第77話 助っ人新人冒険者①
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森がざわついている気がした。
この辺りに25人ほどいるのだから、その人数が生み出す微妙な気配の乱れが、異様なざわめきを感じさせてもおかしくない。
何も起こらないで……!
心の奥で何度も繰り返し願う。
それでも嫌な予感は消えない。
「本当に行くの?」
「うん」
神斗の短い返答は揺るぎがなく、すでに彼の中で覚悟は決まっているのだとわかる。
「助けを呼ぶほうがいいんじゃない?」
「そうだね。確認してから考えよう」
確かに、そうだ。
・ガビルたちは別の依頼だった。
・ランクのパーティが交戦しガビルたちを制圧した。
様々な可能性が考えられる、そんな状況では助けを呼ぶことはできない。
「【探索】……」
視界を広げながら慎重に魔法の対象を人間だけに絞る。
白い人型の光が森の中に点々と浮かび上がる。
「もっと左。人が密集してる! あっ!」
遠くから「わぁぁぁーー」と響いてくる。
白い光が、突然宙にぶら下がり、揺れている……。
「どうなってる!?」
「誰かが罠にかかって宙吊りになった!」
視界に映る白い光の中には、ゆっくりと動く7つの光と、まるで時間が止まったかのように静止した光がある。
調査班と思われる人々の光は、ピクリとも動かない。
やはり何かが起きている。
「どうしよう、神斗。しかも助ける動きがない……」
「ヴィヴィオラ、罠を避けて、ガビルたちの背後まで連れて行って」
「……わかった」
音を立てないように木の枝を避けながら、ゆっくりとガビルたちの背後に回る。
50メートル後方、よっぽどのことでなければ私たちに気がつかないだろう。
森のざわめきが強くなるにつれ、風が木々を大きく揺らし始めた。
葉がこすれ合う音が、不吉な警告のように響く。
……おそらく、この手前側にいる光の集まり……3、4に別れている光……あれがガビルたち
罠の位置も把握したいと願いながら、【探索】と呟く。
調査班とガビルたちの周囲には、無数の罠が輝きを帯びながら乱立している。
明るすぎる視界のせいで、一瞬何が何だかわからなくなるほどだった。
でもーー、罠がないところはわかる。
「あそこに立っているのがガビルだと思う。ここからガビルたちまでは罠がないよ」
「わかった。今の状況を詳しく教えてーー」
「状況はさっきとほぼ変わらないよ。だけど、宙吊りの人が人質なのかもしれない。剣……いや、短剣を突きつけられてる。調査班の人たちは動けない感じ。あとトラバサミに捕まっている人もいるみたい」
目の前の集団から風に乗って聞こえてくる。
「……武器を置け」
「わかった……ガビル……こんなこと……では済まない」
「3日前……かかっ……首から落ち……死んで……仕方な……な」
「もう……領都……入れ……」
「お前たち……殺す……どうでも……い」
微かに笑い混じりの声が響く。
〖殺す〗と言う言葉に鼓動が早くなる。
冷たい汗が背中を伝い、体が緊張で固まっていくのがわかる。
ガビルが「確……かあっ……埋め……たよ」と突然振り向いた。
ガビルは先ほどまで自分たちがいた場所を指さした。
ハッ! っと息を飲み込む。
移動をしていなかったら、私たちの存在を知られる危険があった。
それに……今、ガビルは「埋めた」と言った?
脳裏に嫌な予感が広がる。
そこに埋められているのはーーもしかして、私たちと同じように罠にかかり、逃れられなかった誰か?
Gランクの依頼の際、私たちはガビルたちが罠を運んでいるのを目撃した。
その後、ジゼニアの冒険者ギルドを経由し、キリフの冒険者ギルドへも情報にも報告した。
もしあの時、もっと深く調べていれば……ガビルたちの動きに気づいていれば……犠牲者を出さずに済んだのかもしれない。
胸の奥に罪悪感が広がるのを感じる。
「神斗……あの時、ちゃんと確認しておけば……」
「ガビルたちが悪いんだ。ヴィヴィオラが気に病むことじゃないよ」
確かに、全てを背負うことはできない。
目の前にある現実に向き合わなければならなかった。
「危ないから、ヴィヴィオラはここで待ってて」
神斗は私を危険から遠ざけようとしている。
だけど、私はーー。
「私も援護する。【追尾の矢】ならホーミング矢だし。狙いを外さないから」
「……そうだね、一発だけ援護して。まずは宙吊りの人に突きつけられている短剣をなんとかできる? 外れても俺がカバーするから」
「わかった。少し移動するね。準備ができたら撃つから、そのタイミングに合わせて動いて!」
音を立てないように慎重に足を運び、標的を狙いやすい場所へと移動する。
やはり、宙吊りの人は首筋に鋭い短剣を突きつけられていた。
「ここなら……宙吊りになっている人に突きつけている短剣がはっきり見える」
魔法の矢が標的から外れることはないーーそれは分かっている。
けれど、もし万が一ずれたとしても、この角度なら短剣を握る男を射抜くだけで済む。
ーー射抜く。
この矢を射れば、誰かが傷つくことになる。
たとえそれが悪意のある人間だったとしても、弓を引くという行為の意味は変わらない。
覚悟を決めなきゃ。
深く息を吸い、ゆっくりと吐き出す。
意識を一点に集中させる。
「ーーーー【追尾の矢】!」
魔力で具現化した弓の弦を一気に解放する。
矢は空気を裂きながら、一直線に標的の短剣の柄を握っている手へと吸い寄せられるかのように突き進むーー。
【★お願い★】
こんにちは、作者のヴィオレッタです。
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