうし、内務局だろう。


「プレブレーニエは一つではないといけない。私も君もコサックも、そして幾つかの裏切り者も」


 将軍が皮肉気に言うと、すぐにこちらを向きなおした。


「さて、待たせたね。帰ろうか。……ところで菓子は貰えたかな?」


 彼はふざけた調子で言った。




 *




 セミョーン将軍のクーデーターを気にしつつも日ごろを過ごして、更に西方の基地に飛ばされたところで、若干のよくない空気を感じたことを否定しない。

 前の基地の外、街の方で感じたよりも強い不満の感情である。

 これは決して党に対するものでもなければ、赤軍に対するものでもない。


 ……統一されていない民族と、その国家に対する不満であろう。

 どうやらここの内務局は上手いらしい。

 うま過ぎたというべきかもしれない。


 暫くしてやってきたセミョーン将軍が将官を集めて告げたのは、まさにそれについてであった。


「さて、私が思うに、我々は統一された党による統一された国家を持たないといけない。正当なるプレブレーニエの国家として我々はこの統一事業を始めなければならない。この声明について我々は我々の選択を、侵略行為だとは考えない。


 これは党とそれによって統一される国家のための第一歩である。帝国とその臣下は我々の連邦にとって忌むべき敵であった。しかし、我々はその鎖を断ち切りここにある。我々にはともに悪霊と戦った友人と、統一された国家を持たないといけない。そして、我々は我々を裏切った裏切り者と、そこに住む友人を助けなければいけない」


 長々とした声明を要約すればこうであろう。

 我々は親しい隣人、裏切り者の隣国バトル共和国に宣戦を布告する、と。


 それともう一つある。

 親しい隣人のクーデーターによって、この戦争は始まるらしい。

 共産主義の輸出を口実に。


 ……全く私の予想が外れたことを喜ぶべきか、あるいはこれを惜しむべきか。

 どちらにせよ私にとってよい展開ではない。

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