第49話 カミングアウトしちゃえ
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今日1日、朝から夜までずっと歩き続けた。
足がひどく痛むが、野宿なので休んでいる時も靴を脱げない。
ウィルは「ヴィヴィ、靴を脱いでもいいですよ」と言うけど、すぐ動けないのは不安だもん。
朝から夜までの間、何回か休憩を挟み、そのたびに靴を脱いでHP回復ポーションで疲労と靴擦れを治しながら歩いてきた。
このHP回復ポーションはLV2と教えてもらった。
レンギア城で神斗に使った物より色が薄い。
「なるほど。色の濃淡で見極めるのか!」
「ヴィヴィは、詐欺に引っかかりそうですね。魔法を使うようになったら大丈夫でしょうが……」
「魔法……」
MPたんまりあるのに使えないやつ……。
濃淡で見極めてはいかないHP回復ポーションで治し、だましだまし歩き続けてきた!
過酷!!
この数日間、様々な出来事がありすぎた。
どうなるか不安だったけど、昼間の穏やかさに心が癒され、逃亡はもう頭の隅に追いやられてしまった。
今の状況が実は一番望んでいた形になってるんじゃないだろうか。
「これは、旅!!」
私は腕を広げて、満天の星が輝く夜空を見上げながら叫んだ。
「どうしたの? ヴィヴィオラ。何? 旅って。ンフフ」
「考えてみてよ! 遠征中に逃げることを考えていたけどさ。実際ウィルから逃げれると思ってた? あ、その時はロング副団長ね」
「逃がしませんけどね」
「怖っ……確かに無理だったよなぁ」
肩をすくめた神斗は、焚火の炎をじっと見つめている。
夕食の片づけを終えた私たちは、焚火の前でゆったりとしたひとときを過ごしていた。
炎がぱちぱちと心地よい音を立て、温かい光がみんなの顔を照らす。
ちなみに夕食は、香ばしいチキンチキンのソテー・チーズがけと新鮮なサラダ、パンとワイン。
香ばしい香りとジューシーな肉がたまらなく美味しかった!
あれ? 神斗は何歳だっけ?
召喚されたときにステータス確認したよね……確か17歳だったかな。
この世界では、飲酒の年齢ってどうなってるんだろう。
城の中でもみんな飲んでいたから、飲酒しても良い年齢なんだと思うけど。
ウィルは何も言わないし……。
「そうだ、ウィルと神斗。ちょっと話したいことがあるんだ」
真剣な表情で、私は二人の方に向き直った。
歩きながら、配信スキルについて話そうと決心していた。
もう何日も配信をやっていない!
今日で5日目!
下手したら、死んだと思われちゃう。
リスナーに心配をかけていると思うと、胸が痛む。
焚火に向かって、私は枝をひとつ投げ込んだ。
枝がパチンと音を立てて燃え上がる。
配信スキルって、どうやって説明すれば伝わるのかな?
神斗はともかく、ウィルは理解できないと思う。
「実は、私ね、前の世界、日本との関わりが少し今もあって……」
「「……」」
その言葉に、森の中が一瞬静寂に包まれた。
やだ、静か!
ウィルは黙って聞いており、神斗は頭を掻きながら考え込んでいる。
「ヴィヴィオラ、もうちょっと具体的に」
「うん、実はね。私、日本では配信者だったの。有名じゃなかったんだけど……この世界に来るときに、配信を続けたいって神様にお願いしたの。それからもう一つお願いしたんだけど、それは置いといて」
「配信者だったの!? 〖ゲーム実況〗とか? 〖雑談〗とか? 〖歌ってみた〗とか?」
神斗は興味津々に尋ね、目を輝かせている。
この反応、さては、誰かの熱心なリスナーだな?
「……」
ウィルはやはり理解ができないのだろうなぁ、困惑した表情を浮かべ、手を組んでじっと動きを止めている。
何か言いたげだが、言葉が見つからない様子だ。
「うん、難しいよね。う~ん、この世界にも劇、オペラとかお芝居、そんなものないかな? 私がやっていたのはそれと少し違うんだけど、娯楽を提供する人だったわけ」
この世界にありそうなものを想像しながら、なんとか説明しようと試みた。
「オペラ、演劇ありますよ」
「へぇ~、観たい!」
「落ち着いたら一緒に観に行きましょう」
どんなオペラが上演されているんだろう。
あぁ……話が脱線してしまった。
ふと我に返り、元の話題に戻す。
「その観客の前で話をしたり、朗読劇をしていたと思ってもらって」
「歌を歌ってたのですか?」
「私は歌うのは無理だよ。恥ずかしいじゃん」
私は照れ笑いを浮かべながら言った。
「人前で話してたんでしょ? 恥ずかしいわけないじゃん」
神斗は悪戯っぽく茶化してくる。
さては配信者の多くは、陽キャだと思ってるな?
「う……もう! それでね、本当に配信ができるの!」
「ちゃんと願いを聞いてくれたんだね」
「まぁ、ちょっと脅してお願いしたんだけどね」
ハハハ……と笑う。
神斗はさすがに理解が早かった。
そんなこと出来るわけないと否定しないのは、若さゆえの柔軟さかもしれない。
「もしかして、城で姿を消したのはそれが関係してたの?」
「ご名答だよ! あの時は助かりました」
ウィルはしばらく考え込んでいたが話し始めた。
「それは固有スキルの1種ですね。大概、ジョブに紐づけられてます」
「そーなんだ。私、〖ジョブ???〗なんだよね。そのジョブの固有スキルが〖配信〗となるのか。神斗は固有スキルあるの?」
「うん、あるよ。〖勇者の慈悲〗ってスキル」
「慈悲……。慈悲を与えるようなスキルかぁ。想像もつかない! 悪を見逃すとか?」
「見逃しちゃダメでしょ。でも、あまり使う状況になりたくないスキルだよ」
神斗が苦笑いする。
あれ? 神斗はどうして固有スキルがわかるのだろう。
訓練担当の人に教えてもらったのかな?
「神斗はどうして自分が固有スキルを持ってるって分かったの?」
神斗は「え?」と驚いた表情で呟き、ウィルの方を見つめた。
そんなに驚くようなことなの?
【★大切なお願い★】
こんにちは、配信者のヴィオレッタです。
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