第78話 助っ人新人冒険者②
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「ぎゃぁぁぁぁあ!!!」
短剣の柄を握っていた手を直撃し、鋭い痛みを感じたのか男が叫び声を上げる。
短剣がくるくると宙を舞い、刃先が地面に突き刺さる。
その叫び声が響いた瞬間、神斗が一気に距離を詰める。
ガビルたちの背後は完全に無防備だった。
「くそっ! 背後からか!」
ガビルたちは背後には誰もいないと鷹をくくっていたのだろう。
その間に神斗の剣から鋭い一閃が走り、3人が反応する間もなく地面に崩れ落ちる
「うわぁぁぁあぁぁ!!」
悲鳴とともに後退する者、剣を構え直す者。
一瞬にしてガビルたちが混乱する。
「このヤロウ!!!」
と剣をにぎったガビルが応戦する。
ガキィン!
火花が散り、鉄と鉄がぶつかる鋭い音が周囲に響いた
鋭い一撃を神斗の刃が受け止める。
神斗は即座に剣を弾き返し、逆に踏み込んだ。
ギィン!
互いの剣が交錯し、鋭い衝撃音が響く。
神斗は一瞬の隙をつき、逆手に持ち替えた剣でガビルの足元を狙い、鋭く払った。
「ぐあっ……!」
ガビルの体勢が崩れた瞬間、神斗の拳が腹部に深くめり込む。
ドサッ!
ガビルは膝から崩れ落ちる。
「神斗凄い……何が何だかわからないけど!」
圧倒的な力でねじ伏せていく神斗を目の当たりにし、張り詰めていた緊張がふっと解けていくのを感じた。
「私も少しは頑張らないと!」
初めの一矢を射ってから、すぐに身を隠したので、まだ、私の居場所はバレていない。
周りは状況を覗き見る。
まだ戦意を保っている2人は、神斗に向かって剣を構えている。
しかし、彼らの足は明らかに震えていて、恐怖に支配されて動けなくなっている。
これではもう、神斗の敵にはならないだろうな……。
じゃあ、戦闘は終わりなのかなと7人を再確認すると、突如、私が弾き飛ばした短剣の持ち主が再び動き出した!
「クソッ!」
その男が短剣を拾い神斗へ向けて鋭く短剣を投げた。
キン!
短剣は神斗に届くことなく弾き飛ばされる。
「助かった! ヴィヴィオラ!」
【追尾の矢】の魔法の矢が寸分の狂いもなく短剣を狙い、確実に軌道を逸らした。
「おぉぉ。凄い!」
自分の魔法に思わず拍手する。
ドゴッ!
神斗の強烈な蹴りが短剣の男の腹部へめり込む。
「ぐっ……あぁっ!!」
鈍い衝撃とともに、男は足元をすくわれ、制御不能なまま後方へ吹き飛ぶ。
背中から木に叩きつけられ、バキッ! っと乾いた衝撃音が響き、葉が散り舞った。
「ヴィヴィオラ、終わったよ」
神斗は剣を肩に担ぎながら、振り向いて告げる。
「お疲れ、神斗」
ガビルたちはすでに戦闘不能か、抵抗をできないぐらいに打ちのめされている。
「お前たちは何者だーー!」
私は、地面に転がり、痛みに顔を歪めるガビルの背中をギュムっと踏みつける。
「朝、この罠に引っかかった人ですぅー!」
「その紹介やめてよ。ヴィヴィオラ」
神斗は「あれは俺が悪かったんだって」と笑う。
「助かった……。君たちは、朝報告してくれた人たちだね。……申し訳ないんだが、ちょっと手伝って貰えないだろうか?」
宙づりの男は安堵しつつ、協力を求めてきた。
朝の報告したことを知っているのだから職員なんだろう。
「罠が多すぎて、みんな動けないんだ」
私は【探索】を唱え、罠の位置が明確になると、一人ずつ慎重に罠の外へ誘導していく。
「君は無属性か! パーティに所属しているのか? 俺たちはBランクーー」
「ヴィヴィオラは、俺らのパーティー所属です」
神斗ははっきりと断言する。
アハハ……
「罠を解除したいので、罠がある場所を教えていただけますか?」
「わかりました」
「くそっ、くそっ、くそぉぉッ!!」
縛り上げられたガビルは身を捩じらせ、必死に抵抗しながら声を張り上げる。
「Bランクの〖インダミタブル・ロック〗が引っかかったのに!」
ビルの叫びには悔しさが滲んでいた。
「ん? インダ……何?」
「俺たちのパーティ名だ。決して負けない硬く揺るがない存在、不屈の岩〖インダミタブル・ロック〗っていうんだ。俺はミゲルだ」
ミゲルは私の前に力強く手を差し出した。
これは……握手を求める流れだ。
「俺は神斗です!」
「お、おぅ……」
神斗は迷うことなくミゲルの手を握り、力強く応えた。
そうだよね。
この場の主役は、やっぱり神斗だもん。
危ない危ない、今にも手を伸ばしそうになっていた! ちょっと恥ずかしい……。
もし私が先に握手を求めていたら、ミゲルはどんな顔をしただろう?
彼の「なんだこいつ?」って思われるのが目に浮かぶ。
「素敵なパーティ名ですね」
私の言葉に、ミゲルは少し得意げに胸を張る。
「そうだろう? でも、不甲斐ない姿を見せてしまったな」
罠を解体している調査班を見ながら頭をかき、ミゲルは悔しさと安堵が入り混じったような複雑な表情を浮かべる。
「……本当に助かった。こんなバカみたいな罠の張り方をしているとは思わなかったよ」
ミゲルは肩をすくめつつ安堵の息を吐き、苦笑いしながら罠の残骸を一瞥した。
「君たちはパーティなんだな?」
「うん、先日パーティを組んだの」
「そうか、パーティ名を決めておいた方がいいぞ。名前だけを言っているとソロ扱いされて、勧誘がしつこくなるぞ。」
ミゲルは少し得意げに語り、まるで経験者の知恵を授けるように軽く顎をさすった。
「な、なるほど……、パーティ名がいるのか……」
「恥ずかしくない名前で頼むよ、神斗」
「ところで、知り合いなんですか? このガビルと」
「あぁ、俺たちは普段はキリフ領のギルド所属なんだ。だから、よ~く知ってる。今は活動の拠点をジゼニアに移しているけどな」
「キリフ領からジゼニアへ。冒険者って自由なんだね」
ミゲルは「ジゼニアは報酬が高いからな」と笑った。
話が再度ガビルに移ると、場の空気がわずかに張り詰めた。
ミゲルはようやく厄介者の足をつかんだという喜びと、人が犠牲になったことに苦々しい思いが胸を満たしているようだった。
「いつもは冒険者のいざこざで終わったけど、今回はギルドの職員が巻き込まれてるんだ。人を殺して埋めたと告白していたし、まずはギルド追放だろうな」
「まずは?」
「今までの事もあるから、奴隷落ちですまないだろうな」
ミゲルの声は、淡々としていたが、その裏には過去の数々の悪行を目の当たりにしてきた者の冷徹な判断が宿っていた。
ガビル以外の6人は、重い空気に包まれながら、各々が苦い表情を浮かべ、まるで過去の過ちを噛み締めるようにうつむいていた。
当のガビルは、「弱いやつが悪いんだ」と言っている。
「じゃあ、俺よりも弱いお前を俺が殺しても文句は言わないよね? あっ、殺したら文句は言えないよね」
勇者・神斗が怖い……。
ガビルは「む、無抵抗なやつに手を出すなんて許されないんだぞ!」と言っている。
どの口が言うのか……。
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こんにちは、作者のヴィオレッタです。
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