表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/2207

第百七話、わたくし、ちょい悪令嬢ですの! その5、『死に戻り』③最終判決。

アグネス聖下たん「──それで結局のところ、貴様ら自称『主人公』サイドが勝手にやっている『異世界裁判』に照らして、前回行った昔懐かしRPG等でお馴染みの、死んでしまった勇者等の『教会での復活』を、最新のWeb小説において再現することは、有罪なのか、それとも無罪なのか?」


ちょい悪令嬢「……何か、『自称』とか『勝手に』とか、言葉の端々にトゲを感じるのですが、それはともかくとして、有罪か無罪かで言えば、それはもう紛れもなく有罪ですよ。いくら『死に戻り』と言ってもあくまでも初歩中の初歩であることもあり、もう少しましなものを期待していたのですが、むしろ『死に戻り』の悪いところを凝縮しているようなものでしたわね」


アグネス聖下たん「ほう、そういう言い方をするということは、すでに『死に戻りの悪い例』については、裁判にかけて審議しているようじゃな? 『死に戻り』の一体どういった点が、『有罪』と見なされたわけなのじゃ?」


ちょい悪令嬢「もちろん前回の『教会での復活』と同じように、『転生者』にこの世界そのものをあたかもゲームみたいに楽しんでもらうためだけに、この世界の人の命を『ゲームの残機コマ』であるかのように、使い潰すところですよ! 具体例を挙げれば、メツボシ帝国でやっていた『カミカゼアタック』とか、まさしくあなた方聖レーン転生教団で強行された、『卵のうちからゲンダイニッポン人の魂を注入されているドラゴンたちによる、大規模自爆テロ』とかですけどね!」


アグネス聖下たん「さあて、何のことやら。『ドラゴンの卵への転生』じゃと? それがどうした、既存のWeb小説でも普通に行われているではないか?」


ちょい悪令嬢「そんなことを、何のてらいも無く、普通にやっているから怖いんですよ⁉ 一歩間違えば、マッドサイエンティストによる、生体実験そのまんまじゃないですか! それにこれが教団の仕業であったことは、すでに公然の事実となっているんですから、今更とぼけないでください! どうせこれからだって、実験を続けるおつもりなんでしょう⁉」


アグネス聖下たん「ふふん、貴様の話だと、これはあくまでも【番外編】みたいなものじゃから、この場に限り認めてやっても構わぬか。──おお、そうじゃとも、前回も言うたが、我々転生教団の最大の目的は、『転生者』とこの世界の人間とを融合させて、この地上に『神』にも等しき真に理想的な存在を生み出すことじゃから、もちろんそれが至高のモンスターであるドランゴンを土台にしたものでも構わず、このまま実験を完全にあきらめるつもりは無いわ。……ただし、この前は母親ドラゴンの逆鱗に触れて酷い目に遭ったことだし、ほとぼりが冷めるまでしばらくの間は、棚上げするつもりではあるがな」


ちょい悪令嬢「当たり前です! 別にドラゴンに限らず、普通に地方貴族の八男坊さんとか下級役人の本好きの娘さんとかに、何とも得体の知れない異世界ゲンダイニッポン人の魂が宿っていたりしたら、親御さんが可哀想じゃありませんか⁉ どうしてあなたたち『異世界転生促進派』の方々は、そんな基本的な『人間の情』というものを理解できないのです!」


アグネス聖下たん「耳が痛くなるのう………………主に『ゲンダイニッポンのなろう系の作家』の皆様が」


ちょい悪令嬢「あなたたち転生教団もですよ!」


アグネス聖下たん「と言うことは、貴様ら『異世界裁判所』とやらの判決としては、『死に戻り』の類いはすべて有罪なわけなのか?」


ちょい悪令嬢「あ、いえ、いわゆる本家本元の『リゼ○』系の『死に戻り』であれば、量子論と集合的無意識論に則りさえすれば、現実的にも十分に許容範囲であるといった結論を下しております」


アグネス聖下たん「ほう、珍しいのう。貴様が『なろう系』の代表的作品をディスることなく、むしろ肯定するとは」


ちょい悪令嬢「人のことを何だと思っているのですか? 別にわたくしは闇雲に他人様の作品をディスっているわけではなく、良い点はきちんと認めていますよ。それにこの点については、『量子論と集合的無意識論に則りさえすれば』と、申しておりますでしょう?」


アグネス聖下たん「と、言うと?」


ちょい悪令嬢「いくら『リゼ○』系が正しいとは言っても、本当に世界そのものをループできたり、一度死んでしまった人間を甦らせたりできるわけではなく、何か生死に関わるような重大イベントが始まる際には()()()、『転生者』を本人の意思にかかわらず集合的無意識にアクセスさせて、そのイベントにおいて失敗して命を落としてしまう『未来の光景ビジョン』をすべて脳みそにインストールすることで、考えられる限りすべての『死ぬパターン』を()()()()()()()()()、現実での『本番』においては同じ過ちを犯すことなく、もちろん命も落とすことなく、イベントをクリアできるという、名付けて『()()()記憶によるリスク回避型()()死に戻り』ということになるのです」


アグネス聖下たん「……これはまた、貴様が得意とする、屁理屈ばかりの、面倒くさいやり方じゃのう」


ちょい悪令嬢「面倒くさいとは、何ですか⁉ まさにこれぞ、『リゼ○』系の『死に戻り』の、異世界転生物語における、最も現実的で理想的な実現方法でしょうが⁉」


アグネス聖下たん「そうかあ? 我にはとてもそうとは、思えんのじゃがなあ」


ちょい悪令嬢「な、何ですってえ⁉ これはある意味『ゲンダイニッポン』の将棋の世界で言うところの、『脳内将棋盤』を頭の中で浮かべるようなもので、それなりの腕のある将棋指しの方なら、プロアマ問わず実現可能で、別に非現実的なことではないのですよ⁉」


アグネス聖下たん「しかしそれはあくまでも、それぞれの将棋指したちが、自分自身の不断の努力の結果に獲得できたものなんじゃろう?」


ちょい悪令嬢「そ、それは、そうですけど……」


アグネス聖下たん「まさに問題なのは、そこなのじゃ。『リゼ○』系の『死に戻り』においては、あくまでも主人公の『ス○ル』氏が本当に困難にぶち当たって、現実に死んでしまいつつも、何度も何度も世界そのものをやり直して、更に幾たびも困難にぶち当たって死んでしまおうとも、けしてくじけずに、飽くなき試行錯誤の結果、最後の最後に勝利を掴んでおるのではないか? それに比べて、貴様の言う『リスク回避型死に戻り』とやらだと、『転生者』本人は実際に苦労することは一切無く、ただ単に『自分が失敗した』記憶を与えられることによって、それを参考にして、けして失敗することも死ぬこともなく、あっけなくもたった一度のトライで、のうのうと目的をクリアしているだけではないか?」


ちょい悪令嬢「──うっ。そ、そう言われてみれば、確かに……」


アグネス聖下たん「しかもこれって結果的には、『一度で絶対成功する予言』を与えているようなものではないのか? 貴様らのスタンスとしては、量子論に則れば『未来というものには無限の可能性があり得る』から、そんなことはけして実現できなかったのではないのか?」


ちょい悪令嬢「いや、その件に関しては、『転生者』には『たった一つの成功』を目指させるのではなく、あくまでも『失敗する可能性をすべて潰す』ことにより、『大々的に成功を収めることはできないが、大きな失敗もしない』という結果を得ることこそを目的とさせております。──Web小説でお馴染みの『異世界転生』作品に基づいて具体的に述べれば、日本の戦国時代にタイムスリップ的に転生した場合、普通現実的には何よりも『生き延びる』ことこそを第一にすべきであって、既存の作品みたいに、超危険人物である織田信長の目に止まって戦国武将や堺商人となる道を選んだりせず、とにかく『触らぬ神に祟り無し』をモットーに、著名な歴史的人物にも歴史的イベントにも、極力近づかず、『事なかれ主義』的にひっそりと生き抜いていくことを目指させます」


アグネス聖下たん「──駄目じゃん⁉ そりゃあ『戦国サバイバルの極意』なんていう、ノンフィクション的ガイドブックとかならいいかもしれないけど、あくまでもエンターテインメントであるWeb小説において、肝心の主人公がそのように『事なかれ主義』であったら、話にならないじゃろうが⁉」


ちょい悪令嬢「し、しかし、量子論や集合的無意識論に則っての真に現実的で理想的な『死に戻り』とは、こうでなくてはならないのであり、それにもちろん、Web小説的に戦国武将や堺商人としての『成り上がり』路線を目指す場合も、この『リスク回避』能力は、ちゃんと役に立ってくれますよ?」


アグネス聖下たん「どうせ、『事なかれ主義の戦国武将』や、『事なかれ主義の堺商人』になるだけなんじゃろう?」


ちょい悪令嬢「『事なかれ主義の戦国武将』で、何が悪いんですか⁉ Web小説にも、そういった作品が、いっぱいあるではありませんか!」


アグネス聖下たん「物事には限度というものがあるのじゃ! 貴様の言う『事なかれ』とは、危険リスクを被る可能性がほんのわずかでもあれば()()()()()という、文字通り完全なる『事なかれ』じゃろうが⁉」


ちょい悪令嬢「そ、そうですけど……」


アグネス聖下たん「だからそんなことでは、エンターテインメント失格じゃと、言うておるんじゃ! ──ええい、もういい! 我ら転生教団は、これまで通り、『ゲームの残機コマ型死に戻り』の実験を、強行していくからな⁉」


ちょい悪令嬢「そんな! あなたは宗教団体のトップのくせに、人の命というものを何だと思っておられるのですか⁉」


アグネス聖下たん「何度も言うように、これは何よりも、我が教団最大の悲願のためなのであり、信者たちも自ら望んで実験台となっておるのであって、部外者からとやかく言われる筋合いなぞないわ!」


ちょい悪令嬢「たとえご本人の了承を得ていようが、そんな非人道的な実験なんて、けして赦せるものですか!」


アグネス聖下たん「ほう、だったら、どうするつもりだ? 貴様らの『裁判ごっこ』で、いくら馬鹿げた審判を下そうが、それに従う気なぞさらさらないぞ?」


ちょい悪令嬢「……くっ、本コーナーの趣旨を台無しにするようなことを、ヌケヌケと! そちらがそのように少しも悔い改めようとしないのなら、こちらもこれまで通り、『実力行使』で邪魔立てするまでです!」


アグネス聖下たん「無駄だ無駄だ、──肝心の貴様自身が、真に『()の巫女姫』として目覚めぬ限りはな」


ちょい悪令嬢「え」


アグネス聖下たん「我ら教団が本当に恐れておるのは、『()の巫女姫』が覚醒し、その力を何の制限もなく発揮することなのじゃ」


ちょい悪令嬢「そ、それって、どういう……」


アグネス聖下たん「何せ『()の巫女姫』だけが、我ら転生教団の御本尊であられる『なろうの女神』様同様に、真の意味であらゆる『異世界転生』を意のままに操ることができるのだからな」


ちょい悪令嬢「『()の巫女姫』が──つまりはこのわたくしが、『異世界転生』を操ることができるですって⁉」


アグネス聖下たん「どうじゃ、このまま『覚醒の儀式』を行わないか? 我ならそれができるのじゃがな?」


ちょい悪令嬢「……結構です、この件に関しては、うちの怖いメイドから口うるさく、あなたの『口車』だけには乗るなと、言われておりますから」




アグネス聖下たん「くくっ、口車とは、手厳しいのう。──しかし、ためらっている余裕なぞ、すでにありはしないぞ? こうして『ゲンダイニッポン』からの異世界転生が繰り返されて、この世界が『転生者』によって多大なる影響を受けて、様々な矛盾が浮き彫りとなるほどに、かつての秩序を取り戻すために──あるいは、更なる大変革を促すために、この世界そのものが、『()の巫女姫』の覚醒を促進することになるのだからな」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ