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第47話 なんなのこの国!

※□※※□※※□※1行×32文字で執筆中※□※※□※※□※

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 林の外には街道が広がり、荷物を担いだ人や護衛付きの馬車が穏やかに進んでいるのが見える。

 馬車の幌が生成り色で、不揃いな薄い薄い緑色の水玉が描かれていてポップで可愛い。

 ウィルが「あれは乗合馬車ですよ」と教えてくれる。


「可愛い馬車だね~」

「変わった模様の屋根じゃない?」

「幌!」


 言われてみれば、水玉模様って世界に合わないよね


「あれは、〖ジャイアントワートトード〗の革ですね。巨大いぼ蛙です。1匹分で1台の幌ができます」

「水玉……と思ったら〖いぼ〗だった」

「あれで1匹って、ものすごい大きさなんだね」

「えぇ。見てみたいですか? 耐水性に優れた革なので、狩るのもいいですね。革はテント、馬車、特に長距離走る馬車はジャイアントワートトードを使いますね」


 乗合馬車は、この世界のどの国にもあるようだ。


「町を経由しながら他の領都に行ける大切な交通手段です」


 乗合馬車は日本でいう長距離路線バスみないなものなのかな。

 国境越えは流石にないらしく、近くの町や領都まで。

 そこから、砦行きがでるらしい。


「いつか乗ってみたいよね」

「楽しそうだよね。長距離ってことは、泊まりはどうするの?」

「近くに町が無い場合は乗客全員で野宿します。町に停泊する時は自分で宿を探さないといけません。お金がない人は馬車内で寝ている場合もあります」


 ちなみに出発時間は御者が決めるらしい。

 時刻通りに到着するほうがまれだから、時刻表はないようだ。

 1日遅れの到着なんて良い方らしい。


「馬車旅でも、野宿スキルがいるのかぁ」


 この辺りに、王都から一番近い町があるようで、手押し車や荷馬車を引く商人や旅人たちがちらほらと見え、街道は行き交う人で賑わっている。


「それにしても、神斗君、あの城からどうやって逃げたの?」

「あのフルアーマーのお陰です。騎士と同じアーマーを身に着けていたので、貴族の馬車の後ろに従者のように紛れ込んだら特に問題なく通れました」

「門番のロベルトさん、あの混乱の後始末で相当な苦労をしているんじゃないかな……」


 正門の門番がたった4人しか配置されていない城のケチな管理体制のおかげで、私たちも比較的簡単に脱出することができたのかもしれないね。

 私は気を失っていたけれど……。

 城で親切にしてくれたジェイクさん、ランドルーさん、そしてロベルトさんには、もう二度ともう会えないと思って間違いないだろう。

 私たちが逃げたことで、彼らに迷惑がかかってないといいのだけど。


「ん? 城の中からはどうやって逃げ出したかはわかったけど、城壁を越えるのはどうやったの?」

「あ~、普通にチェック受けて通ったよ。『お仕事ですか?』って門番に聞かれたので、『はい、そうです』って答えただけ」

「そんなに簡単に通れるものなの?」

「あっ、でも、その日の夜には冒険者たちが検問が厳しくなったって言ってたよ。検問を受ける列がすごく長くて、20時を超えたから帰れなかったみたいでさ」


 南の野営場で神斗君が隠れているときに、王都へ帰ったが諦めて野営場に戻って一夜を過ごした人がぼやいていたらしい。

 王都の検問所は1箇所につき2つの窓口しか設けられておらず、そのため王都から出入りする人々で混雑したのかな。

 神斗君が、流れに身を任せて王都外に出ていなかったら、捕まっていたかもしれないんだ。


「ウィル、検問を突破したことってバレる?」

「その時点で手配リストに載っていなければ、大丈夫でしょう」


 それなら少し安心だね。

 神斗君もやっぱりかなりラッキーな体質だね。


「それで、その騎士のアーマーはどうしたの?」

「泉近くに捨てたよ。訓練の時にも付けていた肩の防具だけは貰った。慣れないものは動き辛くてさ」

「神斗さんも、早めにどこかで洋服や防具を新調しないといけませんね」


 そういえば、神斗君の洋服を何も買ってないじゃん。

 揃えておくべきだったのに、すっかり忘れてた……。

 武器に関しては、私とは違って神斗君はちゃんと持っているんだよね。

 勇者認定式の時に、私は武器を持たせてもらえなかったのを思い出す。


「でも、よかったね。あの聖なんとか剣……」

「聖封の剣ですね」


 ウィルがしっかりと訂正する。


「俺が貰うはずだった剣? あ、そうそう、聖封の剣とか勇者のアーマー的なものをくれなくて本当に良かったよ」

「どうして?」

「国宝の剣とかアーマーとかだったらさ。逃走しても執拗に追跡されていたんじゃないかと思って」

「そうですね。国宝であれば」


 ウィルが頷きながら答える。

 国宝かぁ、国宝ねぇ、あの剣が?

 なんか、こう、オーラがあるというか、そんなものは感じられなかったんだよね。


「ちなみに、この世界の剣で何番目に素晴らしいの? その聖なんちゃら剣」

「聖封の剣は……、実はそれほど大したことはないんです」

「そーなんだ。そんな気はしていた」

「何番目かは正確にはわからないけど、Bランクの剣ですね」


 ランクが全てではないけど、なんでそんな剣が国宝扱いされてるんだろう。


「Bランク? 何ランクが一番上なんですか?」

「最高ランクは、Sランクです」

「マジかぁーー」

「Eランクが一番下ですね」


 神斗君は絶句している。

 そんな剣を貰って追われる羽目になるくらいなら、いらない剣だ。


「神斗さんが今持っている剣は、Cランクになりますね」

「Cランクーー!」

「あれ? そうだ。そのCランク剣は何?」


 急に思い出し、神斗君が腰に帯剣している剣を指さして確認した。

 あの勇者認定式の時に、何かが引っかかったんだよね。

 あの聖なんとか剣に、似ているからなんだけど。

 今、彼が持っている剣は、騎士たちに支給されている標準の剣とは違い、その鞘も少しで特別感がある。


「多分さ、これは聖封の剣のレプリカだよね。俺は練習用の剣としか言われてなかったけど」

「へぇ……。そういえば、ウィルが神斗君用の剣って言ってたのがあったよね。武器庫の奥にある鍵付きのガラス棚に、たくさん保管されていた剣」


 私は記憶を辿りながら思い出す。

 そう、鍵付きのガラス棚の中に、10本くらいだろうか、見た目が同じ剣がずらりと並んでいた。

 そして、それが神斗君用の剣とされていたことを思い出した。


「それですね。本物の国宝の剣を常に使うわけにはいきませんから、レプリカが必要なんですよ」

「その聖封のぉ~剣ってさ、具体的に何が凄いの?」

「本物は、初代国王が1度、魔物を封じ込めた剣らしいですね」

「剣に封じ込める?」

「そんな事できるんだ?」

「どうなんでしょう……」

「なんか、嘘っぽいというか、物語に尾ひれがついただけの話な気がするんだけど」

「レプリカは可能な限り本物の感覚に近づけるように作られています。そして、レプリカなので本物より1ランク下のCランクになるんです」


 武器職人は頑張った方ですと付け加えた。

 10本も急いで作らせたらしいから、職人たちも大変だったみたい。


「ふ~ん。じゃあ、あの第1王子がご乱心した時に使っていた剣が本物だったのかぁ」


 その言葉に、一瞬場に沈黙が流れた。


「違いますね」

「違うよ」


 ウィルと神斗君が同時に声を上げて否定した。


「えぇ? 違うの? もしかして、あの剣もレプリカだったってこと?」

「そう、本物の剣を渡す気がなかったってこと!」

「そうでしょうね」

「だから、王様が『誰が渡してもよかろうて』って言ったんだ」


 バカにし過ぎだよね?

 大陸統一か何か知らないけど、召喚者に国の未来を背負わせておいて、その扱いはひどい。


「『はい! レプリカ!』って何?」

「前からおかしな国だったから、今更だよ」


 神斗君が冷ややかな声で答える。


「なんなのこの国!!」

 

 林の外では、馬車の車輪が外れて立往生している様子が見える。

 その横で、のんびりとおしゃべりを楽しんでいる乗客たちが、楽しげな笑顔を浮かべている。

 のどかすぎる……。

 王様が殺されたんだよね? 息子に……。

 王様が死んだのに喪に服している様子も見当たらない。

 私たちを捕まえるための追手のような人影も見当たらない。


「いやほんともう、なんなのこの国!!!」

【★大切なお願い★】

こんにちは、配信者のヴィオレッタです。

最後まで目を通していただきありがとうございます。


少しでも

「また読んでやるか」

と思っていただけましたら、


広告の下にある【いいね】や【☆☆☆☆☆】ポイントを入れてくださるとめっちゃ喜びます。


最後に誤字や言葉の意味が違う場合の指摘とかもお待ちしております。

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