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第89話 あま~い護衛任務

※□※※□※※□※1行×32文字で執筆中※□※※□※※□※

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《キャラバン・ジゼニア20日目ーケルンジリア39日目ー》


「この洞窟の奥に〖砂糖の実〗があるのですか?」


 私は桶を両手で抱えながら、ちらと黒い岩肌の裂け目を見上げてたずねた。

 汗をぬぐいながら作業していた荷馬車の御者、収穫係も兼ねる陽気なおじちゃんは桶を受け取り、馬に水をあげる為、水魔石から水を取り出している。

 「そうだよ。お嬢ちゃん」と笑い皺を深めながら、背中越しに親指で洞窟を指し示した。

 

「ここしばらく収穫に来とらんからな。実もたっぷり熟れてるはずだ。荷台いっぱいになれば、あとは好きに収穫していけばいいさ」


 目の前には大きく開いた洞窟の入口が、まるで獣が口を開けて待ち構えているかのように、ひんやりとした風を吐き出していた。

 今日は、この洞窟での砂糖の実採取に伴い、護衛任務を任されてここまでやって来ている。

 木材むき出しの簡易馬車が5台、そのうちの1台は荷物用だ。

 今回は、ガビルの件で知り合いとなった〖インダミタブル・ロック〗との合同護衛任務になる。


「さて、ウィルヘルムさんのパーティが洞窟の掃除して、俺ら〖インダミタブル・ロック〗は馬車の見張り。掃除が終わったら洞窟に馬車ごと入る。ってな感じなんだけどお嬢ちゃん大丈夫か?」

「大丈夫! 多分、大丈夫!」

「そうか……、何かあったら戻ってくるんだぞ」


 洞窟の中は、闇が広がっている。

 この洞窟の中心にあるお目当ての砂糖の実がある場所前にある野営地まで掃除=魔物退治をする。

 その道中、所々に設けられた壁のくぼみに松明が差してあり、それらに順々に油をさし火を灯して進んでいく。

 

「【光源(ルミナリー)】」


 静かに魔法詠唱を唱えると、私の頭上に淡く揺れる球状の光がぽわりと現れた。

 私の動きに寄り添うように浮かび、ぴたりと私を追随する。


「生活魔法も持ってるのか……、俺たちのパーティにーーおっと、勧誘は駄目だったな、アハハ」

「「アハハ」」


 ウィルと神斗はタイミングを合わせたように笑ったが、どこか笑っていない目をしていたのは、私の気のせいではない。

 私とウィル、神斗、そして小さなアストラ。

 私たち4人(?)はゆっくりと洞窟に歩をすすめた。

 洞窟は、馬車が入ることもあって、地面はある程度踏み固められていて適度に平らだ。


「ウィルと神斗が倒していくから、することがない……。念のため【探索(サーチ)】はしてるけどさ。ーーっと、アストラ!? ちょっ、ちょっとそれ口に入れちゃだめ! そんなバッチイ魔物咥えたら!」

「手伝ってくれるんだ。いい子だな、アストラ。これもお願いな」


 いやいやいやいや、いくら手伝いでも、咥えるのはアウトでしょ!?

 しかもよりによってスパイダーの脚!

 スパイダーの長くて節くれだった脚を得意げに咥えたアストラが、その死体を洞窟の隅へと運んでいく。

 嬉しそうな尻尾が腹立たしいほど可愛い。

 その死体の山を、ウィルが【収納(アイテムボックス)】へ放り込む。

 あれ、どうするの?

 いやまさかっ!? それ、アストラの食料じゃないよね!?

 

「あぁ、これですか? 売れないと思いますのでまとめて燃やします」

「よかった~」

「ん? よかったですか? まさか、アストラが食べると思われました?」


 ウィルは笑いながら、ちょっぴり悪戯っぽくこちらを見てきた。


「この洞窟に出現するのは主に虫系のEランクモンスターです。ただし、数が多いので難易度的にはDランク扱いになるようですね。……あ、神斗さんを見てください」


 神斗はまるで雑草を刈るような手際で、赤く光る剣を一閃、また一閃。

 機械的で無駄のない動きに、もはや戦闘というより作業の気配すら漂っている。


「火属性を付与してるみたいですね。流石、勇者ですね。彼にとってはもうお遊びみたいなものです」

「凄い……って、私だって戦うよ!」

「ヴィヴィには、松明に火をつけるお仕事があるでしょう?」


 くっ! またしても何にもできないなんて!


「そうですね……、天井に張り付いているスパイダーを射抜きましょう。丁度、大きめなやつがいます」


 そこには、馬車一台分ほどもある巨大スパイダーが、糸の網を駆けるように自在に動いていた。

 スピードも重量も、下にいるスパイダーより格上だ。


「で、でかい……あ、あれを?」

「親スパイダーのようですね。お腹に抱えている袋から次々に子スパイダーが出てきてるので、根本を絶たないと増える一方です」

「つまり、あれ……子供を守っているってこと? そう思うと、ちょっと可哀そうな気も……」

「いいえ、確かに子供ではあるのですが、彼らは兵士として量産されている存在です」


 「あと、食料としてですね」と付け加える。

 魔物って、恐ろしい!


「【追尾の矢(ガイディングショット)】!」


 集中し魔法を唱える。

 矢が具現化し光をまとい、一直線に親スパイダーの背中ど真ん中に突き進む。

 射抜くーーそう思った瞬間、子スパイダーを袋から出し、盾にした。

 盾代わりにされた子スパイダーは悲鳴もなく矢に貫かれ、そのまま地面にドシャと音を立て落ちた。


「た、倒そうとしている私が言うのもなんだけど、なかなか恐ろしい親蜘蛛ね!」


 もう一度!


「【追尾の矢(ガイディングショット)】!!」


 またしても、親スパイダーは子スパイダーを盾に。

 矢が命中すると、小さな体が宙を舞い、ドチャと嫌な音を立てて落下した。


「ぐぬぬぬ……、どうすれば」

「ヴィヴィ、手伝いましょう」

「だめ! あっ、そうだ! アストラ!」


「ギャウゥ」とアストラが私の声に反応し、パタパタと翼を広げて滑空しながらやってくる。


「アストラ、お願い! あの親スパイダーの動きを止めて!」


 親スパイダーを指差すと、アストラは羽ばたきながら大きく息を吸い、勢いよく「シュゥウウウッ!」と冷気を吐き出す。

 親スパイダーの太い脚が瞬時に凍り、氷柱が根元まで包み込む。

 巨体がぴたりと停止した。

 

「……アストラ、グッジョブ! フッフッフッ。これで子盾を使うことが出来ないはず」


 私は、ゆっくりと【追尾の矢(ガイディングショット)】を射ようと息を整えた。


「頭を狙ってえええぇぇえぇ……っっえ!?」


 親スパイダーは身動きができないはずの体勢から、口から粘着糸を吐き私の身体に絡みつく。

 瞬く間に糸は引き上げられ、私は空中へと放り上げられた。

 

「ちょっ……足、1本だけ生きてたあぁぁ!?」


 器用に口から糸を引きながら、残された1本の脚で引き上げる。

 親スパイダーの顎が私に向かってガバッと開く! ど、ど、どうしよう!?

 武器! なんか武器! あ、あった、ダガー!

 ベルトに差していたダガーを一気に引き抜き、両手でぐっと握りしめる。


「ええい! どうにでもなれ!」


 私は叫びながら、力任せにダガーを突き上げた!

 鋭く突き上げたダガーの刃が、親スパイダーの顎下を貫通し、ぶしゅっと鈍い音を立てて深々と突き刺さる!


「あ、あっぶなーい……。 へ? ふぇぇえぇ!?」


 突如として重力が仕事を始めた。

 今度は、倒した親スパイダーと共に地面に落下ーー。


「ヴィヴィ、よく出来ましたね」


 ウィルが剣で粘着糸を斬り、ふわりと私の体を抱き上げながら無傷の姿勢で地面に下ろしてくれた。

 まさに騎士ムーブ。


「ウィルありがとう。うわぁ、ベトベトだぁ」

「この糸は使えませんが、この粘着糸は加工すれば上質な罠素材になります。親スパイダーの体内からたくさん取れます。あと魔石もありますから【収納(アイテムボックス)】に入れておきましょうね」


 「はーい」と私は返事をして、【収納(アイテムボックス)】に保管する。


「ウィルヘルムさん、こちらは掃討完了でーーって、えっ!? ヴィヴィオラ、だ、大丈夫か!?」


 粘着糸まみれの私を見て、神斗の声が急に大きくなった。

 「糸が毒だったりしない!? 怪我は!? 気分悪くなったりとか」と矢継ぎ早に質問する。


「なんとか……、もう大丈夫だよ。【浄化(クリーン)】」


 淡い光が糸と汚れを拭い去ってくれて、肌がやっと息をしはじめた。

 

「そうか、それならよかった。じゃ、残りは片付けるよ。……【火球(ファイヤーボール)】!」


 神斗は指を鳴らすと、瞬時に火球が現れ、天井の残された蜘蛛の巣めがけて一直線に飛んでいった。

 【火球(ファイヤーボール)】が天井の巣にぶら下がっていた卵袋に直撃し、まとめてゴウッと炎に包む。


「あぁぁ、あんなに大変だったのに……」

「火が弱点ですからね」

「ほらー、だから最初から俺に任せてくれれば良かったのに」


 RPGの基本、弱点属性で殴れ。

 属性相性ってやっぱり大切なのね……。

【★お願い★】

こんにちは、作者のヴィオレッタです。

最後まで目を通していただきありがとうございます。

少しでも 「また読んでやるか」 と思っていただけましたら、

広告の下にある【いいね】や【☆☆☆☆☆】ポイントを入れてくださるとめっちゃ喜びます。

最後に誤字や言葉の意味が違う場合の指摘とかもお待ちしております。

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