第百六話、わたくし、ちょい悪令嬢ですの! その4、『死に戻り』②教会での復活。
ちょい悪令嬢「──さて、今日は、聖レーン転生教団聖都ユニセクスにございます、某教会にお邪魔しております!」
アグネス聖下「……いや、お邪魔も何も、我が教団の最高機密の秘儀が行われるこの秘密教会に、何で事実上の敵対国であるホワンロン王国の巫女姫である貴様が、当たり前の顔をして居るのじゃ?」
ちょい悪令嬢「細かいことは気にしないでください」
アグネス聖下「細かくはないわ、重要案件だわ!」
ちょい悪令嬢「今の私は、ホワンロン王国筆頭公爵家令嬢どころか、『過去詠みの巫女姫』でも『悪役令嬢』でもなく、ただの『ちょい悪令嬢』ですので、ノープロブレムです」
アグネス聖下「え、そんなんでいいの? そもそも『ちょい悪令嬢』って何?」
ちょい悪令嬢「さあそれでは、解説役に栄えある聖レーン転生教団現教皇であられる、『アグネス聖下』をお迎えして、早速今回の『異世界裁判』を開始いたしましょう!」
アグネス聖下「だから我のことは『アグネスたん』と呼ぶなと、何度言えばわかるのじゃ! …………ていうか、『異世界裁判』って何?」
ちょい悪令嬢「つまりですね、実はこれは本編ではなく、番外編みたいなものでして、ここで見聞きしたことをホワンロン王国当局に報告したりすることはなく、あくまでも読者の皆様に対する、『設定解説コーナー』みたいなものにすぎませんので、何の心配もいらないのですよ!」
アグネス聖下「……またいきなり、メタっぽいことを言い出したのう」
ちょい悪令嬢「番外編ですから」
アグネス聖下「番外編だったら、何しても許されるわけじゃないぞ⁉」
ちょい悪令嬢「まあとにかく、今回のお題は、いわゆるRPGゲームなんかでお馴染みの『教会での復活』の、Web小説の異世界転生作品においての実現性についてなんですよ」
アグネス聖下「──っ。貴様、どうしてこの教会で行われている、秘儀の具体的内容を知っておるのじゃ⁉」
ちょい悪令嬢「ああ、今回はそういったシリアス展開は要りませんから、軽く流してください」
アグネス聖下「か、軽く流せって……」
ちょい悪令嬢「そもそもWeb小説の中で、『教会での復活の儀式』なんかをしようとすること自体が、ゲーム脳そのものじゃないですか?」
アグネス聖下「言い方! 何で貴様はいつもいつも、全方面の皆様に対してケンカ腰なんじゃ⁉」
ちょい悪令嬢「いくら剣と魔法のファンタジーワールドといえども、そんな御都合主義的なことが、本当に実現可能なのかを検証するために、こうしてこの秘密教会にお邪魔したって次第なのですよ」
アグネス聖下「……ああ、うん、確かにこの教会で行われていることは、ゲームと似たようなものとも言えるがな」
ちょい悪令嬢「というか、そのものズバリでは? やはり転生教団の方も、上層部が『ゲーム脳』であられるとか?」
アグネス聖下「だから、言葉を選ばんかい!」
ちょい悪令嬢「つまり『読者サービス』というか、『転生者サービス』を行われておられるのでしょう?」
アグネス聖下「……まあな、このようにゲームそのままな体験ができることを『売り文句』にして、『ゲンダイニッポン』から一人でも多くの『転生者』に来てもらうことこそを、目的にしているわけじゃからな」
ちょい悪令嬢「しかし、いくら転生教団さんでも、ゲームのギミックを完全に再現するのは、困難なのでは?」
アグネス聖下「ふふん、まさしく転生教団だからこそ、不可能を可能にできるのじゃよ。──いや、それにしても、貴様のほうは、何で今更『教会での復活』なぞという、RPGの初歩の初歩のイベントなんかに注目したわけなのじゃ?」
ちょい悪令嬢「実は現在における『異世界裁判』の審議対象が、いわゆる『死に戻り』なんですが、まさにこの『教会での復活』って、ある意味『死に戻り』の原型のようなものとも言えるではないですか」
アグネス聖下「ああ、まあ、そうじゃな。確かに教団における『対処法』も、同じようなものとなっとるしな」
ちょい悪令嬢「……対処法、ですか?」
アグネス聖下「まあ、見ていればわかる。──おい、始めるぞ!」
枢機卿全員「「「──はっ、アグネス聖下の、仰せのままに!!!」」」
アグネス聖下「だから我のことは、『アグネスたん』と呼ぶなと、言っておろうが⁉」
ちょい悪令嬢「まあ、さっきから白いトンガリ帽の全身ローブをまとった、いかにも秘密結社っぽい怪しげな一団がおられるかと思ったら、枢機卿の方々であられたのですか?」
枢機卿全員「「「──もちろん! アグネス聖下がおられるところ、公私を問わず、常に我ら枢機卿あり!」」」
アグネス聖下「悪質なストーカー集団が、犯行を自供しおった⁉」
ちょい悪令嬢「ほんに聖下は、枢機卿の方々に慕われているのですね。さすがは、ロリアイドル教皇♡」
アグネス聖下「何がさすがじゃ! 貴様も我の身になってみろ⁉」
ちょい悪令嬢「……私の取り巻きグループも、同じようなものですよ?」
アグネス聖下「そ、そうじゃったな、すまん……」
ちょい悪令嬢「いえいえ、お互い様というものですよ。──さあ、気を取り直して、儀式の具体的な実況に参りましょう!」
アグネス聖下「……相変わらず、マイペースなやつじゃな。まあ、これも『ゲンダイニッポン』の『転生者予備軍』に対する宣伝と割り切って、協力してやるか」
ちょい悪令嬢「現在枢機卿の方々がおられる祭壇には、大きな棺が一つだけ置かれていますが、教団が召喚なされた『転生者』の冒険者の方が、この教会からほど近くのダンジョンでお亡くなりになったとの連絡があったのは、ほんのついさっきでしたので、当然中身は空ですよね?」
アグネス聖下「まあな、空のようなもの、と言っておこうか」
ちょい悪令嬢「おっと、さすがは邪教集団の頭目、思わせぶりな台詞が出ました!」
アグネス聖下「何が邪教じゃ⁉ れっきとした世界宗教じゃわい!」
ちょい悪令嬢「お、そうこうしているうちに、大勢の方が駆け込んでこられましたよ?」
アグネス聖下「あれは、教団が抱えておる、冒険者稼業の信徒たちじゃ」
ちょい悪令嬢「皆さんそれぞれ、結構な大荷物を抱えられていますね。各種の剣等の武器に、各種の鎧等の防具に、後は普通の衣類や食料等の生活用品ですか? まるで冒険者個人の全財産って感じですね」
アグネス聖下「まさにそうじゃ。普段身につけている衣類や鎧兜や武器一式に、空間魔法を利用したポータブルの『格納庫』に収納している、予備の鎧兜や武器や生活用品じゃからな」
ちょい悪令嬢「おお、そこら辺もゲーム同様に、便利にできているわけですね? つまりこれら一式は、お亡くなりになった冒険者の所有物ということで?」
アグネス聖下「そうじゃ、教団で召喚した冒険者には、もれなく全員にサポートとして、冒険者の教団員がパーティとしてついて回り、不幸にもクエスト途中で亡くなった場合には、こうして装備品を回収してこの教会に届けるシステムとなっておるのじゃ」
ちょい悪令嬢「……何と、ゲームでは一瞬で行われることを、いちいち人手を使って再現しているわけなのですか?」
アグネス聖下「まあ、魔法──教団では『法術』と言うのじゃが、それを使ってよりゲームの仕様に似せることもできるのじゃが、人手を使ったほうが取りこぼし等が無く、確実じゃからな」
ちょい悪令嬢「あ、でも、肝心の冒険者のご遺体は、いまだ運び込まれていないようなのですが?」
アグネス聖下「まあ、見ておれ、これからが儀式の本番なのじゃ」
ちょい悪令嬢「おおっ、アグネス聖下が棺の前に跪き、お祈りを開始しました! 何と尊い! 文字通り尊い! 御年7歳のロリ美少女の聖下が、純白の聖衣に身を包んで瞳を閉じ手を合わせ真摯にお祈りを捧げる様は、まさしく天上の神の御使いが顕現したかのような神々しさ! ──さあ、枢機卿の方々、ご一緒にご唱和を! アグネスたん、ラブラブ♡ アグネスたん、マジ天使♡ ラブラブラブリィ、アグネスたん、ウーアー♡♡♡」
枢機卿全員「「「アグネスたん、ラブラブ♡ アグネスたん、マジ天使♡ ラブラブラブリィ、アグネスたん、ウーアー♡♡♡」」」
アグネス聖下「──やかましい! 儀式に集中できぬだろうが⁉」
ちょい悪令嬢&枢機卿全員「「「……怒られちっち」」」
アグネス聖下「──よし、儀式は終了じゃ! 目覚めよ、教団が選びし冒険の徒よ!」
ちょい悪令嬢「おおっ、アグネス聖下の呼びかけに応じて、空だと思われた棺の蓋が内側から開けられて、何者かが起き上がりました! これは『復活の儀式』成功か⁉」
冒険者(復活)「…………ここは?」
アグネス聖下「教団の、いわゆる『復活教会』じゃ。そなたはダンジョン攻略中に魔物に襲われて、命を落としてしまったのだよ」
冒険者(復活)「えっ、俺って死んだの⁉」
アグネス聖下「安心せい、それをこの教会で教団の秘儀を使って、生き返らせてやったのじゃ。己の姿を、とくと見てみい」
冒険者(復活)「は? 何で俺、真っ裸なの? ──つうか、女になっているじゃないか⁉ どういうことなんだ、一体!」
アグネス聖下「生憎、『受け皿』希望の信者が、その者しかおらなかったのじゃ。おまえとしても、命を取り戻せただけでもめっけものだろうが? 贅沢を言うでない」
冒険者(復活)「……そりゃそうだけどよう。これからは女の身体で、冒険者稼業をやらなければならないのかよ?」
アグネス聖下「心配は無用じゃ。その者の剣技は教団指折りじゃし、そなたの前の『憑坐』よりも魔導力が強いから、行使できる魔法スキル等も増やせるぞ?」
冒険者(復活)「何だ、それなら話は違うぜ! まあ、女の身体になるのも、たまにはいいだろう。これぞ『TS転生』ってわけだ♡」
アグネス聖下「正確には、『再転生』だがな」
冒険者(復活)「この身体ですぐに、ダンジョン潜りなんかはできるのか?」
アグネス聖下「いや、新しい身体に感覚を慣れさせるためには、少なくとも四、五日は『慣らし運転』をやっておいたほうがいいじゃろう」
冒険者(復活)「ああ、わかった、そうするよ。いひひ、その間じっくりと、自分の新しい身体を調査しなければなあ♡」
アグネス聖下「何でもいいから、とっとと『転生者』用の宿舎に戻って、休むがよい」
冒険者(復活)「へいへい、それで代金として、所持金の半分を収めなきゃならないわけなのか?」
アグネス聖下「金に限らずそなたの全財産は、元々教団のほうで支給したものじゃろうが?」
冒険者(復活)「そうでしたそうでした、何から何まで『至れり尽くせり』で、大助かりでございますよ♡」
アグネス聖下「それだけそなたたち『転生者』には、期待しているということじゃ。これからも全力をもってクエストに当たるがいい。──『命のスペア』のほうは、心配いらぬからな」
冒険者(復活)「へへっ、頼りにしているぜ、『アグネス聖下』♡」
アグネス聖下「──っ。こらっ、そなたまで、我のことを、『アグネスたん』呼ぶんじゃない!」
冒険者(復活)「じゃあ、またなあ〜」
アグネス聖下「くそっ、どうせ『ゲンダイニッポン』では、ヒキニートの穀潰しじゃったくせに、図に乗りおって」
枢機卿A「しかし聖下、我らの大望を成就させるためには、その『転生者』たちの力を借りなくてはならないのですぞ?」
アグネス聖下「わかっておる、皆まで言うな!」
枢機卿A「──はっ、出過ぎたまねを!」
ちょい悪令嬢「………あの」
アグネス聖下「何じゃ、貴様、まだおったのか?」
ちょい悪令嬢「今のは一体、何なのです?」
アグネス聖下「何って、貴様が見たがっていた、『教会での復活』の儀式ではないか?」
ちょい悪令嬢「で、でも、冒険者ご自身のお話では、復活以前とは性別が違っているとか…………これって、別人になってしまったわけですよね? 何で元のご自身の身体で、復活なされないのですか?」
アグネス聖下「そりゃそうじゃろう、一度死んだ人間を甦らせることなぞ、魔法を使おうが法術を使おうが、できるわけがないじゃろうが?」
ちょい悪令嬢「えっ⁉ いやでも、それをやるのが、この『復活の儀式』じゃなかったんですか?」
アグネス聖下「だから復活させてやったじゃろうが? さっきの儀式は具体的に言うと、ダンジョン内で死んでしまった冒険者の脳みそにインストールされていた、『ゲンダイニッポンからの転生者としての記憶と知識』を、『夢の主体』の代行者である我が、集団的無意識を通じてそっくりそのまま、さっきまで棺の中に収まっていた教団の女性信徒の脳みそに再インストールしたわけなのじゃ。Web小説風に言うと、我の『召喚術士w』としての力を使って、『再転生』させたようなものじゃな」
ちょい悪令嬢「じゃ、じゃあ、それ以前に『転生者』の記憶や知識が宿っていた身体のほうは、どうなさったのです?」
アグネス聖下「もちろん今頃ちゃんと回収して、手厚く葬っておることじゃろう」
ちょい悪令嬢「その方も、今の女性の身体の本来の持ち主も、教団の敬虔なる信徒であられるのでしょう? それをあなた方は、教団の都合で、あたかも『ゲームの残機』であるかのように、使い潰しておられるわけですか⁉」
アグネス聖下「そうじゃよ? それが何か問題でも?」
ちょい悪令嬢「何か問題って──」
アグネス聖下「おいおい、忘れてもらっては困るぞ、我が教団の最大の悲願は、『ゲンダイニッポンからの転生者』とこの世界の人間とを、最も理想的な形で融合させて、『真の勇者』を生み出すことなのじゃ。そのために志を同じくする教団の信徒を何人犠牲にしようが、彼ら自身も本望というものじゃろう」
ちょい悪令嬢「──っ」
アグネス聖下「……まあ、そもそも『ゲームのギミック』を、剣と魔法のファンタジーワールドとはいえ、れっきとした現実世界において実現しようとすること自体が、正気の沙汰ではないのだ。どうせ最初から狂っている、ゲーム脳どもから生み出された『異世界転生』物語なら、思う存分狂ってしまおうじゃないか。貴様らホワンロン王国の者たちも、いつまでも意地になって『反異世界転生』活動をするよりも、素直に『Web小説界の現実』を受け容れた方が、よっぽど楽じゃぞ?」




